ODA〜ロリコンのヤンデレ系サイコパス〜

ノベルバユーザー12152

第3話

 黄昏時。辺りは徐々に暗やみに蝕まれ、次第に漆黒の闇へと変貌を遂げる中、少女は闇から逃れるように家路へと向かっていた。

 ーー刹那 

「・・・ッ⁉︎」

 何処か覚えのある視線を感じ、咄嗟に後ろを振り返る。だがそこに在るのは見慣れたはずの通学路だった。

 人の波が引き、今や人っ子一人見当たら無いその道は何処か知ら無い街の知ら無い道の様で、より一層少女の恐怖心を掻き立てる。

 急に不安になる少女だったが、その思いを払拭する様に今日の出来事を考える。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 今日は少し変わった日だった。いつもの様に授業が終わり、帰えりの準備をし終わって校門を見てみると何やら怪しい、制服姿の男の人が校内を覗きながらニヤニヤニヤと気持ち悪く笑っているのが見えた。

(またあの人がいる。)

 また、というのも一ヶ月に二回くらい校門の前に立ってはニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤとキモい笑みを浮かべては小学生を見ているのだ。

 余りにもキモいので、何度も先生に相談したのだが、先生が追い払おうと、校門に行くと、その時にはもう居なくなっていて先生に嘘を言ったと疑われるのがオチなのである。なので、今や学校の七不思議として語られている。

 その内容は夕方、学校内で自殺した生徒が自殺に追い込んだ生徒を捜すために校内を覗き込んでいるのだとか。そしてもし、目が合えば何処かに連れて行かれる。しかし、大人が大の苦手で大人のそばにいれば絶対に安全。という内容である。

 そして今日。その男の人と目が合ってしまったのである。しかし意外なことにその男の人は満面の笑みを浮かべて此方に手を振って来たのだ。

 少女は素直にキモいと思ったが、嫌悪感を顔に出してしまうと、あとが怖かったので、手を振り返してあげたのだ。しかしこれがいけなかった。

「デュフフ」

 男のキモさがレベルアップしてしまったのだ。余りのキモさに半径10メートル以内に近寄るのが怖かったので、少女は頼れるおじさんことお巡りさんに学校の受話器から電話をしたのだった。

 〜3分後〜
 キモい人はいなくなった。何やらおじさんと色々あった様だが、何処かにおじさんが連れて行ってしまった。

 しかしながら、あの男の人が吸った空気を吸いたく無かったので、しばらく学校に残ったのだった。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 少女が物思いに耽っていると・・・

