Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

EX. FarEastoftheSwordsman

『其方が求めるものはなんだ』

 そんな耳に聞きなれない声が響き渡る。その声の主の姿はなく、また俺の存在する場所すらも違う。ここはどこなのか分からない、遺跡の調査で伺うと突然中に引きずり込まれ、気がつくと神々の間と思うほどの空間が広がっていた。

 「誰だ!」
 『我、其方の力に引かれしものなり。其方の願い、真意を述べよ』

 姿を見せず、名も明かさないその声は着々と話を進める。妙に日本人じみたその口調には若干の共感を覚える。

 「何故そんな事を言わなければならない!」
 『・・・・・・』

 相手は沈黙を守る。設定されたプログラムの中に生きるのかまるで返してこない。しかし誰にでも真意に満ちた願いはある。それがどんな小さな事であってもそれには変わりはないのだ。俺にとってのそれに繋がる事柄は一つしかない。

 「俺の願いはただ、強くなる事。強くならなくては、悲しみも、嘆きも全てが無意味にしかならない。そのためには、利用できるものは利用する。そんな力が欲しい。守るための力攻撃的な刃によって悲しみを断ち切る力が」
 『それが其方の願いならば我はそれを叶えしために力を貸す。しかし其方に今一度聞く。真意、願いはなんだ』

 二度も同じ事を聞かれた。何かの不具合かとも思えるようだが、その声ははっきりと自分の心の内にまで強く響き渡るのだった。

 「俺の本当の願いは・・・・・・」
 
 俺の願いは既に自分には届いていない。その願いの真髄は前から変わらないものだ。たとえ何度砕かれようと忘れようとその願いだけは、諸刃の如く呼び起こり、大切なことに気付かせるのだ。

 『我、その真意、願いをとくと受けた。今より、其方に宿りその力を貸し与える。そして其方はその事を二度と忘れるでないぞ!』
 「分かっている」
 『では汝に我が名を教える。力が必要に迫られし時は我の名を叫べ我の名は「静寂の剣ロンギヌス」」
 
 その声はどこか冷たい声だった。そして俺の意識は元の場所へと帰って行く。





 あれから二日が経った。今日でこの国との別れである。

 「諸刃君、これにて君の遠征は終わりだ。「日本」に帰ってからもここで得た事を生かしてくれ」
 「分かっています」
 「それと「アルタイル」の理事長にもよろしく伝えておいてくれ」
 「分かりました。ですが俺は一生徒ですよ」
 「君の噂はかねがねだよ」
 
 なんとも複雑だ。自らの存在が知られている事は良いと捉えて良いが、しかしそれが逆の意味へと化してしまうと、悪循環にさらされる。

 「噂については知りませんが、そろそろ行きます」
 「おっと、気が早いね。もう少し落ち着いていても良いだろうに」
 「長居は無用です」
 「それは残念だ。ではまた来る時は我々を頼ってくれ。出来るだけの事はしよう」
 「先ほども言いましたが、俺は一生徒ですよ」
 「いいんだよ、我々は君に命を救われたのだから」

 そして、俺は故郷である「日本」へと帰る。そしてそこで待ち受けていたものは自分と同じ運命に縛られた者達だった。

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