世界を渡る私のストーリー
英雄紛いの偽物4
「襲撃は成功か?」
私がいる3班の頭を務める団長が残念そうに呟く。
暴れたかったのか私のすぐ近くで手斧を弄り出す。
闇に慣れた目で分かるが、他に団員もつまらなそうな顔でお互いで不満を口にする。
「おーい、お前らもう終わったのかー!」
団長は静かになった森の中、大きな声で2つの班に呼び掛けた。
しかし、返ってきたのは返事ではなかった
ヒュン、と風を切る何かが飛ぶ音が聞こえ、それが私の足に刺さる。
「…え?」
何が起きたのか分からず、私は暗闇に慣れた目でソレに注目する。
それは小さな短剣で、私たちが持っているものよりも刃が良いものだ。
それが私の足に刺さった。
それが理解できた時はさっきの雄叫びよりも甲高い悲鳴を上げて倒れその場で転げ回った。
私が攻撃された事に気が付いた時には、私たち盗賊団の命運は尽きていた。
闇夜に慣れた盗賊団は、それ以上に不慣れであろう王国からの一行の猛勢に対処出来ない。
どうやって見ているのか、本当に真っ暗闇の中から幾つものナイフが飛び、その本数分あちこちに隠れていた団員の悲鳴が聞こえる。
私の隣にいた団長もその一人だ。
涙目で見ただけでも団長の右肩と腹に一本ずつナイフが刺さっていた。
団長はその痛みに耐えながら、必死の形相で森の影から躍り出た。
「うぉぉぉぉぉおーーー!!!!」
団長の叫び声に鼓舞されたのか、怪我を負っていた残りの団員もそれに続いていく。
私は立てずにその戦いを耳にするしかなかった。
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