少年と情報収集１

 何故か突然昔のことをぼんやり思い出した。無理もなかった。今回の一件で自分の過去に触れるからだ。

今日はジョンドゥと、いつもの喫茶店で待ち合わせしていた。
仕事の話ではなく、ロバートに関することと、師匠に関する情報を集めるためだ。

今思えば、師匠の意志を受け継いだのは、俺なんかじゃなくてジョンドゥとメアリーさん(師匠の奥さん)だ。
元々、ジョンドゥは師匠と旧友の仲で、メアリーさんは言うまでもなく、師匠を若い頃から支え続けてきた。

「いよぅ、秀太」やはり、いつもの如くジョンドゥがテーブルに座っていた。今日はテラスのようだ。
「あいにく店の中は満員だったんでな」

無理もなかった。今日は土曜日で、子連れの母親だっている。
「かまないさ。それより、始めるか」

「あぁ、そうだな。今日はコーヒーにでもするか？」

「そうだな、今日は…カフェラテだな」

「ほぉ、いつもはコーヒーなのに？」

「なんというか、まぁ…いつもよりミルクを多めにしたい気分なんだ」

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少年はジョンドゥに師匠の話を聞いた。師匠の伝説だの、射撃の正確性も速度も半端じゃなかっただの、よく靴下を裏にはいたままで奥さんに注意されていた程にズボラな人だったの、昔話も含めて色々と教えてもらった。
しかし、どれも何処かで聞いたことのある話ばかりで目新しい話はなかった。

そして何よりも、話を聞いても
「師匠がロバートなんぞのような、ただ小癪で愚かな相手に負けるはずがない」
ということだった。

「俺もそう思っていたところだったんだ」
ジョンドゥも大きくうなずいた。
「とはいえ、ロバートについても調べない訳にはいかないな」

「ロバートについて調べれば、師匠に関する話に行き着くかもしれないしな」
少年は厳しい顔つきになっていた。
「それじゃあ、俺がロバートの件を担当しよう」

「気を着けろよ？いくら落ちぶれたとはいえ、裏の住人であることには間違いないからな」

「あぁ、もちろんだとも」

こうして、二人はそれぞれの方向に向かった。