クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

10.油を注ぐ

 長門たちと遭遇した朔也は驚きを隠せないでいた。

「ええ!何でお前がいるの!」
「わざと捕まったんだよ」
「面白半分でやっていいことじゃないだろ」

 長門の軽率な発言に光が咎める。

「あぁ?優等生は黙ってろってんだ」
「そーだ!そーだ!」
「朔也コロス」
「ちょっと、駄弁ってる場合じゃないわよ!」

 瞳がそう叫ぶ。

「氷のガキ!随分と俺たちを舐めてくれたみたいだな」

 リーダーと呼ばれていた男が現れそういった。

「おぉ、誰かと思えばリーダーか」
「あいつが……」

 光はすぐさま構えをとる。朔也たちも続いて構えをとった。

「リーダー、お前のしたっぱはこいつらが大概片付けた。残ってんのはリーダーとそこのゴーレム生産ロボだけだぜ」
「……だそうだ、ゴーレム生産ロボ」
「リーダー、俺にもちゃんと名前あるんで」

 ゴーレム生産ロボは凍りついたゴーレムを消し次のゴーレムを作ろうとしている。

「光、朔也。お前ら次のゴーレム殺っとけ。俺はリーダーをぶっ飛ばす。残りのモブはゴーレム生産ロボを仕留めろ」
「指図するな、な――」

 光が言い終わらないうちに長門はリーダーの方へ駆けていった。
 舌打ちをしようとした光の前に巨大な黒いゴーレムが現れる。

「朔也、手を貸せ」
「なんで上からなんだよ、全く……」

 朔也は右腕に血管に沿った白い模様を浮かび上がらせる。
 ゴーレムの拳が迫ってきた。

「ブースティング!」

 衝突する互いの拳。
 ゴーレムの拳が砕け散った。
 光は水圧を利用して上に昇っている。
 朔也はブースティングを維持し脚を狙う。

――これで!

 脚が砕けたゴーレムはバランスを崩した。

――朔也のくせにましな仕事してるな……

 光はゴーレムの首に手を当てた。

――頭がなけりゃ動かねぇだろ!

 手から勢いよく水を噴射した。
 ゴーレムの頭が飛んでいく。

「「よし!」」

 と喜ぶのもつかの間、ゴーレムは動き出した。

「え、頭ないのに!?」
「ちっ!」

 落下していた光は砕けてない方の手で弾かれる。
 そのまま壁に打ち付けられた。
「かはっ!」
 光を払ったあとも腕を振り回しているゴーレム。

――これじゃ迂闊に近づけねぇな……
「朔也……」

 光のか細い声がした。

「光!?大丈夫か?」

 光は今にも倒れそうだ。

「お前の火力はどれくらいだ……」
「えっ、正直わからん」
「そうか。俺が今から水の球をつくるから、飛ばしたら最大火力で熱しろ」
「あぁ……」
「作ってる間の牽制は頼んだ……」

 光は両手で水の球を作り始める。

――牽制って言ってもなぁ

 ゴーレムの拳が光に迫る。

――やべぇ!

 ブースティングした拳でゴーレムの拳を砕いた。

「出来たぞ!」

 そこには光一人を包み込めそうな水の球があった。

「さっさと準備しろ」 

 朔也は右腕に炎を回す。

「オッケー!」

 光はその声を聞くや否や水の球をゴーレムに投げた。

「最大火力!」

 水の球が炎で熱される。

「限界以上にやれ!」
「うおぉぉ!」

 ゴーレムに当たる直前。一瞬だった。
 大気を圧する爆風。
 回りの岩が砕かれ塵となる。
 朔也たちも爆風に巻き込まれた。



「ぶはぁっ!」

 朔也は地面から顔を出した。

「死ぬかと思った!」
「死んでないからいいだろ」

 横にぼろぼろになった光が倒れていた。

「光、体大丈夫か。壁に打ち付けられてたけど」
「そんなやわな鍛え方はしてない」
「なら、いいや」
 


 リーダーは壁に打ち付けられていた。

「なんだ!今の爆発は!?」

 ふと、首筋に悪寒が走る。
 長門が手を添えていた。

「チェックメイトだな、リーダー」
「貴様らぁぁぁぁぁ!!!」
「おぅ、おぅ、恐い恐い」

 刹那、リーダーの身体は凍りついた。



 ゴーレム生産ロボも瞳にチェックメイトされていた。

「参りましたね。こんな少女に負けるなんて」
「爆発に気をとられ過ぎたわね……」

 瞳の風圧でゴーレム生産ロボは勢いよく地面に叩きつけられた。



 その後、朔也たちの担任の佐藤が駆けつけ盗賊団は無事捕まった。そして朔也たちは校長に起こられる運命となった。特に光と朔也が起こした水蒸気爆発に関してはかなり厳重な注意がなされた。皆も地下や屋内での大規模な爆発は極力控えるようにしていただきたい。



 早朝。いつもの砂浜。
 朔也は深呼吸をしていた。

――時は……満ちた……

 今日はついに最終試戦の初日である。

「朔也くん」

 智久が声をかけた。

「あ、おはようございます。智久さん」
「調子はどうかな?」
「まぁ、緊張はしますが……」
「そっか……」

 智久は構えをとった。

「さぁ、修行の成果を見せて貰おうかな?」

 朔也はニヤリと笑う。

「驚きますよ?」
「それは楽しみだ」

 ‐歩む者‐

「おぉ、この間ぼろぼろになってた優等生じゃねぇか」
「長門、俺をばかにするのも大概にしろ」

 相対する二人。

     ‐悩む者‐

「明日美ちゃん!」

 瞳が明日美に後ろから抱きついた。

「あら、瞳さん。おはようございます」
「おはよっ!今日はお互い頑張ろうね!」
「はい!」

          ‐見据える者‐

 結界を張っている俊。

「やはりこの数が限界か……」
「なぁ、俊!」

 大地が声をかけた。

「大地か。どうした?」
「体温めたいから、ちょっくらやらねぇか?」
「あぁ」

                ‐覚悟を決める者‐

「今日はお越し頂いてありがとうございます」

 朔也たちの担任の佐藤が頭を下げた。

「いいってことよ。どうせ智久も来てんだろ?」
「はい、竜剣騎士団団長“神崎かんざき 斗志希としき”様」

 斗志希は八重歯を見せてニコニコと笑っていた。

   ‐それぞれの思いを抱え決戦が始まる‐

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品