星の降る街

ゆるむら

-023- 2996年11月3日 PM 22:37

ノベルバと言うスマホ用のアプリが小説家になろうから連携して作品を投稿できる様になった!らしいです。

割と二つに投稿するのは骨の折れる作業です、私は今年腕の骨を折りました。

そして今は電車を乗る方向を間違えて見たことないところに来たうえに電車も無くなってしまった為にホテルで一泊です。

私は今年が本厄なのですが、これが今年最後の厄だと思います。

それでは23話お楽しみください。

(連携してもノベルバの方には反映されてませんでした。)








-安全生活圏外-
上空650メートル付近







「待って!」

シズキはヘリから飛び降りたマコトを追う様に走り出すが。

『おっとと!シズキちゃん!危ないから大人しく!』

腕を掴まれて身動きが取れなくなる。

「離してください!マコトが!!」

『よく見てごらん、マコトは大丈夫だよ。』

「…えっ?」

シズキは外もを見て混乱した。


マコトが空を走っていた。


しかもよく見てみると足元には緑色の半透明の床が現れて、それを蹴って空を駆けている様だった。
だが流石に空気抵抗がきついのか手で顔を覆っている、やがて思い出したかの様に一際強く蹴り上がると進行方向に足を突き出して半透明の緑の槍の様な物を形成して、その中心部に長い方の刀を当てる、そして先程よりもどんどんスピードを上げてヘリを追い越してしまった。

「……えっ?………えっ?あれは何?」

シズキはカインに説明を求めて視線を移したが、カインは笑顔でヘッドセットを手渡しながら自分のヘッドセットを指で叩いた。

「……あっ。」

余りにも慌てていていつの間にか落としてしまっていたようで、改めて装着して同じ質問をした。

『ん〜そうだね、あの時の事はマコトが直接離したいって言ってたけど、今更遅いよね?』

カインは呆れた様にシズキに同意を求めてきたが、シズキには何のことか全く理解が出来なかった。

『君は一度昔に会ってるはずだよ。』

『私が……そんなまさか!?』

『これ以上のヒントは無しだよ、まぁ答えを言ってるのと同じ何だけどね!』

心当たりがある、シズキには印象深い思い出だ。
初の長期遠征で、初めて死を覚悟して、初めて神に感謝した。
あれ程の恐怖と安心は未だあの時だけだった。

だがあのマコトが、あの時の…?

『目的地までは15km、振り切るのは無理だ。敵はヘリ3機、あのにいちゃん1人で足りるかぁ?』

パイロットから心配そうな声が聞こえた。

『大丈夫でしょ、いざとなったら俺が盾になるし。』

『だったら今のうちに外に出てろ』

『って事だから、お留守番よろしくね?』

『えっ?』

カインもそう言うと平然と扉を開けて外に出る、だがマコトの様に飛び降りるのではなくヘリの側面に掴まりながら移動していた。

『ちょ、ちょっと!?マコトみたいにカッコよく飛んだりしないの!?』

『ははは!人がそう簡単に空を飛べるはずないだろう?』

カインはそのままコックピット側の方までガシガシと移動していった。

『……。』

『嬢ちゃんもこっち来な!特等席だ!』

呆れ果てていたシズキへヘリのパイロットは声をかけて来た。
呼ばれた通りにコックピットまで行くと無精髭を生やした40過ぎ程の男が操縦をしていた。

『おぉ!マコトのにいちゃんの嫁さんは偉いべっぴんさんだな!』

『おっちゃん!手を出したらマコトのやつにぶった切られるよ!』

『おめぇと一緒にするんじゃねぇよ!黙って掴まってろ!落っこちてもしらねぇからな!』

パイロットの親父の隣にカインは居た、ガラスを挟んだ向こう側に。
シズキは本当に呆れ果てる、どこの世界にそんな所で呑気に会話に加わる奴が居るのかと。

『ほれ、そろそろにちゃんが一機落とすぞぉ!』

その声に反応して前を向くとこちらに並走しようと速度を落としながら近づいて来た敵のヘリが操縦を欠いて墜落して行く。
そのヘリからは足元から光の粒子を放ちながら飛び出して行く。

