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お母さんは女神です

緑茶

5.私の想い

私はやっぱり、兄様の笑っている顔が一番好きだ。
私が最期に思ったことは、それだった。

わたしは体の芯から、温まるような感覚を覚えて、薄く瞼を開けた。私の周りを、温かい光の渦の奔流が渦巻いている。

死んでよかった。私は、唐突に思った。兄様の本心も聞けたし、笑顔も見れた。思い残すことは…。
私の体は自然と、上の方へと向かっていった。

そのとき、私の横を一陣の風が吹き抜けた。少し、寒いくらいの風だったが、とても気持ちよかった。私は、目を細めて、風の行き着く先を見た。その先に、サラリーマン風の男がいた。

彼も、私と同じように死んだのだろう。同じように、上へと体が昇って行っている。私が、彼を眺めていると、彼の動きが突如止まり、光の奔流を振り切り、まっすぐ横へと動き始めた。

彼のその目には、とても強い光が宿っていた。曲げられない信念でもあるのだろうか。…信念?信念とはなんだろう。彼の信念って?私にも信念はあったのだろうか?私の心は?想いは何なのだろう?

あるじゃない。私の信念は、想いは、笑うことだ。兄様が私にくれた笑顔の数。その思い出を守っていくことが、私の中枢。そう、私は守らなければならないのだ。誰にも渡してはならない。兄様と私の思い出を。

私が、私を取り戻した時、光の奔流は静かに私から離れ、代わりに涼やかな風が、私を乗せて進み始めた。
あれくらいで死ぬわけにはいかない。

そう思っていたのに、私はどうしても瞼が落ちてしまい、それに抗う事ができなかった。



読んでいただき、ありがとうございます。
これからも、こんな感じで、視点が交互になっていくと思います。

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