スイーツエンジェルへようこそ♪
ひとつ屋根の下で・・・・・・
「もし良かったら・・・・・・私の家に来ませんか?」
「・・・・・・えっ?」
それは突然の出来事だった。
商店街でたまたま出会った美少女と少しお話をし、別れ、その後再び会ったら、私の家に来ませんか? ・・・・・・これなんてギャルゲ展開?
僕が口を開けたままポカンとしていると。
「め、迷惑ですよね・・・・・・今日知り合ったばかりなのに、家に来ませんか? なんて・・・・・・」
「い、いや! 僕的には助かるけど、そっちは大丈夫なの? ご両親とかに相談した方が・・・・・・」
「両親共に、暫くは家に帰って来ないので、大丈夫かと」
いやいやいや! 大丈夫じゃないでしょ!? 年頃(?)の男女がひとつ屋根の下で暮らすなんて!
「あの、つかぬ事をお聞きしますが、愛音さんはおいくつで・・・・・・」
「? 私・・・・・・ですか? 今は十二歳で、今年中学生になります」
アウトおおおおおおおおおおおおおお!!!!! 中一女子とひとつ屋根の下!? かんっぜんにアウトだよ!?
「・・・・・・何か、私が十二歳だと問題でも?」
彼女はきょとんとした顔で見つめてくる。
(あぁ・・・・・・眩しい、この無垢な瞳が・・・・・・。と言うかこの子は天然なの?)
「あのね、流石の僕でも愛音さんみたいな子と二人で住むのには少し抵抗が・・・・・・」
「ああ、そういう事ですか。大丈夫です、家には他にも女の子がいます」
「それは良かっ・・・・・・って!? 女の子!?」
「はい。私と同じ今年中学生になる方と、私の一個上でお姉さんみたいな方が」
(どっちにしてもアウトだよっ!!)
僕は心の中で全力のツッコミを入れる、
「あ、あの~。愛音さん・・・・・・」
「なんでしょうか?」
「やっぱり他にも住人が居るとはいえ、年頃の男女がひとつ屋根の下と言うのは・・・・・・」
もし何かあったら大変だ。いや、僕は絶対に手を出したりしないからね!?
・・・・・・本当だよ?
「何が言いたいのかイマイチわかりかねますが・・・・・・多分大丈夫だと思いますよ? 多分みなさん男の方が一緒に住む事になっても気にしないと思いますし」
「僕が気にしちゃうんだよ!」
「はぁ・・・・・・?」
この子大丈夫!? ここまで無知だと逆に心配になってくるよ?
「とにかく、ソラさんはウチに来てください」
「で、ですが・・・・・・」
「はぁ~。では、ここの公園で寝泊まりでもするつもりなんですか」
「うっ・・・・・・」
確かに今は昼は暖かいが、夜は寒い。こんな所で寝泊まりなんてしたら風邪を引いてしまうだろう。
「ですので、とりあえずウチに来てください。いいですね?」
「・・・・・・わかりました」
僕が折れると、彼女はにっこりと笑った。
その笑顔に僕は不覚にもドキッとしてしまった。
──僕はロリコンじゃないからね?
彼女に連れられて、ある店の前へ。
「着きました。ここが私の・・・・・・私達のお店です」
彼女はくるりとターンし、こちらを向く。
僕は店にかかっている看板を見た。
「スイーツ・・・・・・エンジェル。ここが愛音さんのお店?」
「はい、正確には私達のお店ですが」
「そうでしたね、ごめんなさい」
看板にはケーキのイラストが付いてるところを見ると、ここはケーキ屋かのだろう。
「ここが家の入口です」
気が付くと彼女はスイーツエンジェルの横の道の方に行っていた。
「ここが入口ですか・・・・・・お店の中から入れたりとかしないんですか?」
「入れますが、今は閉店してるので流石にそこから入るのは・・・・・・」
それもそうか。閉店したはずのお店に、店員でもない僕が入るのは見られたら色々問題がありそうだな。
「余計な事言ってすみません」
「い、いえ。それとお店が開いてる時ならお店の方から入ってもいいよ・・・・・・と言うより、お店の方から入ってもらいたいです」
「わかりました」
そして彼女はドアを開ける。
「あ、すみませんがソラさんはここで少し待っていてください。大丈夫だとは思いますが、一応みなさんに軽く説明してくるので」
そう言って彼女は家の中に入っていった。
(付いてきちゃったけど・・・・・・よくよく考えなくても女子中学生三人と同居は流石に不味いよなぁ・・・・・・)
しかし仮に断ったとしても、ホテルを借りるお金も無ければ、他に頼る人がいないのも事実だ。
(公園での寝泊まりは流石になぁ・・・・・・)
こうなったら僕が変な行動に出ないようにするしかないのか・・・・・・。いやもちろん、僕はロリコンではないからそんな事は無いよ? 
