感情が無いけど何か?

ノベルバユーザー110056

第1話 喪失

雪の積もる冬のことだった。
『校庭裸で10週走れば許してやるよ』
いじめっ子のリーダーにぶつかってしまい(向こうから当たってきたのだが)、4人がかりで殴られ更にこんなことを要求されている。
「そ、そんなの出来るわけないだろ!」
口を開き、反論しようとした。すると
背中に鈍い痛みが伝わった。
「がっ」
思わず地面に手をついた。おそらく後ろのやつに蹴られたのだろう。そして更に髪を掴まれ持ち上げられて
『拒否権なんかねえんだよ…早くしろ』
涙が出た。何故こんなこと…声に出し、訴えようとした。でも、声が出なかった。
「畜生…」
『あくしろよ』
上着を脱がされ、はやし立てられて、止まらなくなった涙を乱暴に拭き取り、服を脱いで走り出した。
しかし2、3週した所で意識が薄れ始めた。
「もう…無理…辞めさせて…辞めさせてください…」
懸命に、どうにかして助かろうと…訴えて…
次の一言で、意識が覚醒した。
『なんで?』
その、あまりに短く、あまりに冷酷な一言で、記憶が途切れ、気づいた時には…


目の前に、いじめっ子のリーダーが倒れていた。
「あ、ぁぁぁ…」
まずい、なんてことをしてしまったんだ。
今にもこいつが起きて、俺は、俺は… 
いや、諦めるな。今から逃げればまだ間にあう。
深呼吸して、震える足を落ち着かせて、今すぐ逃げるんだ。
逃げないと…
刹那、後頭部にとんでもない衝撃が落ちる。
喉に感じた圧迫感。吐き出すと…血だった。
寒い、痛い、目の前が霞む。後ろでいじめっ子らが
何事か言い争っている。
『お…なにしてん………』
『知ら……お前……言って…』
『逃げ……先生……見つ……』
そして逃げ出した4人を見届けた俺は、今になってやっと死の恐怖を感じ始めた。
死にたくない…死にたくない…
でも現実は非情で、血は止まらない、もう目も開けてられない。
生き残ったら、あいつらに絶対復讐してやる…
まぁ、生き残れたらの話だが。
…逃げなければ、こんな事にはならなかったかなぁ…
これが最後、意識が途切れた。

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