『……本当に信じられない。』

『あっはははは!!昔を思い出すよ!数が少なければマコトさえ出せば陸でも空でも相手を仕留めてくるんだがら!ははは!』

空を駆けるマコトは敵のヘリの足へ両手の装着からワイヤーを射出して絡ませる。
そのまま遠心力でもう一機のヘリまで飛んで行き乗り込む。
中で暴れ回って居るのかヘリがフラフラと不安定に飛行して居たが、やがてそのヘリはコントロールを失い墜落して行った。

だがそれだけでは終わらずそのヘリにもマコトのワイヤーは絡んで居る、先程のヘリの足に絡ませた物とつながって居たため墜落するヘリのの重さに引きずられる様に高度を下げて行く。

『おぉ!あいかわらず凝ってるねぇ!』

『俺でもパニックになるぜアレは。』

シズキは絶句する。
目の前で起きている意味不明な現象の数々に、そしてそれを最愛の人がやらかしているという不思議な立場。
自分が思っていた対空戦とのギャップが激し過ぎて理解が追いつかなかった。

そうこうしているうちにマコトはいつの間にやら堕ち行くヘリから脱出してシズキたちの乗るヘリまで戻って来た。

「ふぅ…ただいま!」

『おかえり!中々悪くない動きだったじゃないか!』

カインが戻って来たマコトの後ろから出迎える。
マコトは座席に放り投げたヘッドセットを装着し直して席に座った。

『久しぶりにあれだけ動いたから身体中が痛いよ…水は?』

『ほら』

不意打ちの様に投げられた水入りのパックを頭を下げたままのマコトは手で受け取ろうとするもギリギリで撮り損ねた。

『おっと…ん〜ブランクが酷いなぁ。』

『まぁ3年は結構大きいよねぇ。』

『………。』

昔の同僚とのお喋りに夢中になっているマコトにシズキはふてくされた様な、罪人を咎めるかの様な目でマコトを睨んでいた。

『あ、お姫様がご立腹だよ?このヘタレ。』

『あ、…ごめんシズキ。その…本当は全部話すつもりだったんだけど。本当にもう色々な事が上手く行かなくってさ…。』

『………。』

『本当にごめん、騙す様な真似して。でも嫌われたくなかったんだ、俺があの時シズキに刃を向けた相手だって知ったら絶対に嫌われると思って…。』

『ごめん。』

『………。』

『ごめん、ちょっと気持ちの整理をさせて。まだ混乱してるの。』

『………分かった、ごめん。』

カインが眉を八の字に釣り上げて何とも言えない不思議な表情になっていたが、誰もそれに触れない。

シズキはヘリの中の座席の一番奥へ、マコトは一番コックピット側に近い所の座席に座った。

カインはこの重苦しい雰囲気に耐えられずにコックピットへ向かう。

「バランスが狂うからこっちくんじゃねぇよ。」

「そこまで重くないよ、後ろの空気よりは断然軽いさ。」

2人ともヘッドセットのマイクを上にあげて素の声で会話する、先ほどのやり取りは一応機内通信のため全員に聴こえていた、それ故にパイロットもそれ以上は何も言わなかった。

「はぁ…大丈夫だと思ったんだけどなぁ。」

「大丈夫だろ、マコトのにいちゃんの方はわかんねぇが、あの嬢ちゃんは大人だ。悪いようには何ねぇよ。」

「…?マコトはもう27だよ?」

「体の話じゃねぇよ、心の話だ。2人の顔見てみろ。」

カインは振り返り2人の顔を見比べる。
シズキは何かを悩み、考え込むような顔を。
マコトは後悔と不安に押し潰され、今にも泣きそうな顔をしていた。

「はぁ、なるほどね。所謂心の強さってやつ?」

「それもあるが、にーちゃんの方は自分の事しか見えてない。嬢ちゃんに振られるかもって悲しんでるだけ、肝心の嬢ちゃんを騙してこんな所まで引っ張り込んで来たってのに。その後の事を何も考えちゃいねぇ顔だ。」