・・・・・・信じてないですか?
愛音さんが家に入って、十分前経った頃、家のドアが開く。
「あ、あの・・・・・・お待たせしてすみません。それで、みなさんに一通りの説明とかしたので、どうぞあがってください」
「お、お邪魔します」
「ふふ、ソラさんたら・・・・・・。一応今日から貴方のお家でもあるんですから、 お邪魔します じゃなくて ただいま ですよ」
「は、はい! ただいまです!」
家に入ると、甘いお花の匂いがする。
やはり、女の子しか住んでいない家となるとこんなにもいい匂いがするのか。
そう考えるとなんか緊張してくる。
入り口から少し入った所で愛音さんは立ち止まる。
「ソラさん、こちらのリビングでみなさんがお待ちです」
「はい!」
僕の心臓はドクンドクン脈を高く打っていた。
ガチャ──。扉を開けたそこには。
これまた二人の美少女(美幼女)が!
「カノちゃんおかえり~。へぇ~このお兄さんがソラくん? カッコイイね~♪」
「愛音おかえりなさい。そちらがソラさん・・・・・・で合ってるかな?」
二人の美少女(美幼女)は僕の姿を確認するとこちらに寄ってきた。
「愛優さん、凛菜さんただいま帰りました。もうわかっていると思いますが、こちらが先程お話した、ソラさんこと潮乃 夜空さんです」
愛音さんに紹介され僕は軽く自己紹介をする。
「は、はい! みなさん初めまして、潮乃 夜空です。呼び方はソラでもなんでも大丈夫です! 今日からお世話になります」(ぺこり)
僕は腰を90度に曲げる。
「あはは、ソラくんって面白いね♪ 僕達はもう家族なんだからそんなに固くならなくたっていいんだよ♪」
そう言ってくれたのは、愛音さんと余り身長は変わらない (とは言ってもみんな同じような身長) が、愛音さんとは違い、髪の長さは肩までで色は茶髪の元気な子。
「凛菜さん、家族うんぬんの前にまずは自己紹介してください」
愛音さんは少し呆れ顔になる。
「ああそうだった。初めまして僕は折山 凛菜(おりやま りな)。この、スイーツエンジェルの接客担当だよ♪ 歳はカノちゃんと同じで今年から富山中学の一年生♪ 呼び方はりーちゃんでもりなたんでもお好きな呼び方で!」
「は、はい。では、凛菜さんよろしくお願いします」
「ソラくんもカノちゃんと同じタイプか~・・・・・・まぁいいけどね♪」
そして凛菜さんと軽く握手を交わす。
次は・・・・・・。
「次は私かな」
そう言って少し手を上げる彼女。
身長は二人と余り差はないが、二人に比べると少し高い。黒髪で髪の長さは腰まである。後ろにリボンを付けているのか時折リボンが見え隠れする。
「ソラさん初めまして。私は白崎 愛優(しらさき みゆ)。スイーツエンジェルではパティシエやってます。歳は愛音達の一個上で今年から中学二年生です。ソラさん改めてよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
僕は愛優さんとも握手を交わす。
と言うか彼女歳上だったのか、なんと言うか愛音さんよりは出るとことか出てるけど、凛菜さんよりは・・・・・・って感じだから同い歳くらいかと思ってた。愛優さんごめんなさい。
僕は心の中で愛優さんに謝る。
「では、最後は私ですね」
最後は愛音さん。
身長は僕の胸の高さくらいで、髪は銀髪、長さは愛優さんと同じで腰くらいまである。髪を横で三つ編みに結んであるのが特徴的だ。
「改めまして。私の名前は櫻宮 愛音(さくらみや かのん)です。スイーツエンジェルの接客担当兼オーナーです。歳は凛菜さんと同じで今年から富山中学の一年生になります。ソラさんこれからよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
先程と同じく軽く握手をするのだが、何故か愛音さんの時だけかなり緊張した。
その後、リビングを出た僕と愛音さんは違う部屋に向かう。
「まだソラさんの部屋の準備が出来ていないので、少しの間ソラさんの部屋はここでお願いします」
そう言って部屋を開けると、そこには可愛らしい空間が広がっていた。
物は散らかっておらず、隅々まで掃除が行き届いている感じだった。
「えっと、ここは・・・・・・もしかして」
「はい、私の部屋です」
やっぱり!? と言うか簡単に自分の部屋に男の人を入れちゃダメでしょ!
