スイーツエンジェルへようこそ♪
初めての・・・・・・
満面の笑みを浮かべる愛優さんを見た僕は何かよからぬ誤解を招いてると理解した。
「・・・・・・あの、愛優さん」
「なぁに?」
うわ・・・・・・これはダメやつの笑顔だ。
そんなに人付き合いが良い方でもない僕でさえ、すぐにわかる笑顔だった。
これは早めに誤解を解かないと後々めんどくさそうだ。
「これは・・・・・・ですね」
「大丈夫~大丈夫~♪ お姉さんそういうの理解ある方だと想うから~♪」
今度はニヤニヤし出したよこの人!
もしかして、愛優さんってこういった話大好きなのかな?
「だから、これは誤解・・・・・・」
「? ソラさん、なんのことですか?? 誤解なんてないと思いますが・・・・・・」
「あらまぁ!」
あらまぁ! じゃないですよ! そんなに顔をきらきらされても何も無いですからね!?
「ちょっと愛音さんは黙っててください!」
愛優さんは勘違いしてるし、愛音さんは何のことかわかってない・・・・・・。
「いやいや、誤魔化さなくても大丈夫だよ~。そうだよね、男性恐怖症の愛音が何の理由も無しに男の子を連れてこないよね~」
「だから違います! 僕と愛音さんは・・・・・・」
「貴方と愛音は~?」
「だから・・・・・・その・・・・・・そんな関係じゃ・・・・・・」
僕が言葉に詰まった時、更なる悲劇が。
「愛優姉~。もう、お風呂大丈夫──って! ソラくんとカノちゃんがイチャイチャしてる!」
「だから違うって!」
そこに凛菜さん来て、勘違いされてしまった。
「凛菜さんまで・・・・・・どうしたんですか?」
愛音さんは愛音さんで未だになんの事かわかってないし・・・・・・。
「カノちゃん、ソラくんと仲良くするのはいいけど、間違って家族を増やしたりしないようにね♪」
「だから、そんな事はしないです!!」
「家族を増やす・・・・・・? 家族が増えるなら女の子がいいですね」
「ちょっと! この娘はにゃにを言ってるのかしゅら!」
「あはは~。ソラくんカミカミだ~」
「愛音もソラさんと付き合ってるなら言ってくれれば良かったのに~。そうすればもっと配慮したんだよ?」
「えっ? 付き合う・・・・・・?」
「あっ。・・・・・・~!」
愛音さんの顔がみるみる赤くなる。
どうやら愛音さんは、今になって状況を理解したようだ。
「あ〜愛音ったら赤くなっちゃって~」
「愛優姉、多分ボク達お邪魔だと想うから後は若いおふたりに任せて部屋に戻ろうよ」
いやいやいや! 何を言ってるのこの人達は!?
「それもそうね~。後は、若いおふたりで♪」
行ってしまった──。
「「・・・・・・・・・・・・」」
「あっ、激しくしてもいいけど、壁はそんなに厚くないから程々にね♪」
「だから、誤解ですってば!」
終始翻弄されっぱなしの僕だった。
・・・・・・
・・・・ 
・・
「・・・・・・流石にこのままじゃ不味いよなぁ」
あの後、僕はその場から逃げるようにお風呂を借りて、今に至る。
「後でちゃんと言っておかないとなぁ」
あの様子を見た感じ、通報とかは無いと思うが、それでもあらぬ誤解だけは解いておきたい。
「しかし・・・・・・どうやって解けばいいんだろう。愛音さんはなんの事か全く理解していなかったみたいだし・・・・・・」
「愛音さんに説明してわかってもらうのが先? いやいや、あんな純粋無垢な子を僕みたいなのが汚しては」
僕が少し頭を抱えていると、脱衣所に人の気配が。
「? 誰だろう」
確か、愛音さんの話では愛優さんと凛菜さんは既に入っているっぽいし、愛音さんには先に入ると言った。
(もしかしてタオルとか取るのを忘れていた?)
