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少年

昭秋古雪

プロローグ 他無き事、やも知れぬ。

その少年は、死のうとしていた。
静かで、爽やかで、とても心地良い横風が吹く…
そんな森林で。

彼の手には、一本の刃が握られていた。
新品同様に、曇り一つ無い、小さな刃。
彼はそれを、『レリ』と呼び、後生大事にしていた。

もう少しで死ねる…
そんな死の安らぎが、彼の心中を満たした。

その、彼の細過ぎる首を切り裂くには、あまりに十二分な、その小さな刃は。
静かに、彼の喉に、突き立てられた………

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