Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

FirstMagic14

相手の注意を引き次の「魔法」までの時間を稼ぐ。そのためには少し無茶をしなければならない、死を覚悟するような。

 「鞍馬さん、次の「魔法」の発動までの時間の三分間を数えておいて、僕は時間を稼ぐ」
 「分かりました」

 僕は走り出す。まずは少しでも連太郎からあいつを引き離すために、そのためにはこちらに注意を引くことが大切だ。まさに命がけの行為である。

 「今必要なのは、音と衝撃‼︎」

 僕は注意を引くことを大前提に、まずは「魔法」で炎を作り出す。そしてその炎にそしてさらに炎を重ね合わせる。

 「連太郎!これを撃って」
 「うっっ、O、K…」

 本当に申し訳ないが最後の力を振り絞って、連太郎にこの炎を撃ってもらう。そうすることにより起こる現象、それはかつては起こせなかったであろう、衝撃。それを「魔法」により可能とする現象。

 「爆裂エクスプロージョン」である。

 全く違う性質がぶつかり合う反動の衝撃に耐えられなくなった力の一部が拡散し、その力が発動する。そしてその音と衝撃は相手にも伝わり、予想通りこちらへと敵対意識を向ける。

 「ギギギギギギギ」
 「よし!。こっちだ」

 僕は思いっきり走り出す。その間際に聞こえてきた鞍馬さんの声はか細いながらもはっきりと残り二分を告げていた。

 
 走り続けるのは、糸巻鱏マンタのような黒い存在によって蹂躙された森の中。しかし皆んなの所とは反対方向であり、また被害が出ず鞍馬さんの声がギリギリ届くぐらいの位置を図っておいた場所である。

 「ここからは、僕一人で相手をする」
 「ギギギ、所詮は、人間、魔法は、敵」
 「どうかな?」

 それはただの強がりだった。何にでもないただ相手の反応を見るだけである。そして、反応はやはりと言っていいのだろうか、何も感じないものだった。

 僕はまず「魔法」で炎を作り出す。その形状はどこか槍のようではあるがその実態は炎に包まれている。いわゆる「炎の槍ファイアランス」だ。

 「行け!」
 
 僕は複数に生成した炎の槍を糸巻鱏マンタのような黒い存在へとぶつける。その威力は先程の攻撃には明らかに劣るものだが、多少の効果はあった。それはヒレと言うのだろうか、その部分は他の部分よりも明らかに柔らかく貫通したのだ。これは大きな利点と言える。

 「あのヒレみたいなのには効果があるのか」
 
 しかしそれだけではダメだ何か決定打になる一撃がいる。そう言えば塔での蟋蟀コオロギはどうやって倒したんだっけ?確か相手の中央部を砕いた、そしたら何か硬いものがあったことを今更思い出す。もしかしたら…と一図の勝機を見出した所で敵も動く。

 「キギ」
 「おっと、マズイ」

 なんとかギリギリで避ける。やはりあの速さをなんとかしなければ勝機はないと思った。しかしどうやって…と考える中ひとつの方法を思いついた。

 「この方法なら相手の動きを封じれる。やるしかない」
 
 僕は思いついた方法を実行へと移す。それはあまりに単調すぎるものだった。

 「もう一度、炎を」
 
 炎を生成し投げつける。それから…

 「こっちだ!」

 再び走り出す。これだけでは前と変わらず追いかけられるだけである。しかし一つだけ違う所がある。今回は相手がまだ蹂躙していない木々の生い茂る森の中でありまた自然の木の蔓が生い茂っている。

 普通なら通らない場所を駆け抜ける。しかしこの策にはまってくれた敵には感謝する。それは相手の切り倒した木々の蔓が手足に絡みつき、やがては尻尾にもまとわりつきその動きを著しく衰えさせたのだ。

 「よし、これなら!」
 「三分が経ちました。今なら使えます」

 いつの間にかそばにまで来ていた鞍馬さんがそう言い僕は再び時間を超える。

 加速した世界の中でやることは限られているが、動けない敵を狙うのには十分すぎるほどだ。「魔法」でまずは先程よりも強い威力を凝らした「炎の槍ファイアランス」を放ち、相手の腹へと撃ち付ける。すると若干の亀裂が生じたため、あとはそこを時間の限り殴りつける。今か今かと迫る時間の恐怖に耐え凌ぎながら、死力を尽くして殴りつける。そして最後には自らの腕に炎を燈らせその腹の核を打ち抜いたのだった。

 やがてその姿は悲鳴混じりの叫びと共に消え去り、後に残るのは蹂躙され尽くした木々たちだけだった。

 「やった。よかった、皆んなが‥無事で」

 そう言い終わると僕の意識は深い眠りへと落ちて行ったのだった。

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