いや、それもないはず。ちゃんと愛音さんに確認し、用意もした。
「って!?」
そのシルエットを観察していると、何かを脱ぎ出す仕草をしているではないか!
「まてまてまてまて!! 確かまだ入っていないのって。あっ!」
愛音さんだ・・・・・・。
これはますい、非常にまずい。あの展開の後だ、良くて更に誤解、悪くて通報だ。
いやしかし、ここで声をかけるのも・・・・・・って愛音さん洗濯機回しちゃってるぅ!?
つまり、もう後には戻れない、
このまま声をかけたとして、愛音さんは着る服がない、無理に待たせて風邪を引かれても困る・・・・・・しかし一緒に入浴は色々とアウトだ。
「ここから逃げる事は・・・・・・」
僕はチラリと窓の方を見る。
しかし窓は少ししか開かないタイプのやつで、どう頑張っても人が通れるような幅ではなかった。
僕は再び脱衣所の方を見る。
「って、もう入る所じゃん!」
シルエットがお風呂場の扉に手をかける。
「ああ・・・・・・もう終わりだ・・・・・・」
全裸の女子中学生と一緒に入浴。これが兄妹ならまだギリギリセーフだろう・・・・・・セーフだよな?
うん、セーフだ。
しかし、彼女は兄妹でも無い、ましてや今日知り合ったばかりだ。それなのに一緒に入浴とか・・・・・・なんて犯罪的!
確かに嬉しいか嬉しくないかで聞かれたら間違いなく嬉しいと答えるであろう。言っておくが僕はロリコンじゃないぞ?
これはその、あれだ。男の本能というやつだ。相手がどんなにロリロリっ娘でも、それが可愛ければ理性を保つので精一杯だ。
それなのに一緒にお風呂? なに? 明日僕死ぬの? それとも今日社会的に死ぬの?
新聞の一面に『宿泊先の女子中学生と淫行』とかありもしない事を書かれて、その上知り合いでもない、ただ一度顔を合わせたかどうかってレベルの人達に『いつかやると思ってました』とか『(初めて見た時から)この人、ちょっと危ないな・・・・・・と思いましたね』とか『小学生こそ至高! 中学生は対象外! おお! 同志よ! 中学生に手を出すとは情けない』とか言われちゃうの!? いや最後のは少し違うけど、と言うか誰が同志だ! 僕はロリコンじゃない!
──本当だからね?
風呂場の扉が開き、誰かが入ってくる。だけど僕は壁を見ている、大丈夫だ、何も問題は無い・・・・・・はず。
「あ、あの・・・・・・」
声でわかる。やっぱり入ってきたのは愛音さんだ。
「ど、どうしたんですか愛音さん」
「いえ、先程は私のせいでソラさんにご迷惑をおかけしたみたいなので・・・・・・」
「いやいや! 迷惑だなんて!」
「だから・・・・・・その・・・・・・」
「よろしければソラさんのお背中を流させては貰えないでしょうか・・・・・・」
「愛音さん! 何を言ってるんで・・・・・・す、って」
──はい? 背中を流す?
「はい、愛優さんは私に『ソラさんの事、後はお願いね♪』と言ったりしてました」
「愛優さん何言ってるんですか・・・・・・」
思わず頭を抱える。
「あと『これぞ本当の身体の付き合い♪』とも言ってました。私にはなんの事かさっぱりでしたが」
愛優さああああああん!!!!????
恐らく愛音さんはその言葉を普通の意味で言ってるんだろうけど、愛優さんが絡んだ途端別の意味に聞こえてくるんですけど!!
「それで・・・・・・ソラさん。お背中をお流ししてもよろしいでしょうか?」
「えーっと。その前に確認してもいいですか。愛音さんって今は何か着たりしてますか・・・・・・?」
「? お風呂なので、何も着てませんが・・・・・・」
アウト!!!!!!!! この子の貞操概念どうなってるんですか!? 愛優さんとか凛菜さんとか教えてあげてますか? 教えてるわけないですよね! 知ってました! はい!
