お母さんは女神です

緑茶

2.兄様の笑顔


読んでくださり、ありがとうございます。


「お嬢様、中等部へ向かうお時間です。」
執事の柏木が、私に告げる。私は無言で立ち上がり、ふらふらと玄関へと向かった。

私はあまり喋らない。喋る必要があまり無いからだ。いつだって周りの人間が察してくれる。

私は、日本を代表する財閥の娘だ。以前は、ただの娘でしかなく、精々いい縁談をものにすることだけが求められていた。私には兄様がいたからだ。

兄様は、幼い頃はその才能と、努力で両親の期待を大きく上回り応えていた。両親もそれに伴い、兄様を可愛がり、私は蔑ろにされた。

そんな私をいつも笑わせてくれたのは兄様だった。小さなブーケをくれたり、一緒に遊んでくれたり。誕生日プレゼントを一番最初にくれるのも、兄様だった。

だから、私は兄様が大好きだった。兄様の笑顔が大好きだった。でも、いつの頃からか、兄様は辛そうに笑うようになった。

私は兄様を心配してたが、兄様は私の前では平気そうな振りをしていたからあえて触れなかった。それでも、辛そうな兄様を見るのが辛くて私は兄様にプレゼントを渡すことにした。

なにがいいかな。どんな物が一番兄様が喜んでくれるかな。綺麗なお菓子?ハンカチ?兄様のことを思う時間も楽しかった。

結局プレゼントは、前に兄様が一番好きだと言っていた、鈴蘭の花束にした。私は兄様が笑う顔を思い浮かべて、渡すのを楽しみしていた。

精一杯背伸びして選んだワンピース。ちょっと大人っぽいけど、兄様にプレゼントを渡すんだから、これくらいが丁度いい。私は机に向かっている、兄様に鈴蘭の花束を差し出した。

兄様は、これまでに見たこともないような冷たい視線で、私を一瞥すると、目を細めてありがとう、と言った。私は、少しぞくっとしたけど、兄様の笑顔が見れて満足だった。

次の日、鈴蘭の花束はゴミ箱にあった。


虚しかった。兄様の私に向けられた笑顔は偽りだったのだ。私が兄様のためを思った時間は無駄だったのだ。何をしても兄様はきっと笑わないのだから。

1度そう思い始めるともう止まらない。小さい頃だって、両親に言われても私と遊んでいたんじゃないか。あの頃から、笑顔は偽物だったんじゃないか。兄様は、私のことなんては本当はどうでもよかったのかもしれない。

色々な考えが私の頭を巡った。それが昨日のこと。おかげで今もくらくらする。

私は、二重にぶれる視界の中で、ドアノブを握った。


大幅に改正しました。

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