世界を渡る私のストーリー
山と海の悲哀5
エリーはそれから数週間、俺の前から姿を現すことはなかった。
あの夜の日、俺が告白を断った後すぐに海に潜り、それから姿を見せることはなかった。
俺も悪いことをしたと思っていた。でもあれだけには応えられない。
収入源を失った俺はすぐに村から出ていき、再び山暮らしを始めることにした。
久しぶりに山の麓の村に戻ると村の彼らに久方ぶりの再会として歓迎され、宴の際に供された酒を飲み、すぐに酒におぼれてしまう。
それから一週間、山と村を行き来しながら生活していた。
仕事ではなく、ただ酒を飲むためだけに行き来していただけだが。
幸いにも何も、金は今まで貯めていた分がある。この金がある間は何もしなくても生活はできるはずだろうと考えていた。
…いや、それはただの言い訳なんだろうな。
俺はエリーの事を忘れようとしていたんだろう。
自分でもイヤってなるほどに自堕落な一週間を送っていたと思う。
しかし、いくら寝っ転がっても、あの少女の顔が脳裏をよぎる。
酒を飲んでいても、森の中で果実を齧っているときも、村人たちと他愛ない会話をしていても、エリーの顔はいくら経っても消えない。
一週間、無為に過ごしていた。
だからこそ、後悔している。
俺が、あいつを拒絶してしまったことに。
あいつから離れてしまったことに。
嫌な報せは些細な会話から始まった。
中央都市、ここいらを統治する国のお偉いさんや貴族が密集し繁栄している場所から行商人の一行がやってきた。
村の連中は彼らに山の幸や特産品を金と交換するべくこぞって彼らの元に集まり、行商人も村にはないものや不足しているものを対等な立場で取引している。
俺が別に金には困っていないしやる事も無かったので、とりあえず今中央都市では何が流行っているのかを他愛もない調子で聞いていた。
今思えば、俺はどうしてそんなことを聞いたんだろう。
またエリーと会えた時に、話題に困らないようなネタが欲しかっただけなんだろう。本当にそんな些細な考えだったんだろう。
行商人はヘラヘラと仕事向けの笑顔を作って言った。
「最近は人魚の生き血が流行っているよ。なんでも浜辺にいたのを捕まえて中央都市に持っていったとかでよぉ、なんでもそいつの血には若返りの効果があるとかで、貴族どもの間では男も女もこぞってその血を飲んでいるとか…」
そう語ると行商人は俺の顔を見て表情を変える。
笑顔から青ざめた怯えの表情へと変わっていく。
俺はどんな顔をしてその行商人を見ていたんだろう。
その体躯と顔と風貌から俺は人の目から見ても良い印象は持たれたことが無い。それでも俺が浮かべているであろう表情に相手が此処まで怯えているのは初めての事だ。
行商人が
この時俺が何を考えていたのかも、俺には分からなくなっていた。
気が付いた時には俺はどこかに向けて駆けだしていた。
(エリー…!)
浜辺にいた人魚とやらが本当にエリーとは限らない。実は違う人魚だったり、それか人魚に見える何かかもしれない。ここにはまだ未知の事が溢れているから、実は勘違いした情報だったりホラ話だったりするのかもしれない。でも、俺はそこまで考えていても考えていなくても、その情報が正しいか確認するまでは安心できない。
あの夜の日、俺が告白を断った後すぐに海に潜り、それから姿を見せることはなかった。
俺も悪いことをしたと思っていた。でもあれだけには応えられない。
収入源を失った俺はすぐに村から出ていき、再び山暮らしを始めることにした。
久しぶりに山の麓の村に戻ると村の彼らに久方ぶりの再会として歓迎され、宴の際に供された酒を飲み、すぐに酒におぼれてしまう。
それから一週間、山と村を行き来しながら生活していた。
仕事ではなく、ただ酒を飲むためだけに行き来していただけだが。
幸いにも何も、金は今まで貯めていた分がある。この金がある間は何もしなくても生活はできるはずだろうと考えていた。
…いや、それはただの言い訳なんだろうな。
俺はエリーの事を忘れようとしていたんだろう。
自分でもイヤってなるほどに自堕落な一週間を送っていたと思う。
しかし、いくら寝っ転がっても、あの少女の顔が脳裏をよぎる。
酒を飲んでいても、森の中で果実を齧っているときも、村人たちと他愛ない会話をしていても、エリーの顔はいくら経っても消えない。
一週間、無為に過ごしていた。
だからこそ、後悔している。
俺が、あいつを拒絶してしまったことに。
あいつから離れてしまったことに。
嫌な報せは些細な会話から始まった。
中央都市、ここいらを統治する国のお偉いさんや貴族が密集し繁栄している場所から行商人の一行がやってきた。
村の連中は彼らに山の幸や特産品を金と交換するべくこぞって彼らの元に集まり、行商人も村にはないものや不足しているものを対等な立場で取引している。
俺が別に金には困っていないしやる事も無かったので、とりあえず今中央都市では何が流行っているのかを他愛もない調子で聞いていた。
今思えば、俺はどうしてそんなことを聞いたんだろう。
またエリーと会えた時に、話題に困らないようなネタが欲しかっただけなんだろう。本当にそんな些細な考えだったんだろう。
行商人はヘラヘラと仕事向けの笑顔を作って言った。
「最近は人魚の生き血が流行っているよ。なんでも浜辺にいたのを捕まえて中央都市に持っていったとかでよぉ、なんでもそいつの血には若返りの効果があるとかで、貴族どもの間では男も女もこぞってその血を飲んでいるとか…」
そう語ると行商人は俺の顔を見て表情を変える。
笑顔から青ざめた怯えの表情へと変わっていく。
俺はどんな顔をしてその行商人を見ていたんだろう。
その体躯と顔と風貌から俺は人の目から見ても良い印象は持たれたことが無い。それでも俺が浮かべているであろう表情に相手が此処まで怯えているのは初めての事だ。
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