「え、えーっと・・・・・・」
「あ、恐らくベッドは私サイズなので、足がはみ出してしまうと思うので別室からお布団持ってくるので安心してください」
違う! いや確かにベッドの事も少しは気になっていたけど、違うんだよ!
「あと着替えとかはサイズが合うかわかりませんが、後で父のを持ってきます」
「勝手に使わせて貰って大丈夫なんですか?」
「暫く帰ってこないので大丈夫かと? それと、色々漁ってもいいですが、机の引き出しとタンスの上から二段目だけは絶対に、開かないでくださいね」
「わかりました」
タンスの二段目指定と言うが少し気にはなるが・・・・・・。開けるなと言われたのなら開けてはいけないのだろう。
だからと言って他のところを漁ったりもしないよ??
──本当だぞ?
「あ、やっと戻ってきた! 二人共もう晩御飯の準備できるよ~」
僕達が愛音さんの部屋から帰ってくると、既に晩御飯の準備が出来ていた。
メニューは自家製だろうか、美味しそうなソースがかかったハンバーグにポテトサラダ、スパゲティなどもある。
「あ、ソラさん」
「愛優さんなんでしょうか」
「まだ食器とか箸の準備が出来ていないから、今日だけは適当な食器と割り箸になっちゃうんだけど大丈夫・・・・・・かな?」
愛優さんは申し訳無さそうな顔になる。
(ふむ、余り愛優さんに気を使わせたらいけないな)
「全然気にしなくて大丈夫ですよ。そもそもお世話になる身なので」
「こら! そんな言い方はあまり関心しないぞ」
軽く怒られた。僕何か気に触ったこと言ったかな・・・・・・。
「貴方も今は家族なんだから・・・・・・ね?」
ああ、なるほど。愛優さんは・・・・・・いや、ここのみんなは本当に優しいんだな。
「す、すみません」
「うんうん、わかればよろしい♪ それで、貴方の食器とかは明日買いに行くから今日だけごめんね」
僕達がキッチンで話していると、リビングから声が。
「二人共~早くしないとご飯が冷めちゃうよ~!」
「はいはい、今行くからちょっと待ってね」
凛菜さんに呼ばれ、僕達はリビングへと移る。
「みんな揃ったね? それじゃ、いただきまーす!」
「「「いただきます!」」」
凛菜さんの合図で僕達はご飯を食べる。
僕はまず、ハンバーグから食べる事にした。
「・・・・・・美味しい」
噛む度に肉汁がハンバーグから溢れる。それに加えこのデミグラスソースはハンバーグの味を更に引き立てている。お店の味・・・・・・いや、それ以上かもしれない。
「ソラさん・・・・・・それ、私が作ったんだけど、どうかな?」
「え!? これ愛音さんの手作りなんですか?」
僕は思わず愛音さんの方を見る。
「愛音は昔から料理が好きで、ことある事に料理の研究してたりしてたもんね~」
「カノちゃんの料理はプロも顔負けの絶品だよ♪ おかげでついつい食べすぎちゃうんだけどね・・・・・・」
二人からも褒められ、愛音さんは少し顔を赤らめる。
「そ、そんなプロだなんて・・・・・・みんな褒め過ぎですよ・・・・・・」
「あ、カノちゃん照れてる! 可愛い~」
確かに照れてる愛音さんはとても可愛いかった。
ん? そこで僕は一つの疑問が浮かんだ。
「あの、一つ疑問があるんですが」
「ん? ソラくんどうしたの?」
「愛音さんは料理がお上手なんですよね?」
「愛音にかかれば、食材さえあれば大体料理でも出来ちゃうね」
「でも、さっきスイーツエンジェルのパティシエは愛優さんって・・・・・・」
「・・・・・・そ、それは。私実は・・・・・・い、いえ! ただ単にケーキ作りが苦手なだけです」
「そうなんですか、意外です」
「あはは・・・・・・」
意外だった。ケーキ屋さんの娘ならケーキ作りも上手いとばかり・・・・・・。
「ま、そんな事は気にせず早くご飯食べちゃいましょうね」
愛優さんがそう言うと止まっていた、箸が再び動き出した。
みんなに見つめられている。
うぅ・・・・・・食べにくい。そう思いながらも最後の一口を口へと運ぶ。
「ご、ご馳走様でした・・・・・・」
とりあえず晩御飯はこれで全て片付いた・・・・・・片付いたのだが、僕はギブアップ寸前だった。
あの後、ペースよく箸が進んだのはよかったが、周りはやはり女の子。みんなそこまで食べられずに、僕の方へと回ってくる。
僕もそこで断れば良かったのだが、みなさん澄んだ瞳でお願いしてくるんだもん! 男ならあれを断るなんて出来ない・・・・・・。
と、まぁそんな事があり今に至る。
「すごーい! ソラくん本当に食べきっちゃった!」
そういいながら、少し膨らんだお腹を叩いてくる凛菜さん。やめて! 何かが出てきちゃいそうだから!
