Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

SecondMagic14

目の前には未だ顕在の機械「竜咬騎士ドラグバイト」の姿がある。僕らは一旦集まり対策を考えるため一度状況整理をする。

 「あの頭の部分におそらく「黒の怪物グリッド」はいます」
 
 鞍馬さんの推測。否、鞍馬さんの能力には一定以上の信頼と正確さを有するためこの答えはほぼ確信と言って間違いはないだろう。

 「けどさ、あんな高えところにどうやって行くんだよ?俺らの「魔法」でもあんまだったしよ」

 連太郎がぼやく。

 確かにあの位置は相当高い。昔のロボットアニメであるような高さなので、何かを伝って行かなければ直立状態のあの機体には届くことはない。

 「それにあの機体には「魔法」があまり効いていないようだ。厳密には効いてはいるが、何かまだ足りていないようなもどかしさがあるように見える」

 次に言葉を発したのは僕らより一つ上の先輩である御剣諸刃だ。しかし今は僕らにとってはようやく謎の解けた青天の剣士の正体である。

 「「竜咬騎士ドラグバイト」はもともと救助用のものだから他の機体よりも魔法耐性が高く、操縦者が巻き込まれないよう高い位置に設定されているんだよ」

 とても役に立つ情報を与えてくれたのは狼上先生であった。彼は「国家武装犯罪対策部」に所属する「一級魔工師」であるためかなり強いのだが、やはり装甲が硬すぎ攻撃が効いているのかまるで分からない。しかし先程からまだ何かあるような気がしてならないのは僕だけだろうか?

 そんな疑問を持ったのだが、今は関係がない。

 この場で今一番しなければならないことそれはあの機体に取り付いたと見るべきであろう「黒の怪物グリッド」をどうやって倒すかだ。そもそも問題は攻撃が届かないと言う点…

 「あの御剣先輩、先輩の「魔法」があればダメですか?」

 僕は考えた。先輩の「魔法」と剣技ならばと思ったのだ。しかし考えは甘かった。

 「無理だな、現状。俺の持つ「静寂の剣ロンギヌス」の持つ「魔法」は今の俺が知る限りどんなに応用してもあれだけだ。離れた位置にある場所にでも空間的に出現させる魔法、しかし離れていればそれだけ意識を裂かれる。この状況では一発で終わりだ」
 
 いや、僕が聞きたいのはそこではない。

 「先輩!その「魔法」は空間的と言いましたね。それは例えどんな空間にでも出現させることが出来るのですか?」
 
 少しの間を置き今度は御剣先輩が口を開く。

 「可能の・・筈だ。試したことはないが名称がそうなのであれば出来ないことはないだろう。しかしそれがなんの役に立つ?」
 「なるほど、では後は鞍馬さん、本当にあの頭なんですよね?」
 「はい、先程よりあの頭部より若干の気配を感じます。間違いありません」

 迷いなく応えてくれた鞍馬さんに感謝をし、作戦を告げる。作戦という作戦なのかはたまたかつてと違うこと世界を利用したのかと言う作戦であった。

 「本当にこんなんで大丈夫なのか?」
 「分からないけど、これを試してみよう」
 「けど最後どうやってあそこまで行くんだ?」
 「それは、僕が連れて行くよ。僕の「魔法」は時を支配することを本流とするもの。だったら出来ないことはない筈」

 そう断言し仲間のやる気と心配を一気に晴らすと僕らは再び前を向いた。そう、あの機体を止め、「黒の怪物グリッド」を倒すために。




 「竜咬騎士ドラグバイト」は未だにあの場に佇み動く気配がない。人がいないからだろうか、はたまた「魔法」が発動していないからだろうか?

 作戦を実行するためにはまずは近づくことが一番だ。よってまずは連太郎が…

 「いいよ、撃って」
 「ああ、任せとけ!」

 バンと破裂音が響くより早く、その「魔法」によって作られた弾丸はめ前の存在へと飛んで行く。そしてその弾丸は見事に着弾し、注意は連太郎へと移る。つまりそれは他の人に注意が向かないと言うことである。

 「こちらをおろそかにするのは戦闘ではダメだと思うよ?」

 飛び出したのは狼上先生だった。手に持った光沢のあるチャクラムを使い周りへと音と光を繋げて行く。すると先生の方にも注意が向かれ更にこちらの注意がいかなくなる。

 そしてこのタイミングで、最後の合図を送るのと同時に僕は「魔法」を発動させた。しかし発動させたのは僕だけでなく、もう一人先輩もその「魔法」空間に刃を飛ばす。

 「行きますよ、御剣先輩!」
 「分かった」

 僕は地を大きく蹴り、そして跳ぶ。身体能力が向上しているためこれぐらいであればどうと言うことはないが、今は違う。さらに注意が下がりおろそかとなった装甲を蹴り上げ進む。そしてさらなる「魔法」の発動。

 「後は任せますよ、先輩!」

 僕は炎を発動させた。しかしそれは空間的にではなく、先輩の持つ剣へと送り炎剣と化すのだった。そして…

 「「法剣の刃イリュージョン・ブレイド」!」

 そして「竜咬騎士ドラグバイト」の頭部から発動させた刃が突き出て交差するように最後の刃が落とされたのだった。

 これが戦いの終わりであった。

 

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