俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について

破錠 斬々

第11話:ご対面

麻里「行きましょう。異世界に」

繭「…へ?」

麻里さんと2人で異世界へ行くことを決断した直後タイミング悪く繭が来た。繭には秘密にしていこうと思っていたがこれではいけなくなってしまう。

繭「ちょっと2人とも異世界に行くってどういうことよ?」

修一「…すまん繭。俺異世界に行くことになった」

繭「え、なんで?異世界は危険なんじゃ…しかも麻里さんが行くなって…」

俺の突然の異世界出発に繭は混乱した状態になっている。どうにかしてうまく伝えないと繭に影響が出てしまう。

修一「繭、お前はここに残ってアスカを見ていてくれ。そのほうがアスカも安心できるだろうし俺が帰って来れなくなっても大丈夫だろ?」

本当にいつ帰って来られるかわからない。右も左もわからない異世界に行くとはそういうことなんだ。繭にはちゃんと理解してほしい。

繭「…いやよ」

修一「え?今なんて言った?」

繭「こっちであんた達を待ってるなんてゴメンよ!!」

繭は手を震えさせながら涙目でこちらを睨みつけ叫ぶように怒鳴った。こっちで待つとしても少しは怖いのだろう。

でも繭をよくわからない世界で危険な目にあわせるわけいないかない。どうにか説得しなければ大変なことになるのは目に見えている。

修一「繭わかってくれ。お前を危険なところに連れて行くわけにはいかないんだよ」

繭「危険なところなのは知ってるよ!でも…私もアスカちゃんを助けてあげたいし…だから一緒に行きたいの!」

必死に訴えかけてくる繭の期待に応えてあげたい。その気持ちはあるが一方何が何でも置いて行くという意見が双方俺の頭の中で過ぎる。

麻里「繭さん別にあなたを連れて行くのは構いませんが帰って来られないかもしれないという覚悟はあなたにあるんですか?」

繭「あります。私は友人のアスカちゃんや麻里さんの為ならどんな結果になっても受け入れられる覚悟ぐらいとっくにできています」

麻里「……」

幼い頃から繭は変なところで意地を張る。その意地は決して自分のためではなく人のために使う意地だった。今回も繭の意地はアスカと麻里さんに対するものだろう。

確かに繭ならどんな結果になっても現実を受け入れられるかもしれない。

麻里「…よしとしましょう。あなた達の覚悟はわかりました。異世界へ連れて行ってあげます」

修一「よかったな繭。一緒に行けるってよ」

繭「…うん!私足手まといにならないよう頑張ります!」

麻里さんの合否が出た。麻里さんが異世界へ行く許可をくれるのなら俺がとやかく言う必要はないだろう。

本人である繭も涙を2、3滴こぼしながら喜んでいる。繭にとってもこの度はとても大事なものだと気付かされてしまう。

麻里「では行くと決まったからには私が責任を持ってあなた達を引率しなければなりませんね。

…ほんと面倒な人間達というのは厄介な生き物ですね」

人間について悪態をつあているがその顔には今まで見たことのないような愛嬌のある顔をしている。

母親が亡くなってから厳しい教育をされてきた麻里さんにとって自分をかばってくれるような人には会っていなかったのだろう。

この旅で俺たちは麻里さんのお父さんにガツンと言わなくてはならい。そして、それが終わったらかつて自分の記憶を失っていた人物の行方を探さなくてはいけない。

麻里「では異世界に行く準備はできましたか?」

修一・繭「はい!」

麻里「54:%7€6〒4215%:5〆<2jjpdtp+:63」

麻里さんが呪文のようなものを唱えると本屋の床にある大きな魔法陣が光りながら動きだし俺たちを包み込むように白いオーラが出現した。

そしてそのオーラに包み込まれると俺たちの体は少しずつ消えて行く。

もしかするともう2度と帰って来られないかもしれない。そんな事実を知りながら行く旅。覚悟はもうできている。

麻里「では行きますよ。¥%・<:<48々34・9・55[3」

ーーー

修一「うっ…ここは?」

麻里「異世界に着きましたよ。まぁ今はこっちが現実世界ですけど」

視界に眩い光が現れたと思った瞬間次に目の前に現れたのは大木が生い茂る森の中だった。特に変わった気配はなく少しきが大きいだけの人間の世界とはあまり変わらない。

繭「人が見当たらないけどここってどんな場所なの?」

麻里「ここは町外れにある森なので人がいなくて当たり前です。人が多いところで現れたら混乱を招き入れるので」

それもそうか。頷きながら周りを見渡すがやはり異世界感はあまりない。

麻里「さ、街まで歩きますよ」

修一「町まではどれくらいの距離があるんですか?」

麻里「10km程ですかね。そこで郊外に着きますので今日はそこまで歩きましょう」

10km!?そんな距離を歩くつもりなのか?異世界に来て早速面倒なことが起きた。まぁただ歩くだけだから何とも思わらないが今夜は足が張って痛くなることを想定しておこう。

繭「まだー?もう足が痛くなってきたー!」

修一「わがまま言うなよ。それも覚悟して一緒に来たんだろ?あと少しだから頑張れ」

繭「うぅ…足が張って痛いよ」

繭の言う通りもう足が悲鳴を上げてきた。森の道が悪いせいで余計に足に負担がかかり限界まであと少しになってきている。

だが疑問に思ったのはこの森に虫や鳥などを一匹も見なかったことだ。普通森などには植物類の他に生命体が存在してる筈なのに。

麻里「『生き物がいない』ですか?」

修一「え、あ、はい。もう8kmくらい歩いたにもかかわらずまだ一匹も生命体にあった気がしないので疑問に思っただけです」

麻里「生き物くらいいますよ。あっちを見なさい」

ー!!