「こーら。凛菜そんな事したらソラさんに迷惑でしょ」
愛優さんが止めに入る。
(た、助かった・・・・・・)
「だけど本当に立派なお腹だね~。耳を当てたら何か聞こえそう」
いたずらっぽく微笑む愛優さん。
「何も聞こえないですからね? って言ってる側から愛優さんお腹に耳を当てないでくださいよ」
「ふふ、ごめんごめん。余りにも貴方のお腹が立派だったからつい♪」
そんな舌を出して、てへ♪ ってやったって僕は騙され・・・・・・まぁ、可愛いから許すんだけど。
「お二人ともソラさんのお腹に耳なんか当ててどうされたんですか?」
そこに愛音さんがやって来た。
「いやね~。余りにもソラさんのお腹がポッコリしてたから耳を当てたら何か聞こえるかも~って」
「・・・・・・本当に何やってるんですか」
「とにかく、お風呂の準備が出来たので早く入ってください」
こう見ると、やっぱり愛音さんが一番しっかりしてるように見えるな・・・・・・。
愛優さんは三人の中ではしっかりもののお姉さんで、本当にお姉さんっぽい所もあるが少し悪戯好きというか・・・・・・。
凛菜さんは三人の中で一番元気で、恐らく身体能力でも一番上なんだろうな。
愛音さんは愛優さんとはどこか違うしっかりもの。だけど、時折見せる年相応の表情とかは一番可愛い・・・・・・って何考えてるんだ僕!?
僕はロリコンじゃない、僕はロリコンじゃない、僕はロリコンじゃない、僕はロリコンじゃない──。
「僕はロリコンじゃない!」
「!? ソ、ソラさん? いきなり立ち上がってどうしました?」
どうやら言葉に出してしまったらしい。僕は慌てて座わる。
周りを確認すると、いつの間にかリビングには僕と愛音さんの二人だけになっていた。
「・・・・・・・・・・・・」
(き、きまずい・・・・・・)
今思えば、僕は今までこうして女の子と二人きりなんてこと無かったから何を話せば良いのか・・・・・・。
とりあえず何か話そう。そうだ、ここの事とか聞けばいいじゃないか。
「「あ、あの」」
綺麗にハモる。
「い、いえ。ソラさんからどうぞ」
「い、いや。愛音さんこそ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
余計気まずくなった気がする。
「あ、あの。私お茶いれてきますね」
「あ、ありがとうございます」
そう言って愛音さんはキッチンへと向かう。
(何やってるんだ・・・・・・僕は)
僕は少し頭を抱える。
「お茶、入れてきました。・・・・・・? どうかされました?」
少しすると愛音さんが戻ってくる。
「あ、いえ。大丈夫です。お茶ありがとうございます」
僕はそう言って愛音さんからお茶を受け取ろうとしたその時。
「あっ・・・・・・」
愛音さんの手が触れる。
「い、いえ!」
「? 愛音さん顔が赤いですけど、大丈夫ですか? 具合が悪いなら・・・・・・」
「だ、大丈夫です! 熱もないですし、風邪ではないと思いま・・・・・・きゃっ!」
その時、愛音さんが倒れそうになった。
「愛音さん!」
僕は今から止めても間に合わないと悟り、せめて愛音さんに怪我などをさせないようにと彼女を庇うように下に潜り込む。
ドスン──。
「いたたたた・・・・・・」
なんとか間一髪セーフかな・・・・・・。
愛音さんが大丈夫かと彼女の方を見る──。うん、大丈夫だ。ちゃんと僕の上にいる。
僕は一安心して、ほっと息をつく。
「いたた・・・・・・ってソラさん!?」
「愛音さん怪我はないですか?」
「え、は、はい。お蔭さまで・・・・・・」
「それはよかったです」
それを聞いて更に安心する・・・・・・が、今の状態では安心出来ないことが一つだけあった。
僕が愛音さんを庇って下に入ったのはいいが、どうしてこうなったのやら、愛音さんは馬乗りになっていた。
(これは流石に見られたら不味いよな・・・・・・とりあえず早く愛音さんにどいてもらうしか)
「あ、あの愛音さん?」
「は、はい。なんでしょうか?」
「あのですね。そろそろ上から・・・・・・」
僕はそこまで言いかけて、視線に気づく。
その視線はドアの方から感じる。
僕は恐る恐るドアの方へと視線を移動させる。
「・・・・・・・・・・・・」(ニッコリ)
そこには、満面の笑みを浮かべた愛優さんが立っていた。
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