「でも、流石にタオルを巻いてますが・・・・・・ダメ、でしょうか?」
ん? タオル?
愛音さんの方を見る。
「なんだ・・・・・・タオルを巻いてるのか、それなら安心だ・・・・・・」
「? 何が安心なんですか?」
「い、いや! 何でもない! 背中を流してくれるんだよね? それならお願いしちゃおうかな!」
「はいっ!」
僕がそう言った時の愛音さんの顔は嬉しそうだった。
僕? 僕も思わずニヤケてしまったよ? だって男の子だもん。ロリコンではないけど・・・・・・嘘じゃないからね?
・・・・・・
・・・・
・・
流して貰うことになり、湯舟から上がろうとした時、重大なことに気がつく。
「とりあえずさ・・・・・・僕にもタオル貰えないかな?」
「え?」
そう、僕の分のタオルが無いのだ。
これが男同士ならまだいい。いいのか? 多分いいよな?
しかし、今回は年頃の・・・・・・女子中学生だ。愛音さんは何とも思っていないのか、それともただ単に忘れているのか・・・・・・多分、愛音さんの事だから素で忘れていたんだろうな。
「あの~非常に言い難いのですが、僕にも隠したい気持ちがある・・・・・・と言うかなんというか」
「あ、ああ! す、すみません! 気付かなくて」
愛音さんは顔を真っ赤にして僕の分のタオルを取りに行った。
「やっぱり素でしたか」
僕はほっこりした気分になった。
・・・・・・
・・・・
・・
一方その頃。
「う~ん。愛音はソラさんと上手くやってるかな?」
私は宿題をやるために、机と向き合ってはみたが、愛音達の事が気になりすぎて手が止まっていた。
──数分前。
「裸の付き合い・・・・・・ですか?」
ソラさんがお風呂へ向かった後、私は愛音と再び会話をしていた。
「そう、裸の付き合い。それが重要なの。だからね愛音、一緒にお風呂へ入って、背中の一つや二つ流してあげたらどうかな~って」
「あ、あの・・・・・・確か裸の付き合いって本当には、裸で付き合うって意味ではなかった気が・・・・・・」
この家の中である意味一番しっかりしているのは愛音。しっかりしているだけあって、簡単に騙す事は出来ない。
(う~ん、やっぱり愛音は手強いわね・・・・・・あっ、そうだ♪)
「ねぇ愛音~」
「な、なんですか愛優さん。そんな見るからに何か企んでる顔をして・・・・・・」
「裸の付き合いって違う意味もあるの・・・・・・知らないでしょ?」
「えっ?」
愛音は目を丸くした。
(よしっ! やっぱり知らなかった!)
私は心の中でガッツポーズをする。
「あのね、実は・・・・・・ゴニョゴニョ」
私はそっと愛音に耳打ちをする。
「ね? だから裸の付き合いってのはとても重要なの。ソラさんは今日来たばかり、しかも私の見立てだと彼は女の子に慣れていないと見た」
推理でも披露するかのように私は続ける。
「そんな中、仕方ないとはいえ急に女の子しか住んでいない所に連れてこられたら・・・・・・どう思うでしょうねぇ」
そこでチラリと愛音を見る。
「・・・・・・・・・・・・凄く緊張するし、不安になると思います・・・・・・」
私はここで勝ちを確信した。
「そうだよね~。だからまずは緊張を解したりしてあげないといけないと思うの」
「それも、そうですね」
「だから愛音・・・・・・後はお願いね♪」
「ふぇ?」
「ふぇ? じゃなくて、彼を連れてきたのは愛音でしょ。だから、彼の事は愛音に任せたよ~」
「ふぇぇぇぇ!?!?」
そう言って、愛音が脱衣所に入るのを確認してから自室に戻り、今に至る。
「宿題をしなきゃいけない・・・・・・だけど、気になる・・・・・・」
あぁ、今なら頭の上に天使と悪魔が出てきそうだ。
天使:いけませんよ。今やお風呂場はふたりの聖域、誰も踏み込んではいけないのです。だから貴女は今は黙って机を向き合うのです。
悪魔:覗いちゃえ、覗いちゃえ。若い男女が裸の付き合い・・・・・・もしかしたら、一線を超えるかもしれないんだぞ?