麻里さんが指をさした方向を見ると木の枝に擬態化した鳥がとまっていた。その鳥は人間が普段見ているようなものとは全く違い頭は普通の鳥なのに羽は一枚一枚の紙のページのように作られている。

他の動物にも一部が『本』になっているやつばかりだ。人間の世界の生き物とは何かが一緒で何かが全く異なっている。そんな不思議な景色が一瞬にして広がった。

麻里「ほら、お喋りをしているうちに目的地へ着きましたよ」

繭「おぉ!綺麗な港町」

麻里「ここは海港都市ピロフ。この異世界の唯一の港町です」

修一「異世界にも海ってあるんですね」

この森からパッと見ただけでも人の多さがわかるほど町から声や音が聞こえる。

繭「町があるの!?よし、早く行こう!」

町があるとわかった瞬間の繭の反応には驚かされる。さっきまでグダグダだったのが一気にハイテンションになり町まで走り出した。それに合わせて俺と麻里さんも繭を追いかけるように走った。

繭「おぉー人でいっぱい」

町に入るとそこにはどう見ても人間のような姿をした人が沢山いた。普通に見ると人間の世界とは全く変わりがないが目はしっかりとアスカたちと同じ異世界人の目だ。

麻里「あまりここで妙な発言をしないでくださいね」

修一「え、何か問題があるんですか?」

異世界での発言に何か問題でもあるのか?文字と目以外の話す言語や顔立ちなどはほとんど一緒で見分けにくいと思うが…

麻里「今あなた達の耳には私のもう1つの能力でどんな国の言葉でも翻訳されるように私が加工してあるんです。だからといってむやみやたらに話すとわかる人はあなた達が人間だと一発でわかります。こっちの世界の人の中には人間に恨みを持つ者もいるんですから」

修一「わかりました…気をつけます」

麻里さんの異世界での注意事項を聞いた後町を少し歩き海岸沿いにある宿泊施設まで来た。さっきまでいた人でにぎやかだった雰囲気とは裏腹に全く人気のなく治安が不安になってくるような場所だった。

麻里「今日はここに泊まりますよ。明日もかなりの距離を歩くので夜更かしせずに早く寝てください」

修一「はい、ありがとうございます」

繭は女の子の為強制的に麻里さんの部屋に連れていかれた。何故か少しだけ残念そうな素振りを見せていたが何だったんだろう…

とりあえず明日も早いらしいので荷物の整理をしたらさっさと寝ようと思いバッグの中身を広げた。

ガラガラガラ…

スクールバッグのまま来たので中身は教科書類や現金がいくらかだった。そもそも異世界通貨が人間の世界と同化しているのかが気になる。同化していなかったらこの現金たちは全く意味のない紙切れになってしまう。

???「痛っ!」

バッグの中身を確認している途中見覚えのあるような本から聞き慣れた声が聞こえた。そいつは危険の為人間の世界において来た異世界人だった。

アスカ「痛てててっ…修一、本はもっと大切に扱わんか」

修一「何でお前が俺のバッグの中にいるんだよ?」

アスカ「はははっ…自分のことなのに修一たちだけ危険な目に合わせるのはやっぱり気が進まなくてな無断ではあったが密かに付いて来たんじゃ」

頬を数回かきながら付いてきた理由を話してもらったがアスカの気持ちは全く同意できる。アスカの性格上自分のことだから力はないにしろ積極的に協力したいのだろう。

修一「わかった。麻里さんたちにはまだ黙っていることにするから俺が呼ぶまでは本の状態でバッグの中に入っていて」

アスカ「御意!麻里殿達には迷惑はかけられんからの大人しく呼ばれるまで待機しておるぞ」

ただでさえ深手を負ってる麻里さんにこれ以上負担はかけられない。アスカは記憶を取り戻した人物に出会ってから出て来てもらおう。

修一「とりあえず今日はもう寝よう。明日も早くから歩くみたいだからちゃんと寝ないと」

アスカ「うむ、そうじゃな。今夜はゆっくり休もう」

ーーー

麻里「おはようございます皆さん。今日は中央都市アルロまで行きますのでおよそ20km歩くことになります。覚悟してください」

まさか今日も歩きとは思わなかった。大きな町に来たから馬車なり人力車なり使うといいのに。やっぱり俺たちが人間だから注意を払っているのか。

とにかくまだ異世界に来てからまだ2日目だ。今のうちからこんな弱音を吐いていると麻里さんのお父さんに会う頃には干からびてしまう。気合いを入れなくては。



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