世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な私が愛した支配者2


私はどこかの世界で赤ん坊として転生した。
私は最初何が起こったのか分からなかった。
起き上がれない体と小さな手。
綺麗な女性の腕の中で抱かれてあやされていた。
意識があるのもおかしいが、私としては何故そうなったのかが不思議でならない。
しかし、そんな思いも成長していくうちに薄れていった。
私が生まれた家は人間の国の中でも最有力の貴族で、その中でも父はよく王から相談を持ち込まれるほどに有能だった。
母も同じ貴族の出で、同じように国の中でも声が大きいことで有名だった。
2人の間に生まれた私は、前世の記憶を受け継いだままその世界のことについて学び、8歳になる頃には『学校』に通えた。
この国は貴族中心ではあるが、学校に通えるのはごく僅かの聡明な者のみらしい。私は見事その明瞭な枠に入り込めた。
そうやっていくうちに、この世界で起きている戦乱をなんとしてでも止めようと思うようになる。
でも私はなんの力にもならない。
幼心に、エルフの代わりに戦う人間を見て私は少し諦めを覚えていた。
そんな中、城に悪い報告が流れた。

【ゴブリン、オーク、海人の3種族による侵攻。戦線は後退。1週間もしないうちに城が落とされる可能性アリ】

そんな報告が流れて王国中の人々の耳に入った。
善処しようと急いで多方へ働きかける父。
貴族達の結束を固め、何が何でも人間を守ろうとする母。
そんな努力むなしく国中で混乱が起きる。
私はそれを窓越しから眺めることしかできない。
無力だった。
なんでも出来るかもと、私はタカをくくっていた。
そう、私には何もできなかった。

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