Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

FirstMagic12

音のする方へと急ぎそこで僕らが目にした光景は最悪のものだった。

 「森が…ない」

 森が一部完全に消失していたのだ。それはまるで何かが飛来した後のようなサークル状で所々に土によって描かれたと思われる波のような跡があった。

 「こんなことって自然にあんのか?」
 「いえ、このような現象は自然にそれも短時間で起こるようなもので話はありません。となるとこれは…」
 「どうしたんですか、鞍馬さん」
 
 急に黙り込む鞍馬さんに問いかける。

 「あちらの方から、誰か大勢の人の悲鳴が聞こえます。もしや、やはり何か起きたとしか言えません」
 「おい、それってまさかとは思うが…考えたくはねぇがクラスの奴らがって事か」
 「分かりません。しかし急がなければ、手遅れになるかもしれません」

 鞍馬さんが今までにないような焦りの表情を見せていた。また、連太郎も普段は言わない奴らなどと言っている。これは、本当にまずいのかもしれない。

 「急ごう、鞍馬さん、連太郎」
 「あぁ、行くぞ!」

 僕らは走る、手遅れになる前に。

 
 僕らがついた時の状況は酷いものだった。クラスの人達は悲鳴をあげる者、恐怖に怯え身をすくむ者と様々な光景が広がる。そして最も最悪なのは、

 「先生、大丈夫ですか!先生!」
  「うぅう」

 西野先生が腕と脚、そして腹に多大なる損傷をしていた。ここからではよくは見えないが、どうやら腹からは血が滲み出ていた。そして、その犯人と思わしき存在を見て驚愕となった。

 「えっ、あれって」
 「はい。あれは塔の遺跡と同じ警戒反応を期しています。おそらく、あれは先程の敵と同じ存在です」
 「マジかよ、あれが!」

 そこにいたのは塔の遺跡で見た黒の存在と同じ存在。しかし、見た目が少し違う。塔の遺跡のは蟋蟀コオロギのような姿をしていたが、今回のは糸巻鱏マンタに似たヒレを持っていた。そしてその黒からはやはり駆動音が響き渡り、尻尾と思わしきものを翻し周りの土を弾き飛ばす。その姿は一見すると良いものだが、恐怖を掻き立てる様な速さである。

 「ギギギギギ」
 
 再び鳴り響く鳴き声。

 「あれってまずいよな」
 「まずは、こっちに注意を向けないと」
 「その必要はない様ですよ」
 
 僕が鞍馬さんに聞き返すより早く、その動きは確認できた。急にこちらを振り向き人の気配を近くで感じ取ったのか、尻尾を弾かせながら向かってくる。

 「藤井、陣馬、鞍馬、逃げろ!!」

 西野先生の精一杯の力を尽くした叫びは途絶えた。力尽きた様に深い眠りへと落ちて行く様だ。

 「先生!」

 しかし叫ぶがもう遅い。動かなくなった相手に目をつけたのか、僕らへの敵意を押し殺し声に反応したのか西野先生の方へと向かう。その動きは早く、僕らでは到底追いつかなかった。

 「やべえ」
 「先生!!!」
 「人間、消す、この世から、全て」
 
 工藤音が聞き取れる言葉へと変わった時には既に尻尾が振り下ろされ、西野先生は…無事だった。

 「えっ、何が起きたんだ?」

 始めは黒の存在のせいで見えなかったが、やがてその姿は視界へと入って行く。そこにいたのは一人の銀髪の男性だった。また、その姿はどこかで見たことがある。

 「西野君、大丈夫かなっと今は寝てるんだっけね」
 「お前は、人間、誰だ」
 「普通人の名前は聞くときはまず自分からなんだけど、君は人間じゃないからね。いいよ、僕の名前は狼上霧」

 狼上の名前を聞きたがあまりピンとこない。連太郎も意外にも鞍馬さんも分かっていない様だった。しかし何処かで聞いた気が…。

 「君達、大丈夫かな?そこの君達も早く安全な場所に…」

 反応を予知していたのか、はたまた感が、あの速さを回避しきった。そして、標的を遠ざけたため、今度こそこちらへとやってくる。

 「とりあえず、ここでは部が悪いです。向こうへと行きましょう」
 「はい」
 「OK」
 
 僕らは鞍馬さんの言う通りにこの場を去り走り出しす。その時、狼上さんが何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。


 かなり走ってきた。その間にも黒い存在はその速度を変えずに迫ってくる。ところどころの木々をなぎ倒し空間を作りながら。

 「この辺りなら、良いと思います」
 「ありがとう、鞍馬さん。それじゃあ連太郎、行くよ」
 「OK、バッチコイ」

 一拍おき呼吸を整え、戦闘への意志へと感覚を以降する。その際意外にも自然と溶け込んでしまう。

 「力を貸してくれ、「星刻の時計エルファスト」」
 「俺に力を貸せ「衝弾の銃クルチャック」」

 僕らの姿はものの数秒、いや、約一秒でその姿は動きやすい全身を鎧の姿へと身を包む。僕の姿は黒に白のそして赤だが、連太郎は緑に黒、紫と少し色合いが分かりやすい戦士の魔法使いであった。

 「それじゃあ、行くよ」
 「OK」

 そして、僕らは糸巻鱏マンタの様な姿の黒い存在へと戦いを挑んだのだった。


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