いいいいい、いっせんを超えるぅ!? そんな事あってはならない!
天使:あのふたりを信じなさい・・・・・・。それにあのふたりがそんな事をするように見えますか?
そ、そうだ・・・・・・落ち着け私。ソラさんはまだわからないけど、見た感じ大丈夫そうだったし。愛音は・・・・・・あれ? 愛音が一番危ない気が・・・・・・。あの子時々天然が暴走して、とんでもない事を言い出す時もあるし。
悪魔:もしかしたら今まさに天然が暴走してるかもしれないぞ?
天使:いけませんよ愛優。こんな悪魔の囁きに耳を貸しては。
「そ、そうだよね! 時々天然が暴走しちゃったりするけど、ソラさんが相手なら大丈夫なはず・・・・・・。あ、でも、あの子たま~に素晴らしい言い間違いをする事があるからなぁ。」
昔愛音がまだ小さい時に、抱っこして と言いたかったのだろうけど。それを。
「愛優お姉ちゃん、私も抱いて~」
とか言っちゃう時もあったし・・・・・・いや、あの時はびっくりしたなぁ。あの子公共の場で言うんだもん・・・・・・。
「本当に昔から男女の交際とかそういったのには疎いんだから・・・・・・って、その調子で言ったら不味くない!?」
悪魔:・・・・・・これ、ヘタしたら新しい家族が増えるんじゃないか?
「悪魔が何か危ない発言をしだした!?」
天使:・・・・・・オフタリヲシンジマショウ。
「天使が遂に片言に!?」
やばい・・・・・・どんどん不安になっていく。不安とか緊張を解すために~とか愛音に言っておきながら、私が不安になってきた。
???:ほっほっほっ
「!?」
???:わしじゃよ。わし。
「いや、わしと言われても・・・・・・」
気のせいだろうか・・・・・・やけに辺りが眩しく感じる。
???:わしじゃよ。ほれ、神様じゃよ
「神様が降臨なさったーー!?」
神:天使よ、自信を持ちなさい。彼らは正しい道を選ぶと。
天使:そう・・・・・・ですよね。ごめんなさい神様、私もっと自信を持ちます!
天使:という訳なので、あのおふたりは大丈夫です! なんと言っても神様が保証してくれたのですから!
えっへんとあるような無いような胸を張る天使。
「そ、そうだよね? あのふたりなら大丈夫だよね?」
???:ふはは。甘い! 甘いぞ! 昔は朝の七時から夜の十一時までしかやっていなかったけれど、今は二十四時間営業しているあのコンビニのドーナツよりあまあああああい!!!
「また別の何かが、めちゃくちゃ危ない発言しながら出てきたんですけど!!」
???:久しぶりだな・・・・・・
神様:ま、まさか・・・・・・お主!
「えっ? 何? もしかして神が来たという事は・・・・・・ま、まおう!?」
魔王:そうだ、私は魔王だ。久しぶりだな・・・・・・かっちゃん!
「へっ?」
天使&悪魔:えっ?
神様:久しぶりじゃのうまーちゃん!
は? かっちゃん? まーちゃん?
神様:お主、久しぶりだからってそんな魔王っぽい口調じゃなくてもよいのに
魔王:そうか・・・・・・では、遠慮なく。アラヤだかっちゃんったら~本当に久しぶりネ~
「・・・・・・はあああああ!?!?」
なんで魔王がオカマ口調で話してんの!?
神様:ほっほっほっ。懐かしいのぅ~。天使よ、後は私に任せなさい。
天使:わ、わかりました。
魔王:悪魔、お前も後は私に任せるがいい。
悪魔:りょ、了解であります。
「・・・・・・・・・・・・」
急すぎる展開に私は全くといっていいほどついていけなかった。
天使と悪魔ならまだわかる。まだね? 何神様と魔王って!? しかも魔王に至ってはオカ魔王だし!
