Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

FirstMagic5

今日は遺跡へと向かう。遺跡に名前はなく何があるかもわかっていない道なる地だ。昨日は楽しみすぎて眠れないのは確定と思ったが、いつの間にか寝てしまい朝起きたら目が冴えるほどバッチリだった。対する連太郎は、

 「うわー、寝みー」
 「昨日寝てないのか」
 「遅くまで漫画読んでてよ。寝不足だわ」

 案の定寝不足気味のようだった。しかし漫画とは、僕には無縁かもしれないな。

 「えっ、黒江は漫画読まねーの」
 「あんまり、読まないかな。どちらかと言うと、伝記の方が面白いよ」
 「うわ、お前高校生かよ」

 なんとも複雑な気分にはなってしまったが、気にはしない。それから学校を出てから約一時間意外にも時間のかかる道中に足をやや痛める生徒も現れる始末だった。僕は全然平気だが。

 
 「お前らここが遺跡だぞー」
 
 担任の西野先生は登山にでも行くかのような昔の重装備で整えているのですごく目立って分かりやすい。おまけに声も通るので、こちらとしては少々五月蝿いぐらいだ。

 「凄いな、塔みたいだ」
 「マジかよ、想像以上だぜ」

 僕と連太郎がそんな反応をしたのは遺跡がまるで歴史的価値の高いこれぞ遺跡といったものを想像していたのだか、実際は少し崩れてはいるがほぼ無傷に近い塔のような姿をしていた。

 「先生中には入らないんですか?」

 早速出しゃばる同級生。確かに僕も入れるのなら入りたいぐらいだ。しかし西野先生は首を振る。

 「なんで、こんな目立つもんが今まで調査が進んでないか分かるか?」
 「いえ」
 「どうゆうわけか分からないが、入れないんだ。たとえ塔を破壊しようとしても何かに阻まれるかのようにな。入り口も同じだ」
 「何かの「魔法」なのでしょうか?」
 「それも分かっていないんだ、これが」

 生徒の質問と謎は、分からないの一言で次々と撃ち落とされてゆく。

 「と言うことで、次は森の中を探索するぞ。逸れるなよ」
 「えー」

 子供みたいな事を言ってどんどんと道無き道に入って行く西野先生を不満混じりな声を上げながら渋々ついて行く生徒達。

 「俺らも行こうぜー」
 「はぁー。そうだね。うぅん」
 「如何したんだ?」

 残念な声を上げ仕方なくついて行こうとする僕らは少しおかしな光景を見た。それは同じクラスの鞍馬さんが遺跡へと近づくと、先ほどの西野先生の言っていた事を真逆へと返す出来事が起きたのだ。それは何事もなかったかのように遺跡へと入って行く。他にも見ていた生徒がいるはずだが、まるでなかったかのように気にも留めないのだ。一瞬目を疑ってしまう。

 「見た?」
 「あー鞍馬の奴如何やって入ったんだ」

 如何やら蓮太郎にも見えたらしい。見える者と見えない者がいる?これは何かの「魔法」の一種なのだろうかと思った。僕らは先生の言った事を無視して遺跡へと向かう。すると周りは最初は気にしていたがやがてその存在を忘れたかの如く去って行く。

 「僕らも入れるのかな?」

 そう言って僕が塔の入り口へと腕を近づけてみると、一瞬だが何かに触れたような感覚の後、突然腕が飲み込まれるようにして見えなくなる。

 「俺も…」

 蓮太郎も試すと同じことが起きた。こうなったら入ってみようとの事となり、僕らは同時に入る。

 「じゃあ、行くぞ。1、2の、3」

 スッと僕らの体は塔に飲み込まれるようにして消えたのだった。


 気付いた時には僕らは気絶していた。隣には倒れた連太郎がいる。前には陽の光が届かないような深さがある。

 「ここが遺跡の中」
 「何で入ってこれたの」

 僕の目の前にはいつの間にか立っていた、鞍馬さん。彼女は冷たくも驚きを覚えたような表情を見せる。

 「鞍馬さんは何でこんな所にいるの?」
 「私は運命に従っただけ」
 「運命?」
 「「魔法」を愛するもの決めたレールに従って動く。それが私の今いる理由」

 よく分からない。何を言っているのか理解ができない。

 「ついてきて」
 「待って」

 鞍馬さんはただひたすらに歩いて行く。僕はそれを追うだけ。連太郎を置いてきてしまったが、あれは当分起きないだろう。

 どこまでも続く階段を登る。それは永遠のように長くしかし終わりが見える。

 「貴方方が入ってこられたのは、「魔法」を受け継ぐ力を持つから。私はその力をいま感じました。ここはあなたの「魔法」の眠る地」
 「それって一体」

 ただただ登る。そしてその終わりは唐突に訪れる。

 「ここは、一体」
 「ここはこの遺跡の最上階に位置する神聖なる場。汚すことの許されぬ場」

 そこは他の階とは違う色をしていた。全てが神秘的な光に包まれ、どこか暖かい気持ちになれる。

 「あれを手に取ってください」
 
 鞍馬さんの指が示す先には一つの台が置かれている。そこには何かが置かれている。

 「これは…時計?」

 そこに置かれていたのは時計だった。それも懐中時計と呼ばれるものだ。首にかけられるようになっている。

 手に取ってみると、不思議な光がほとばしる。この間には言葉も発せられなかった。何かの声が聞こえる。しかし聞き取れない。やがて光は止むと再び空気が元に戻る。

 「如何ですか?」
 「如何と言われても」
 「そうですか。…何かいる」
 「えっ」

 突然空気は変わる。どこか暗く悲しい雰囲気が立ち込める。突然のことに理解が出来ないが何かがいた。

 「ギギギ」

 それは何かの駆動音のような音でありながら、その姿は機械ではなく人型に近い何かだった。黒く禍々しいその姿は僕らの方をじっと見ていた。

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