ss 最後

十徒

最後

「ごめん。約束...守れないや...」


今日は1年の中でも一番の真冬日だと言う。
しかし、私はそんなことにかまってなどいられなかった。
そう、今日はハルの退院日なのだ。

ハルは小学生からの幼なじみだ。昔から彼は、病弱で入退院を繰り返していた。初めて入院すると聞いた時は心底驚いたが今は「またなの?」と対応できるようになった。(良いのかはわからないが。)

そんなことを考えているうちにハルが入院する病院に着いた。しばらく会ってないのでどんな顔で会えば良いのかいまいちわからない。
しばらく歩くとハルの病室が見えた。扉の前で深呼吸をし、扉に手をかける。

「久しぶり、メイ」
「久しぶり、ハル」
「今日はどうしたの?」
「どうしたの?って今日退院でしょ?」
しばらく訪れる沈黙...
「今日退院の予定だったけど出来なくなったって言ってなかったっけ?」
全く身に覚えがない。
「じゃあ今日退院できないってこと?」
「そうなる」
「...帰る」
「いやいや待って、どうせならゆっくりしていきなよ」
「だって用事なくなっちゃったし」
「じゃあちょっと外歩こうよ」
「え、外出られるの?」
「一応ね」
「でも今日外寒いよ?」
「大丈夫だって。それより早く外行こう」
ハルは私の手を引いて外へ行ってしまった。

「外に出たのはいいけど、何にも決めてないや」
「やっぱりそうなんだ」
「そしたら僕の行きたいところに行こう?」
「決めてないんじゃなかったの?」
「今きめたの!」

私はハルのこういう所が好きだ。もちろんこれはハルには秘密だ。


「着いたぁ!」
「ここ?」
「そうだよ」
そこは病院からそう遠くない小さな広場だった。
「メイ、ひとついいかな?」
「どうしたの?」
「実はね、俺..メイの...メイのことが前から好きだったんだ」

(えっ..嘘...そんなわけ....
だってハルは..違う娘のはずじゃ.....)

ーでもこれは本当のことなんだー

「実は、私もなんだ...」
「本当に?...」
「うん」
「やっ、やったー!」
「ちょ、はしゃぎすぎw」
でも私も心の中では私もおなじだった。
「じゃあ、今度一緒にどこか行こうよ」
「ちょっと気が早すぎない?」
「いいじゃん。でどこ行く?」
「もう...」
(どんだけ素直なのよ...)
「じゃあ、ハルが退院してから決めよう?」
「えー?」
「まだ話し終わってないよ?
それに早く退院して、それからデートしよ?」
「...そうだね。うん、頑張って治すよ」
「うん!じゃあ約束ね。あ、もうこんな時間じゃん。病院戻らないとだね。」
「もう戻るのかぁ。つまらないなぁ。」
「ちゃんと直しなって」
「わかってるよ。」
そう言って私達は病院へ歩き出した。
これから楽しい日々が待っている。そう確信した。
だが、悲劇はいきなり訪れた...

「ねぇ。この道であってたっけ?」
「合ってるよ?」
「そう?」
「うん」
「ねぇ、俺本当に約束守れるかな...」
「いきなりどうしたの?」
「なんか心配でさ」
「弱気だなぁ。もっと自信持ちなよ」
「うん...」
その時...
「メイ、前ッ!」
「え?」

トラックだった...
(あ、私なんで前見てなかったんだろう。私、死んじゃうのかな。)

「メイ...ごめん..約束..守れないや...」
「ハ、ル?...なに、言ってるの?」

その時には私の前にハルの姿はなかった...
「え...」

私の頭は真っ白になった。
そんな私を現実に引き戻したのは、周りからの悲鳴だった。

そして私はようやく自分のおかれている状況がわかった。そして、
「ハル!」
急いで悲鳴のある方へ走った。
そこにあったのは赤く染まったハルの姿だった。
「ハル!起きてよハル!
早く退院するんでしょ!
早く退院して、一緒にデート行くんでしょ!
目をあけてよハル!」

だが返事はなかった。
なんの知識もない私にでももう手遅れだってわかった。だが私の頭は理解を拒んだ。

「ハル...
ごめんねなんて...聞きたくないよ...
ごめんねなんて......」


それから私は毎日ハルのお墓に通った。
ハルと..そして私のために....






中学の時に作って
大分前に公開してると思ってた(してなかった)

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