世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物17


最初は慌てたが、彼女は急いで次の勇者を選んでから、今度は最強の武器を与える。

「今まで縛りだったし、今度は最強から始めるニューゲームってヤツやろっと。そうすりゃあのバグも倒せるはずだし」

そう思って、生前名を馳せた格闘家を召喚。それと同時に創造神女神オステの力が宿った最強の大剣を格闘家に渡した。

格闘家マサカズは、その武器と生前鍛えた体を使い、仲間を連れずにたった半年で魔王城にまで乗り込んだ。






聖大剣【ガリュード】
この大剣は全てを破壊でき、どんな攻撃にも耐えることが出来る創造神独自のチートを含まれた最強の武器。
これを倒すことは、この世界に元々いた魔王でも不可能。
絶対の力を持つ、ズルの塊。






それを、リアンは2分足らずで倒した。
聖大剣【ガリュード】を、どんな攻撃にも耐える剣を破壊して。
この光景を眺めていたオステは理解が追いつかない。
そして世界は強制的に元に戻る。
オステは画面を見ながら、動けずにいた。
結果が信じられなくて。

そこからはいろんな手を使った。
まず、異世界で多くの偉業を残した人物を意図的に選び出し、それを順番に出していく。
そして彼らには、絶対に負けないように無茶苦茶な設定の武器を配布した。

絶対に当たるムチ。
空間を切り裂いて相手を斬る剣。
装備していれば、どんな魔法も放てば相手を必ず倒せるものに変わる賢者の石。
どんな攻撃も跳ね返す盾と、どんな敵でも振るえば勝てる聖剣。
全てを跳ね返すマント。
次元を開いて敵を異次元の彼方に飛ばす魔術。

あらゆる能力をふんだんに詰め込んだ、別の世界ならそれこそ世界の秩序を壊しかねない数の武器。
それを惜しみなく、彼女は渡す。

しかし、リアンの持つ魔剣に勝てる者は1人もいない。
拮抗した者すらいなかった。
あの魔剣は、この世界には存在してはいけない何かだった。

焦りとイライラが積もり、オステは絶対にやってはいけない世界の理を変える行為を始める。

それは創造神になる際に、違う世界の神たちから注意された。
世の理を変える事は、全ての確定した事象を否定してしまう事であり、元には戻せないこと。
オステはそれを使って、過去の勇者を何体か召喚し、複数の勇者を使って倒そうとする。
それも失敗し、魔剣の餌食となる。

何度もやり直すしかなかった。
時間は止まらない。
時間は進まない。
理を無視しても倒せない。

こうして無限の悪夢が続いてしまい、現在に至る。

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