私が一人頭を抱えている中、オカ魔王と神様は話し続ける。
オカ魔王:それで、どうしたの~? かっちゃんが人間界に来るなんて珍しいじゃない~。明日隕石でも堕ちてくるんじゃないかってまーちゃん不安になっちゃったよ~
神様:すまんすまん。久しぶりに人間界を見ていたら、どうも楽しそうな事で悩んでる娘がおってのぅ。つい、出来心で☆
「い、いんせき!? と言うか楽しそうな事で悩んでいる娘って私!? あぁもう! ツッコミが追いつかないいい!」
オカ魔王:楽しそうな事? それってなあにかっちゃん
神様:それがのう・・・・・・若い男女がお風呂場でランデヴーとかなんとか
「違うから! 確信を持って言えないのが悔しいけど、多分そんな事になってないはずだから!」
オカ魔王:ランデヴー!? なにそれ楽しそう~。かっちゃん、ワタシ達も見に行きましょ~
神様:ほっほっほ。その誘いは愚問だぞまーちゃん。こ~んな楽しそうな事見に行かない訳ないでしょー!
「あっ、ま、待てー!」
私は魔王と神様を追って風呂場へと向う。
風呂場の前の脱衣所に着くと、神様と魔王は扉に耳を当てていた。
「もぅ・・・・・・そんな事しても何も聞こえないはずですよ・・・・・・」
「痛っ!」
私が言い終わるか終わらないかのタイミングで中からソラさんの声がする。
私は音を立てないように風呂場の扉の前へと移動する。
「ご、ごめんなさいっ!」
「!?!?」
私は慎重に扉に耳を当てた。
「大丈夫ですか・・・・・・?」
「だ、大丈夫です!」
「そ、そうですか・・・・・・すみません、私男の人にこんな事するのは初めてなので・・・・・・少し、緊張しちゃって」
えぇ!? あのふたり何をやってるの!? こんな事をするのは初めて? ナニやってんの!?!?
「僕も、女の子にこんな事して貰うのは初めてなので、とても緊張してます」
「も、もう一度いきますね」
「は、はい」
いけないと思いつつも耳を立ててしまううう!
「はぁ、はぁ」
「愛音さん疲れてますか?」
「い、いえ。大丈夫です。ただ・・・・・・」
「ソラさんの・・・・・・思っていたよりもずっと大きくて・・・・・・はぁ、はぁ」
(思っていたよりも大きい!? あの子実はそんな事考えていたの!?)
「私のじゃ・・・・・・小さすぎて全然気持ちよくなんかない・・・・・・ですよね」
「そ、そんな事・・・・・・ないっ、です。確かに小さいけど・・・・・・気持ちいいですよっ」
(き、き、気持ちいい!?)
気が付くと私の顔は赤く火照っていた。
「それなら・・・・・・よかったです」
「あの・・・・・・ソラさん」
「はい」
「よければ、私もやってくださいませんか?」
・・・・・・・・・・・・。
(ええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?)
「か、愛音さんのお願いならば・・・・・・」
(え、ソラさんやっちゃうの!?)
オカ魔王:あら~。若いエナジーが弾けまくっちゃってるわね~。ワタシなんだかドキドキしちゃう
神様:ほっほー! 若いってのはいいのぅ!
(って、コイツらまだいたんかーーい!)
「痛っ!」
今度は愛音の声が。
「ご、ごめんなさい。痛かったでふか?」
「はい、少し・・・・・・。でも、我慢出来るので・・・・・・そのまま続けてください」
「わ、わかりました。でも本当に痛かったら言ってくださいね?」
「・・・・・・はい」
神様:ええのぅ、ええのぅ。順調に愛を育んでおるのぅ。中に入って近くで見て見たいものじゃ
オカ魔王:あらかっちゃん奇遇ね~。でも、ふたりの水を指しちゃ・・・・・・悪いでしょ?
