黒衣の虹姫

陸奥ユウト

Ep6

「ただいま父さん、今から素振り?」

  森を抜けて村に戻って来たティアは、丁度畑仕事を終えて素振りを始めようとしていた父『ヴァルト』を見つけた。

「おぉ、ティアか。畑仕事が終わったもんだから素振りをするところだ」

  ヴァルトは元冒険者なので、時々村に近づく魔物や動物を追い払うことがあるため、毎日畑仕事の後に素振りを行っている。

「ねぇ父さん、私にも剣術を教えて」

「ティアに剣術をか?どうしてだ?」

「私も父さんみたいに冒険者になりたいから」

正確には魔法の属性が多いことをなるべく周りに知られない様にするためだけど。

「そうかそうか。剣術は教えてやる。だが、冒険者に関しては一度母さんと相談してからだな」

「分かった。母さんと相談してくる」

冒険者になっていいかを相談するために家に駆けていった。








「ただいま~、母さん。ちょっと相談があるんだけど…」

「お帰り、ティア。相談って何?」

「大きくなったら父さんみたいに冒険者になっていい?」

「いいわよ~、でも15歳になって成人してからね」

( 凄いあっさりオーケーをもらえた‼女の子、ましてや村の子供が冒険者になりたいと言えば普通反対されそうだけど…)

  そんな事を考えていると

「お母さんもね、昔冒険者に憧れたのよ~。でも武器も魔法も全然ダメで諦めちゃったの」

  知らなかったそんな過去。まぁ、母さんのゆったりとした性格なら武器が使えないかもね。

「でも冒険者になりたいならどんな時もちゃんと生き残れる位強くならないとだめよ」

「分かった。誰にも負けない位強くなる」

そう言うと母さんはニッコリ笑った。

「まずはお昼にしましょう、お父さんを呼んできて」

「はーい」







~~~~~~~~ヴァルトside~~~~~~~~

  ティアが生まれてから4年が経った。あの子は昔から他の子供と違ってあまり騒がないし泣かない子だった。あまりに静か過ぎるものだから時々心配することもあった。

だが、その心配は無かった。むしろあの子は成長が周りより早かった。1歳の時に父親母親ミリーナのことを呼んでからは成長が早いことが目に見えて分かった。

  2歳になる頃には、一人で歩けるようになってたし、字の読み書きを教えたら、すぐに覚えたとミリーナが言っていた。そして最近、一人で森に行くようになってからは行動が更に活発化した。森の奥には魔物が出るからあまり奥には行き過ぎるなと言ってある。

  そして今日、ティアが剣術を教えてくれと頼んできた。俺と同じように冒険者になりたいと言うのだが、その許可はミリーナに貰うようにしてもらった。まぁ、ミリーナも冒険者に憧れた時期があったらしいから問題無いだろう。となれば後はティアが冒険者になってから命を落とさぬ様にきっちり鍛えてやるか。俺達の自慢の娘だ、俺のことも越えてくれるだろうさ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品