「・・・ッッ‼︎」

 又である。またあの視線を感じたのである。しかし今回は先ほどのよりも近く、より粘着質な視線であった。

 何処か馴染みのある視線だと思った。これは・・・確か・・・そう、あの視線だ、校門前にいたあの男の人と同じ系列の視線である。

 ーー視線が合えば連れ去られる。

 ふとこの言葉が脳裏をよぎる。考えすぎだ、あれはただの迷信で、そもそもおじさんが何処かに連れて行ってくれた・・・。

 幾ら言葉を重ねようが、心に芽生えた恐怖心は消すことができない。

 怖くなり、一刻も早くこの場から逃げ出そうとすると、不意に誰かに手を引っ張られ、裏路地へと引きずり込まれる。

「痛たた・・・」

 思いっきり引っ張られた為に、勢い余ってこけてしまい、膝を擦りむいてしまった。だが、気付いてしまった。

 そこにいる何かに。

「ひっ‼︎」

 思わず後ずさるが、何かは構わず距離をつめてくる。

「テュフフ」

 笑い声が木霊する。何かは少女を捕まえようと手を伸ばす。その絶体絶命とも言える状況で少女が見たものとは・・・知らないおじさんだった。

 服は汗で体に張り付き、無精髭は伸びきっていて、頭はハゲ散らかしている。おまけに息遣いは「ハァ ハァ」と乱れている。そんなTHEキモンスターがそこには居た。

 しかし気が付けば、キモンスターが伸ばした手は空を切り、少女に触れる事なく土とハイタッチし、地面と熱いディープキスを交わしていた。

 訳が分からず、少女は思わず狼狽してしまうが、そんな少女の思考をフォローする様にある男が現れる。

「大丈夫?怪我はないかい?」

 優しい口調で少女へと語りかけるのは我らがODAである。

「えっと・・あの・・・は、はい」

 未だによく状況を理解できない少女は曖昧な返事しかすることが出来ない。

 至極当然である。いきなり襲われたと思ったら、いきなり救われているのである。誰でも「なぁにこれ?」と首を傾げたくなるだろう。

 しかし、困惑少女を尻目にODAはとんでも無いものを見つけてしまう。そう、怪我である。

 あろう事かこの下衆は少女を裏路地まで連れ込んだ挙句、膝に擦り傷まで負わせているのである。

 思考がまとまらない。この怒りを何処にぶつければ良いのか分からず、取り敢えず、この下衆の処刑方法を8個ほど思いついた所で、思考が纏まった少女から声がかかる。

「助けて頂いてありがとうございます」

 無垢な笑顔がODAの心を浄化していく。

 怒りの行き所?そんなもの今地面で伸びている下衆を死なない程度に殺せば済む話では無いか‼︎何を俺は迷っていたんだ。

 とサイコパスならではの答えにたどり着いた所でODAは質問する。

「所で膝を怪我しているね?」
「そう言えば・・・」
「僕は絆創膏と綺麗な水と、傷薬を持っているから治療してあげよう」

 今のODAの表情を見ると百人中百人が声を揃えて「これぞ正しく喜色満面だ〜」という様な表情で治療の準備をする。

 しかし待って欲しい。『YESロリータ NOタッチ』を格言としているODAにとって治療は是なのか非なのか。

 みなさん考えて欲しい。ロリコンが少女の肌に触れるのだ。これはいかなる手を尽くしてでも止めるべきであろう。

 みんな、武器は持ったか?出来るだけ貫通性が高く、殺傷能力が高いものにするのだ!何?落ち着けだと?落ち着いていられるか!今まさに犯罪が・・・

 などどいう、作者の心配は杞憂に終わる。

 そう、職業:変態紳士 であるODAは見事に直接は触らずに、治療をやってのけたのである。

「もう暗いから、送って行ってあげるよ。」
「あ、ありがとうございます」

 たどたどしく少女は返事をすると、ゆっくりとおぼつかない足で地面を踏みしめていく。ようやく家に帰れるのである。

 〜〜〜〜〜〜〜

 辺りは夕日も殆ど沈み、街灯が道を照らす中、ODAと少女はゆっくりと歩みを進めていた。

 暫くすると、何やら少女がモジモジしているのにあざとくODAは気がついた。

「どうしたの」

 モジモジしているのを気づかれた事に少し動揺しつつも、言葉を紡いでいく。

「手を・・・繋いでもらっても良いですか?」

 よっぽど先ほど手を引っ張られたのが怖かったのだろうか。少女はこの男があの校門前のキモいやつであるのにも関わらず、手を握る事をお願いする。

 その表情は暗がりの中でよく見えないが、顔に赤みが差しているのは、夕日のせいであろう。

「いいよ」

 ODAは端的に答えを提示するとゆっくりと少女へと手を差し伸べた。

 少女はおずおずとODAの手を握り、ODAの手が少女の手を優しく包み込む。

 〜〜〜〜〜〜〜
「今日は本当にありがとうございました」

 ペコリと少女はお辞儀する。

「困った時はいつでも呼んでね?きっと力になってあげるからさ」

 少女は

「またね!」

 と言うと、逃げる様に家の中へと入っていく。

「『またね!』か・・・」

 思わず顔がにやけるのを自覚しつつも、ODAはスマホを一瞥し、いつもの様に闇へと姿をくらませていった。

 〜〜〜〜〜〜〜
 その夜。閑静な住宅街には少女の嗚咽が響き渡るのだった・・・。


 そしてODAは一人の少女の住所を合法的に入手する事に成功したのである。

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