神様:それもそうじゃのぅ・・・・・・別の何かをさしてはいるかもしれんが
オカ魔王:もうヤダかっちゃんたら~
神様&オカ魔王:あはははははははは
(この人達は・・・・・・)(ピキピキ)
私の怒りが爆発しそうになった時、事件が起きた。
「あんっ」
中から甘い声が・・・・・・。男の人がこんな可愛らしい声を出せるわけがない。恐らく愛音が出した声であろう、そして私は・・・・・・その時愛音の甘い声を初めて聞いた。
「か、かかかか」
「愛音ってこんなに可愛い声・・・・・・いや、元々可愛かったけど・・・・・・こんな可愛い・・・・・・って」
私は隣から異様な空気を感じ、横を見る。
そこには、右手に拳を作り、その右手を天に向け高く突き上げている神様と魔王の姿があった。
神様:ありがとう・・・・・・これで、わしは・・・・・・逝ける・・・・・・
オカ魔王:ワタシの生涯に・・・・・・ただ一つの悔いなんてないわ・・・・・・
そう言い残すと、私が瞬きをして再び目を開けた時には彼らの姿は消えていた。
・・・・・・なんだったんだ、今のは。
しかし、次の瞬間私のそんな疑問も吹き飛ぶような言葉が風呂場の中から聞こえてきた。
「あっ、ソラさん・・・・・・はげしっ」
「ご、ごめん! 早くしすぎたかな?」
「も、もうちょっと、ゆっくり・・・・・・お願いします」
「は、はい・・・・・・。これくらいですかね?」
「あっ・・・・・・。それくらいでっ・・・・・・大丈夫ぅ・・・・・・ですっ」
(中からもっと甘い愛音の声が!?!?)
「どう・・・・・・かな? 気持ちいいですか?」
「は、はひ・・・・・・気持ちいいでしゅ」
(愛音の呂律が回ってない!? )
流石にこれ以上は不味いと思い、扉を開けて、突撃しようとしたその時──。
「誰かそこにいるんですか?」
どうやらソラさんが私の気配に気付いたようだ。
(やばい! 早くどこかに移動しないと!)
そして私はリビングへと場所を変えた。
リビングにあるソファに腰をかけてから数分。私の顔は赤いままだ。
──それにしても。
「まさか愛音とソラさんがあんなに進んでいたなんて・・・・・・お姉ちゃんびっくりだよ・・・・・・」
ソファにもたれ掛かる。
「こんな調子だと本当に新しい家族が増えるのも時間の問題・・・・・・」
「何が時間の問題なんですか?」
「って! ソラさん!? い、いちゅからしょこにぃ!?」
「カミカミですね・・・・・・。今さっきです」
「そ、そうなんだ」
さっきは突然の出来事で、びっくりしてしまったけど、すぐに落ち着きを取り戻した。
「それで、何が時間の問題なんですか?」
「な、なんの事かお姉ちゃんさっぱりわからないなぁ~」
「口笛吹いてるつもりなんでしょうけど、全然吹けてませんよ・・・・・・」
「ええっ!?」
そうだったんだ・・・・・・私的には上手に吹けてる気がしてたのに。
今はそれはいいとして。いや本当は良くないけど。
「ただいま戻りました。おふたりともそこで何をやっているんですか?」
そこに愛音さんが戻ってきた。
「え、えーっと。あ! 愛音、ちゃんとソラさんにしてあげた?」
この人・・・・・・逃げるの下手だな。
僕は冷たい視線を送る。
「はい。ちゃんとソラさんにご奉仕して気持ちよくなってもらいました」
「うんうん、そっかそっか~♪ ご奉仕して気持ちよくなってもらったか~♪」
この人・・・・・・ヤケに楽しそうだな。
「私も気持ちよくしてもらいました・・・・・・」
ん? ちょっと待った。その発言は色々と誤解を生まないか?
