Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

SecondMagic7

大通りの中央に佇む黒き怪物はその腕を振るっていた。その様子からしてその怪物、「黒の怪物グリッド」はその見た目からしてまさしくサイの風貌であった。しかしその腕は強靭で大猩々ゴリラのようでもあったが顔つきから見て間違いなく犀である。

 「あいつがやったのかな」
 「おそらくそうでしょうね、でなければこのようなことには決してなりません」

 今この大通りでは人々が慌てふためきながら必死になって逃げている。なぜなら僕らの目の前にあるビルの丁度三階の窓ガラスが全て割られ跡形もなく砕け散っているからだ。

 こんなことが出来るとしたら何かしらのテロ攻撃かはたまた目の前にいるこの怪しい敵以外には考えられまい。

 「おい、どうする!あんなのの攻撃を食らっちまったらこっちだって保たねえぞ」
 「それは見たら分かるよ。でも今は僕らが少しでも注意を引かないと」

 目の前で今もなおその強靭な腕を振るい続けるサイ型の「黒の怪物グリッド」は僕らの事を一切見ずに逃げ惑う人々に狙いを定めている。

 しかしその腕は射程が短く届きはしない。しかしその腕を地面に叩きつける事によりアスファルトは砕け散りその残骸と衝撃が伝わって来る。

 その衝撃はまるで本当に地面に叩きつけられているのかと思うほどの勢いと威力を持っていた。あれが普通の人に当たれば即死だと思うほどにだ。

 「連太郎、やろう!僕らでなんとか倒そう」
 「マジかよ、でもやるしかねえよな」

 連太郎は腰につけたホルスターから自らが契約した「古代魔法具アンティーアーツ」「衝弾の銃クルチャック」を引き抜くと少し歯を見せながら応える。

 「鞍馬さんは下がっていてください」

 僕はそう言い放つと首からかけた僕の相棒である「古代魔法具アンティーアーツ」「星刻の時計エルファスト」に呼び掛ける。
 
 「いくよ、「星刻の時計エルファスト」!」
 「頼むぜ「衝弾の銃クルチャック」!」
 
 僕らはそれぞれが呼びかける。己の信じる「魔法」へ向けて。

 
 僕らはあの時と同じ鎧を全身に纏い戦う。その動きは「黒の怪物グリッド」をも捉えることのできる速度である。がしかし相手はそれ以上に攻撃力があるためか迂闊に手が出せない状況が続く。

 「一歩でも読み違えて掴まったらいくら「魔法」を使っていてもただじゃ済まないよね」
 「はい、おそらく最悪命を失うかと」
 「マジかよ、じゃあ俺は離れて撃ちまくるわ」

 鞍馬さんのいうことが本当だとしたらかなりマズイので連太郎は離れた位置から撃ち続ける。その速度は止まる事を知らない。

 ズキンズキンズキン!!!

 「衝弾の銃クルチャック」から放たれる「魔法」の弾丸は次々に「黒の怪物グリッド」へと突き刺さって行く。その一撃一撃は重いはずなのにもかかわらず相手は平然としている。思ったよりも装甲も厚いのだろう。

 「メッチャ固えんだけど、こんなの如何すんだよ」
 「僕もやってみるよ。「超加速時間軸フラッシュ・バースト」!」

僕は「星刻の時計エルファスト」の「魔法」を発動し僕の感じる時間を早めた。その早さは実に六秒間ではあるがそれだけでも相手にとっては感じられない未知の領域である。この領域では僕の方が上。

 僕は腕に炎を纏わらせ限りある時間の中で雪崩の如く拳を打ち付けて行く。その早さは既に捉えることは困難な領域である。

 「うおおおおおおおおーお」

 いつもはここまでは叫ばないのだが、雰囲気に飲まれ叫ぶ。僕はその一撃一撃に全てを込めて打ち付けて行くのだが、圧倒的とも言える装甲に阻まれてしまう。

 「マズイね、如何しようか?」
 「俺に聞くなよ!てかあっちの方がヤバくないか!」

 連太郎は相手を見ながら言う。その大猩々ゴリラのような拳の走行から微かに見え隠れする白銀の砲弾その形は楕円形で飛距離よりは威力を重視したミサイルのようだった。

 「あれ食らったら終わりだぜ」
 「如何しよう、今の僕らじゃ」

 僕と連太郎は硬直して動けなかった。おそらくあの一撃がビルに打撃を与えた根源だと言える。その砲撃がこの近距離で、まだまだ離れた所には人が微かに見える。これでは僕らが無事でも他の人がまきぞ背を食らってしまう。

 諦めと策を練るのが同時に行われるのだが、その早さを越えるようにして砲撃は行われる。その弾道は僕らではなく奥にいる人たちの方だった。

 僕らが走って向かうが追いつかない。嘆きをあらわにしようとした時だった。何かが起きた。突然目の前で砲撃が消えた。いや切り倒されたのだ。

 「一体何が?」
 「黒江、上だ!」
 「えっ!」

 そこにいたのはビルの上に佇む空色の剣士。僕らと同じような全身鎧に身を包みながらもその風貌からは凛々しさを感じられる。そしてその者の右手が握りしめているのは、黄金の装飾が施されたそれはそれは見事なまるでエル字形の鍔を持つ西洋風の剣(細剣ではない)てあった。それはまさに魔剣や聖剣、もしくは神々の作りし神剣をも思わせる代物だった。

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