世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物16

勇者エイイチ。
彼女がその特殊な経歴を面白く感じ、ただ召喚しただけの男。
見た目は普通なのだが、時折精悍な眼差しで女神よりも向こう側に目を向け、多くの人間を助ける。
それは当時の彼女が求めていたものではなかったため、ただのお人好しとして受け取っていた。
しかし、本来なら仲間になるはずもないNPCの1人であるリアンを助けて仲間にした。
それだけは創造神で女神のオステでも不可解だった。
しかし、それは元に戻す時にやった創造時にある、小さなバグだろうと思い、そのままエイイチの旅を眺める事にした。

エイイチの動きは焦れったく、1年経ってようやく魔王の本拠地に乗り込む時には遅すぎて下手だと評価した。
そして、迷いの森で『魔王軍の幹部』にパーティー全員が殺されて全滅した時には、盛大に馬鹿にし、エイイチのことなど忘れて次の勇者の補充を行なった。






そこから致命的なバグが起きる。
世界のシステムは正常のはずなのに、1つだけおかしなことが起こる。
魔王が違う誰かに変わっていた。

それはあの時エイイチが助け、魔王軍の幹部に殺されたはずのリアンだった。
おかしいと思ってオステは自身が創造した世界の人物表からリアンを探し出して、本来辿る運命を精査した。

『リアンは×月×日、××王国の外れにある森の中で盗賊団の仲間と一緒に勇者を襲い、そこで殺される』

確かにそう書いてある。
彼女は仲間になるどころか、死んでいなければならない。
ではこれは何だ?
ここで玉座に座る小さなバグはなんだ?

女神オステがその大きなバグに気が付いた頃にはもう遅かった。
リアンが、女神オステですら見たこともない剣を振って勇者を殺す。

それで世界は元に戻る。
その前に、オステは世界を直そうとして時間を戻さずに止めようとする。
しかしーーー


『ザ……ザザ………ザザザザザザ……』






ディスプレイが一旦消えて、また着いたときには永遠の悪夢が始まった。
時間が元に戻っていた。
オステがこの世界のタイムアタックを始めた時に。


創造の女神、オステの意思など一切無視して世界は最初に戻る。

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