クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

18.冬の嵐

前回は二話分くらいの内容を一話に詰め込んで申し訳ありませんでした。最後まで読んで下さってありがとうございます



 「お前の勝ちだ……朔也」

 倒れてしまった光。
 朔也は構えたまま、動けないでいる。
 一瞬の静寂の後で、朔也がゆっくりと口を開いた。

「……俺、ファイターになれるかな……?」
「なれるさ、お前……なら」 
「二回戦第一試合、勝者関口朔也!」

 スタジアムから大歓声が沸き起こった。

「よくやった、朔也!」
「二人ともかっこよかったよ!」
「よっしゃぁ!朔也!」
「待ってろよ……朔也」

 朔也は立ち尽くし動けないでいた。

「どうした?こんな歓声は初めてか?」
「あぁ、なんか感動して動けねぇ……」

 その後、二人は傷の手当てをするために保健室へ。



 そして、長門と瞳が相対した。

「二回戦第二試合開始!」

 突然、冷気が沈む。

ーー!!
「トバすぜ、瞳」

 巨大な氷を生み出す長門。
 瞳に勢いよく迫る。
 風圧を利用してかわす瞳。
 両手を構え突風を長門へ放つ。
 しかし、長門は氷の壁を作り遮る。
 長門は所々に氷の柱を作り始めた。

「どうするつもりなの?」
「まあ、見てろって」

 瞳へ向かって駆けていく。
 放たれた突風。
 長門は氷の壁を作り遮る。

「結局、さっきと一緒じゃーー」

 柱と柱を繋ぐように氷の壁が生成される。
 氷の仕切りによって小さな部屋に分けられた。

ーー位置がわからない!でもそれはあっちも同じ!

 氷を砕く音がした。
 左に白く光る腕を構えた長門がいる。

「なっ!」

 長門の拳が瞳に命中した。
 瞳は氷の仕切りへと打ち付けられる。
 長門の氷結が瞳へと迫った。
 瞳は突風を放ち上昇する。
 違う部屋へ着地した。

ーーやるしか……ない!

 左脚を大きく踏み込む。
 つむじ風が巻き起こる。
 氷の壁、柱をなぎはらい辺りをまっさらにしていく。

ーーおっ、来たなつむじ風

 つむじ風の流れを利用して発射された瞳。
 瞳に向かって氷を繰り出す。

ーーまずい、飲み込まれる!

 瞳は風圧で上昇した。
 そして再度、長門へと突っ込むつもりだったがそこに長門はいなかった。

ーーなっ!
「期待、したんだけどなぁ」 

 背中を刃物でなぞられたような戦慄が走った。
 次の瞬間、瞳は背後から巨大な氷に飲み込まれてしまった。

「二回戦第二試合勝者柊なーー」
「待った、先生」

 佐藤を止める長門。

「どういうことだ、長門」
「まだ、勝負は終わってないんだよっ」
ーーそうまだ、勝負は……終わっていない!

 スタジアム中の空気が一点に集まろうとしている。

ーーそうだよ……それがお前の本気だろ……! 

 氷の塊の中から瞳の右手だけが姿を見せている。

ーー私はまだ……戦える!

 押し込めた大気を放つ瞳。
 自分を飲み込んでいた氷を一瞬で砕いた。
 そしてその暴風を長門へと放とうとしたが。 

ーーくっ! 

 魔力の操作を誤ったのか自分をも巻き込んだ乱気流を起こしてしまった。
 嵐が吹き荒れる。

 乱気流がおさまる。
 長門は自らを氷の中へいれ、耐えていた。
 瞳は乱気流に巻き込まれ相当のダメージを負っている。
「終わりだ、ひとーー」
 胸を貫く戦慄。
ーー何だ!この感じは?

 瞳がゆっくりと立ち上がった。
 彼女の回りには空気が渦巻いていた。

気流過給カレントターボ……!」
「まだ奥の手を隠してやがったか!」
「ううん、さっきたまたま出来ただけ。今回限りの特別セールよ!」
「運がいいなぁ、あぁ!」

 巨大な氷を繰り出す。
 渦巻く気流をバネにして避ける瞳。
 光のような素早い動きで長門へと迫る。
 氷の壁で行く手を遮った。
 しかし、氷の壁は突風によって砕かれる。

ーーこいつ、風の力も上がってやがる!

 長門の背後へと回った。 

ーーこれで……決める!

 瞳の掌で渦巻く気流。

ーーちっ!

 放たれた乱気流が直撃。
 長門はスタジアムの壁に叩きつけられた。

ーーまだ!

 猛スピードで長門へ迫る瞳。
 長門へ連続で打撃を与える。
 そしてその中の拳の一つを長門が掴んだ。

ーー見切られた!?
「瞳……それがお前の天井だ」

 纏っていた気流が剥がれ落ちる。

ーー!! 
「これで終わりだ」

 掴んでいた手から瞳は体を氷付けにされてしまった。

ーーそんな……
「二回戦第二試合勝者、柊長門!」

 白い息をはく長門。

ーーさて……朔也、お前を倒そう
 


 決勝戦の前には少し休み時間がある。
 智久と斗志希が話していた。

「朔也くんはよくやったって感じだね」
「そりゃ、俺が戦い方ってやつを教えてやったからな」
「長門くんは……」
「ありゃ、化け物だろ。意外にタフだし。功清よりも氷の扱い豪快だしな」
「彼はどっちかというと氷はサポート役でしょ?」
「だとしてもなぁ」
「……そして彼はまだ何か隠してるね」
「そりゃそうだろ」
「だね」



 長門、朔也両者が出揃った。

「約束通り来たぜ、長門」
「あぁ、俺はお前のことを一瞬だって見くびってねぇ。来ることなんざ、わかってらぁ」
「何処に根拠があるんだよ、それ」
「お前の身駆からだを見たら分かるんだよ」
「……そうか」

 佐藤がマイクを持った。

「決勝戦、開始!」

 運命の天秤が動き始める。

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