世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な万能を持つ支配者8

俺はこの世界の神に連れて込まれた。
王道すぎて納得してしまう。

俺を呼んだ神は、俺がどう動くか楽しみにしていただけのヤツだった。
ヤツは、俺が来る前から他の世界の人間を呼んでいた。
俺と同じように前の世界で死んだ彼らは、何も無しの状態でいろんな場所に放り込まれていた。

あるものは俺と同じ人間の国に。
あるものは他の国に。

連れてこられた者達は全員が人間というわけではなく、エルフやドワーフ、この世界にはいない種族の者達が大半だった。
そして、そんな彼らがどんな末路を送るのかを神とやらは好奇心のみで遠い何処かからこちらを眺めているらしい。

エルフの少女がゴブリンに辱められた後に殺され。
オークが鳥人族に襲われて殺され。
サラリーマンの人間が竜人族に頭から喰い殺される。
戦争を終わらせて平和を望んだ修道女が魔人族の大きな斧で真っ二つに割かれた。

…とにかく、数多くの異世界転生者がいた。
俺以外のやつは全員殺されたが、それは全て神が楽しむためだけのものだった。

数千年の戦争も、神がそんな者達の末路を見たいが為に引き起こしたものでしかなく、全ては神とやらが書いたシナリオ通り。
この世界の戦争の停滞も、あり得ない侵撃も、悲劇も悲愛も惨劇も、全部この神が天啓とやらで操っていたに過ぎない。

俺も本来なら最初の戦いで大怪我を負いながら逃げようとしたところを連合軍に捕らえられ、数多くの拷問を受けた末に息を引き取る……神は俺の最期を見て楽しもうとしていただけで、俺を呼んだことに意味などなかった。

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コメント

  • 目覚めのアリス

    おもれえw

    1
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