ODA〜ロリコンのヤンデレ系サイコパス〜

ノベルバユーザー12152

第5話

 キーンコーンカーンコーン⤵︎キーンコーンカーンコーン⤴︎キーンコーンカーンコーン⤵︎キーンコーンカーンコーーーン⤴︎

 校内にみなさんお馴染みの『ウェストミンスターの鐘』が鳴り響く。

 生徒たちはまるで蜘蛛の子を散らした様に教室から退出する。

 ある者は己おのが武器シャーペンと盾消しゴムを武具入れふでばこへとしまい、漆黒の甲冑制服へと装備を変更した後に安住の地自宅へと向かい始める。また、ある者を制服拘束具脱皮する事で脱ぎ捨て色とりどりの鎧ユニフォームへと着替え、、修羅場部活へと羽ばたき魂を削り始める。

 そんな中、パイオニアとしてだろうか。それともロリコンだからだろうか。たった一人で男が誰よりも早く、誰よりも鮮やかに扉を開け、今その足を踏み出そうとしていた。

 ーーーー俺たちは解放されたんだ。学校という名の牢獄から。さあ行こう!すぐ行こう!今行こう!桃源郷へt・・・

 その足は廊下へと届く事はなかった。

 ーグワシッ。

 誰かに肩を掴まれる。その力たるや あのODAであろうと逆らえない程に強力で、理不尽だった。だが、誰よりもODAは分かっていた。何故振りほどくことが出来ないかを。その現実から逃れる事が出来ないかを。

 思わず空を仰ぐ。空は憎たらしい程に澄みきっており、それはまるであの子達の心の中の様で・・・

 不意に頬を一筋の涙が伝う。どれだけ上を向いていようと一度溢れ出した感情は止まることを知らず、現象となりますますODAの頬を濡らしていく。

「いやお前小学校に張り付くの禁止されてなかった?」

 だが、そんなODAを背後から見ている彼にはまだ表情が見えていない。

「あ゛〜」
「いや『あ゛〜』ってなんでそんな声出してるんだよ。」

 掴んだ肩を強引に引き寄せる。引き寄せる?

 そこに居たのは涙腺崩壊状態のODAであった。

「なんで泣いてるんだよ・・・」
「だっで〜あの娘達が俺のことを待ってるのに、あの娘たちは俺のことが怖いっで〜」

 支離滅裂である。

 ODAがジリジリとにじみ寄って来る。顔から有りとあらゆる液体を垂れ流しにした状態にも関わらず。

 あまりのキモさに思わず顔をしかめてしまうが、いつもキモいので耐性がついてしまっている彼にはこの程度では怯まない。寧ろ此方からガンガン攻めていく。

「そんな事よりこれを見てくれ」

 そう言って見せたのは絶賛大人気中の【ご所望のホッキョクウサギです】に登場するキャラクターであった。

「今回はなんとチノパンを履いてるんだ!パナイだろ?もう尊すぎて吐きそうだよ‼︎」
「五月蝿いこのロリコン野郎が。俺は2次元には興味が無いんだよ‼︎」

 特大ブーメランが刺さる。だが、そこまで言われては萩埜も黙ってはいない。

「3次元に劣情を催す奴が何偉そうにほざいてるんだ。いいか、そもそもロリコンとは13歳以下の幼女・少女への性的嗜好や恋愛感情を持つ者のことも指すこと(萩埜調べ)だ。それならこのキャラクターは13歳以上だから俺には関係ないね!」
「3次元に劣情を催す?ああ、俺のことか」

 だが、萩埜の熱弁も虚しく空振りに終わる。

「端的に答えを事実を提示しないでくれ。今後のお前への接し方を改めなくちゃいけなくなるから・・・」
「そん時はそん時だろ」
「お前は強いな。高校生の社会なんて学校の友達とでしか構築されないのに、そんな中で嫌われても平気だとか常人では到底考えられないよ。」

 萩埜の言い振りからは尊敬よりも呆れの感情が見て取れる。

「よせやい照れるじゃ無いか」
「スゴイネーホントにスゴイネー」

 お互いに感情のこもっていないやり取りをする。このやり取りも何度目だろうか。さながら熟練の夫婦の様にマッタリとした会話を楽しんで・・・おっと誰か来た様だ。

 まぁ、良いだろうこの二人のコンビプレイは洗練されすぎていてホモ疑惑が上がっているのだが、それは俺のせいじゃ無い。俺は悪くねぇ!だから、扉を蹴破ろうとするのをやめて下さい。お願いします何でもしますから(何でもするとは言ってない)

 話が逸れてしまった。

 なにがともあれ、再び二人の会話をクローズアップしてみよう。

「いやーでも確かにこのキャラクターは可愛いよな!3次元にしか恋はしないが、確かに可愛い。」
「だろ!この何とも言えないあどけない感じが堪らないんだよな‼︎」

 彼らはロリコンであった。

 だが、思い出した様にODAのテンションが急降下する。

「はーー・・・。」
「そう言えば何があったんだ?一昨日唐突にお前から『俺の天国への立ち入り禁止だとよ。人生オワタ\(^o^)/』って連絡がきて、面倒いから既読無視してたら今度は『私が人生の勝者です』って訳の分からん内容の連絡がきたから、詳細を聞き出そうと思ったけど、一向に既読つかないから、とうとうトチ狂って自殺したんじゃ無いかと期待・・・もとい心配してたんだぞ?」
「素直に酷い」
「悪い悪い。冗談だよ」

 ケタケタと笑いながら謝罪する。

「うーんそうだなぁ・・・詳細の詳細までは省いて説明すると…。」
「すると?」
「張り付き禁止令を喰らって」
「喰らって?」
「変質者の目撃情報が上がったから、見回りに行って」
「見回りに行って・・・見回り⁉︎」
「変質者から日向ちゃんを救って・・・」
「は?」

 萩埜の理解の範疇外へと話は進んでいく。

「家まで送り届けた後に調教を開始して、ついでに生まれてきた事を後悔させて。」
「ちょ・・・おっおぅ」
「翌日に日向ちゃんと感動の再会を果たして」
「感動感動」
「日向ちゃんに『お兄ちゃん』って呼んで貰って。デュフフ」
「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 どうやら萩埜には負担が大き過ぎたのだろう壊れたラジオの様に言葉を繰り返すだけになっている。

「とまぁ、兼ねてこんな感じで間違ってないはずだ。」
「成る程」

 少しの間萩埜は頭の中を整理していた。

 すると突然

ーカッ‼︎

 と擬音がつきそうなほど勢いよく瞼を開く。するとスマホを取り出し、先ほどの『チノ』パンを履いたキャラクターを眺めだす。

 彼なりに昂ぶる気持ちを抑えているのだろう。

 ある程度整理がついたのかスマホの電源を落とし、ゆっくりとODAへと焦点を合わせる。

 冷や汗を流し、膝は笑っているがそれでも声を搾り出す。

「お前はとうとう・・・」
「おう?」

「幼女に手を出したんだな‼︎‼︎」

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