俺は黒歴史の概念で存在している

扇ナオキ

#1黒歴史の始まり

人間には誰しも黒歴史を抱えて生きている。
 家族、親戚、友達。色んな人が抱えているだが人間はそれを隠している。だがしかし、黒歴史というものは誰かに見られ、噂となって広がるものである。
 しかし、俺はどうだろう?初めて黒歴史を作ったのは小学生の4年生だ。授業中我慢していた尿意が限界に達し、休憩時間トイレの目の前で漏れてしまった。あの頃は友達からも女子からも笑われた。ついには片想いの女の子にまで引かれた。初恋は虚しい失恋として終わった。
 その後も5年生、6年生とたくさんの黒歴史を作っていったわけだ…しかし止まることなく、中学校ではアニメや声優を好きになりすぎてツイッターでオタクアピール全開したら同級生に見つかって次の日からみんなの俺に向けられる目つきも変わったもんだ…給食時間の前になると腹が鳴ったりと。しかしながら神からの救済であったのか、友達は片手で数えるくらいだがいたのであった。
 そんなことを考えながら俺、橘基之は高校初日の登校をしていた。(もちろん1人で)




「うおっしゃああああ、一緒のクラスだぜ!」
「まじか、ラッキーー!」
「まじか、お前とは違うクラスだったわ…」
1年生のクラス分けが書いてある紙が玄関前に貼られていて周りからはそんな声が聞こえた。
 俺はというと1人で来たので少し見て教室に入ろうとした。友達は少ないながら同じ中学校の人の名前はある程度は把握している。そのため1年生の全クラスに同じ中学校の人の名前がないか見てみた。
 (それにしても人数多いなぁ………お、誰もいないな。よかったぜ。遠くの学校選んでよかったぜ)
そう。俺は1つ決めたのだ。
高校生活。黒歴史を1つも作らず、また小・中学校で作った黒歴史を隠し続け、楽しい高校生活を送ろう、と。
そんなことを考えながら教室に向かった。なんかウキウキしてきたな。
 (1年生の教室は4階か。めんどくせぇなぁ…)
そんなことを思いながら階段を目指す。こんなの1人で呟いてたら完全に変な目で見られるからな。
 すると、階段から1人、女の子が降りてきた。上級生か?特に気にすることなく横を通った。
……数秒後、
「えっ?……」
つい声が出てしまった。だがしかし、その女の子とはかなり離れているため、聞こえていない。あいつ、どこかでみたことあるような…けど紙には俺の知ってる名前は無かった…気のせいか。俺は胸の中にある不穏を除ききれないまま、教室に入る。
(うるさっ)
おいおい、本当に初日か?元々同じ学校の友達とかならわかるが、見た感じいきなり女子に話しかけらる男子もいる。大胆だな!典型的な出会い厨か何かか?肉食系男子は絡むと色々と面倒ごとが多いって言うしなぁ…
 座席表は黒板に貼られていた。
(窓際の一番後ろとか超ラッキー♪にしてもこの展開よくアニメでみるな…だいたいこの席にいるやつはロクなこと起きないよな…)
自虐が入ってるのは気のせいにしておこう。
人数は1クラス40人だ。教室が狭く感じる。
 (さて、確か8時30分からSHRショートホームルームが始まるよな。今はまだ15分か。話し相手もいないし、ラノベでも読んでおくか。)
俺は常時バックの中にはラノベを一冊以上入れている。備えあれば憂いなしってな。
 5分後、その時はやってくる。
 扉が開く。誰かが入ったのだろう。本を読んでるのであまり気にしていなかった。その人をちらっとみるとさっき階段で会った女の子だった。その女の子は黒板に貼られていた座席表を見てこっちに向かってくる。あまりジロジロ見るのもよくないと思い、視線を本に戻す。すると隣で椅子を引く音が聞こえた。げっ。
 その女の子は俺の隣の席だった。客観的に見たらただの美少女だ。既に何人かの男女が視線を輝かせている。俺と彼女の間に圧倒的な温度差を感じる。辛い。
 (とりあえず隣だし、挨拶くらいはしておくか…30分まであと3分あるし)
そう思い、カバンの中を見ている彼女に恐る恐る声をかけた。
「やぁ、おはよう。隣同士これからもよろし…」
彼女がこちらに顔を向け、目が合った。瞬間凍りついた感覚がした。
「はい、みなさーん席ついてえ〜〜これからSHRはじめ」
「なんでお前がココにいるうぅぅぅぅううう!!!」
新しい先生の声、さっきまで騒いでいたクラスのみんな、その声が俺の一声で消され、沈黙という2文字が痛いほどに頭の中に鳴り響く。時が止まった錯覚がした。何か新しい能力に目覚めそうな勢いだ。
そして我思う。
早速黒歴史を作り上げてしまったようだ…




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