世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な万能を持つ支配者18

城下町は空から見ていてもわかるほどに淀んでいた。
活気が無く、人々の顔色もあまり浮かないものばかり。
どうやら状況は聞いた以上にあまりよくは無い。
私たちはすぐさま王城へと降り立った。

「侵入者だ!」

「翼があるぞ!異種族の生き残りだ!」

「皇帝にお伝えしろ!」

城の衛兵や侍女が色々とうるさく、私達に銃口を向ける。
しかし、随分昔に世界最強と謳われたミレーナが目にも留まらぬ素早い動き、神速を持って衛兵達の銃を細切れにして破壊する。

衛兵達はその一瞬に呆気にとられ、何が起こったのかも良くわかっていないようだったが、ミレーナが剣を衛兵の1人の喉元に突きつけ。

「皇帝と謁見がしたい、急いで伝えろ。さもなければ今ここでお前達は死んだことも気付かせないまま殺すことになる」

半ば脅迫するようにミレーナは彼らに言うと、ようやく理解した衛兵達が慌てて背を向けて私達から逃げた。
ミレーナは「軟弱者め…」と逃げる彼らに呆れるが、私はそんな彼女に「流石に速すぎるよ今のは」とちょっとだけ注意した。
私しか見えないのも問題だな。

と、そんな事に笑っていたがふと何か嫌な視線を感じた。
ばっと、頭上の高い天井を見るがそこには何も無い。
……いや、何かあった。
何かあるのだが、それこそ何も無い存在。
例えるのなら、暗い部屋には誰もいないはずなのに、風邪や家鳴りですぐそばに人がいるかのような錯覚。
私はソレに視線を向ける。相手も私のことをじっと見ている。

「どうしたツヅリ?何かあるのか?」

ミレーナが不思議そうに尋ねて同じように天井を仰ぐが、彼女には何も見えていないので首をかしげるだけだ。

「なんでも無いよ、この城の造りに興味があっただけだから」

私がそう言ってミレーナの方を向いて笑顔を向ける。
ミレーナは「そんなに良い城だろうか…」と城の内装の良し悪しに唸っていたが、私はそれで良かったと思っていた。

この世界を巡る事情は少し深いかもしれない。
そう思っていた私だったが、相手はどうも静観を決めているのかただジッと見ているだけだ。

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