「その、ソラさんのは大きい上に、私より上手くて・・・・・・すぐに気持ちよくなっちゃいました。えへへ」
「あらまぁ!!!」
「背中を流しただけですよ!?」
「背中を流しただけであんな『あっ///』みたいな甘い声は出ないとお姉ちゃんは思います」
この人・・・・・・やっぱり外で聞いてたのか。
「ソラさんって凄いんですよ。私が気持ちいいと思う所を的確に突いてくるんです」
「ソラさん・・・・・・愛音のお味はどうでした?」
「だから違いますってば!」
──この後、数時間にも渡り愛優さんの誤解を解く事になった。
・・・・・・
・・・・
・・
──その夜。
僕は初めて女の子の部屋に入るのだが、いい匂いがしたりするので、最初は中々寝付けずにいた。
少し部屋を見る。 きちんと整理されていて、いかにも愛音さんの部屋という感じがした。
すると僕は机の上にある物を見つける。
「ノート? でもこれ、勉強用って感じは全然しない・・・・・・」
少しページをめくってみる。
そこには──。
「・・・・・・・・・・・・」
このお店の売り上げらしきものが記載されていた。 
正直に言うとこのお店の売り上げは、そういったのが素人の僕ですら分かるくらい悪かった。
お客さんがゼロではないものの、それでもゼロに近い数だった。
「・・・・・・ん? これは」
ページをめくっていくと、ページの左下に売り上げなどとは別の数が書かれていることに気付く。
「ノートの残りページ数? いや、まだ半分以上ある。しかし、ここに書かれている数字は・・・・・・」
トントントン。その時、ノックの音がした。
僕は急いでノートを閉じる。
「は、はーい」
僕が扉を開けると、そこには愛音さんが立っていた。
「ごめんね、起こしちゃったかな?」
「い、いえ。むしろ全然寝付けなくて・・・・・・」
「そうですよね・・・・・・いきなりだから慣れないですよね・・・・・・」
「そ、それより何か用事があってここに来たのでは?」
「あっ、忘れてた!」
そう言うと愛音さんはノートが置いてあった机へと向かう。
「やっぱりここにあったんですね。これが見つからなくて、少し不安になりました」
やはり目的はあのノートだった。
「あの、ソラさん」
「なんですか?」
「このノートの中って見ましたか?」
「い、いえ」
僕は嘘を吐いた。恐らくここで見たと言っても、すぐに謝ればなんとかなったかもしれない・・・・・・。
だけど僕は見てしまった、そして気付いてしまった、あの左下に書かれていた数字の意味。
確信は無い、だけどなんとなくそんな感じがした。
「あ、あの愛音さん」
「はい?」
「春休みってあと何日くらいなんですか?」
「い、いきなりなんでそんなことを?」
「大事な事なので・・・・・・お願いします」
僕の予想が正しければ・・・・・・春休みが終わるまで・・・・・・。
「は、はぁ? 春休みが終わるまであと十四日です」
・・・・・・やはり、そうか。左下に書いてあった数字、それは春休みが終わるまでの数字だ。
春休みになったら、まともにお店も営業出来ないからお休みにするのはわかる、けれど恐らくこのカウントダウンは違う。
ノートの最初の方の日付を確認したが、日曜日や祝日など以外は遅めだけれど一応お店は開いていた。
つまり、考えられる理由は一つ。
何らかの原因でお店が開けなくなる。
そして、その原因は間違いなく売り上げだ。僕でさえわかる売り上げの悪さだ、このまま続けていくのは無理だと判断したのだろう。
「愛音さん、もう一つだけ質問してもいいですか?」
「は、はい」
「愛音さんはこのお店の事って、その・・・・・・好きですか?」
僕が突然お店の事を聞いたから驚いたのであろう。愛音さんは少し目を丸くしていたが、すぐにいつもの感じに戻り、今度は笑顔で。
「はい。大好きです」
その笑顔を見た時、僕は強く思った。
なんとしてでも、この笑顔を守りたい・・・・・・こんな僕を拾ってくれた恩を返したい。
そのために僕は──。
「愛音さん。僕を・・・・・・僕をスイーツエンジェルで働かせてください!」
こうして、僕の恩返しが始まった。
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