黒衣の虹姫

陸奥ユウト

Ep30

  ギルドで盗賊退治の依頼を受けてから五時間後、普通の道から離れてティアは走っていた。

  道から離れている理由は──いつも通り『纒化:紫電』を使用して走っているからである。何度か休憩を挟んでいるとはいえ、この移動速度は異常なので他人に見られない場所を走っていた。 

「そろそろ盗賊が出てくる場所かな?」

  そう思って『魔力感知』を発動させる。すると、一ヶ所に二十前後の反応があった。

(冒険者のパーティーにしては人数が多すぎる…………っ 反応が一つ消えた、ということは──)

  ティアは走る速度を上げて反応が集まる場所を目指した。











「おらおらぁ、とっととくたばっちまいなぁ 」

「くそ、こいつら」

  俺たちはとある商人をエルディアからアトモスまで護衛する依頼を受けていた。その時盗賊が出るという情報は得ていたが思ってた以上に強く、手こずっていた。

「リーダー、どうするんだ!このままだと全員死ぬぞ」

「むしろ死ねぇ!」

やかましい 」

「グハッ」

  こっちは六人、向こうは今一人減って十三人。数で不利な上にこちらは商人の馬車も守らなければならない。

「考え事か?隙だらけだぜぇ」

「っ!しま──」

「リーダー 」

  考え事に気を取られて接近していた盗賊に気付けなかった。目を閉じ、防御の構えをとる…………が、いつまでたっても攻撃がこないため、目を開けるとそこには──

「ガ、ハ」

  ──氷で胸を貫かれた盗賊が倒れていた。

  だが一体誰が?うちのパーティーに氷魔法を使える奴はいないはず。そう考えていると離れた樹上から声が聞こえた。声の主の方向を見るとそこには──

「やっと見つけた、これで依頼が達成できるね」

  ──氷の剣を周りに浮かべたティアがいた。










  さて、盗賊らしき男を貫いた訳だけど……残りは十二人か。そう、考えていると。

「おい!今のはテメェの仕業か」

  盗賊のボスらしき男が声を荒げる。

「だったらどうするんですか?」

「降りてきやがれ そのままぶった斬ってやる」

「そうですか、でも────出来ればいいですね」

  トン、と木から飛び降り、着地と同時に『纒化:紫電』で強化して盗賊のボスを斬り伏せる。

「はっ?」
「えっ?」

  冒険者と盗賊の両方から素っ頓狂な声が上がる。が、そんな事は無視して二人目を斬り伏せるティア。

  そして、我に返った盗賊が雄叫びを上げる。

「テメェ!よくもお頭とモブローを!」

  そう言って残った盗賊全員がティアを囲んで攻撃を仕掛けた。







  そして、最後に立っていたのは────ティアと商人とその護衛の冒険者だった。

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