「なるほど、確かに今のマコトは自分の事しか見えてなさそうだね。」

マコトは俯き、頭を抱えて唇を噛み締めていた。

「それにありゃ下手したら暴れ回るぞ。」

「流石にその時は止めるさ。」

「暴れないのが一番なんだがなぁ、んで嬢ちゃんの方は。自分の感情と責任の折り合いを付けようとしてるって所だな。」

「感情と…責任?」

カインは首をかしげる、横目でパイロットはその仕草を見てため息を吐く。

「嬢ちゃんは、あっちじゃ隊の副隊長やってんだろ?それなりに地位は高い。俺たちからすりゃマコトは同僚で、向こうさんとのパイプ役をやってくれてるって知ってるが。向こうの側からすりゃマコトは要注意領からのスパイだろ。」

「でも2年近く一緒に同じ家で暮してるんだよ?」

「その辺が気持ちの問題だ。マコトにーちゃんはその事を今まで隠し続けて来た、それでも一緒にいた時間で相手の人なりを理解して好きになった、だから簡単に割り切れねぇんだろ。責任者としてはマコトと敵対するのが正解だが、気持ちはそうじゃねぇんだ。」

「そう言うもんなのかな。」

カインもこの親父の言う事には身に覚えがあるし、何となくわかるような気もする。

「オメェも覚えがあるだろ、見習って大人になれ。」

「……なんでおっちゃんが知ってんだよ。」

「伊達に歳食っちゃいねぇよ。もうそろそろ着くぞ。準備してこい。」

「あの中に戻るのかぁ……あ、しかもウチに泊まるんじゃん!」

カインはしまったぁ!と頭を抱えてうろたえていたが、そらを見かねてパイロットは口を挟む。

「それとなく嬢ちゃんの方急かしてこい、それで解決するだろ。」

「ダメだったら?」

「そん時ゃそん時だ。」

「そんなぁ…。」

「いいから行ってこい、本当にもう着いちまうぞ。」

既にコックピットからは街の灯りが見え始めていた。
それに伴いヘリも速度を落として行き、高速飛行モードから通常モードに移行する。

『あ〜…。もうそろそろ着くから、2人とも準備してね?』

カインもそれとなく荷物を纏めるかのように辺りを見回し、特に必要もない物を手にとって奥に持って行くフリをする。

「あの、シズキちゃん。」

「はい?」

思ったより普通に返事が返って来たのでカインは若干たじろぐ、だがこの雰囲気なら好都合だと先ほどの答えをそれとなく催促してみる。

「さっきの答えさ、早めに出してあげてくれない?下手したらマコトも暴れるかもしれないし、どっちにしても今日ウチに泊まるんでしょ?」

ど直球だった。

だがシズキ的にもカインに迷惑をかけてはいけないと今思い出したので好都合だったのだが。

「そうですね…私の中ではもう決まってるんですけど、色々言い訳を探してて。」

「言い訳?」

「でも、いい言い訳をを見つけました!」

シズキはどこかスッキリしたような笑顔でカインにそう言い放つ。
そしてシズキは自分の席を立ち、マコトの隣へどかっと腰を下ろす。

それに驚いたマコトは隣に勢いよく腰掛けたシズキの顔を見やった。

「ねぇマコト。」

「…うん。」

「私ね、あなたの事が好きよ。」

「シズ…」

「でも!今回のは、流石に事が大き過ぎる。そう簡単に許してはあげないし、ヤマト領を守る副隊長としては見逃せない。」

「………。」

「けど、それでも私はマコトが好き。だから、あなたの事を教えて?もっと、もっとあなたの事を知りたい。それからでも遅くないと思うの。」

「……あぁ、いくらでも。」

「それで私はあなたっていう危険分子をそのまま監視し続ければ、私は副隊長としての責任を果たす事になるんじゃないかな?って。」

シズキは笑顔で少し顔を傾ける。
それを見たマコトにも僅かに笑顔が戻ってくる。

「ふふっ、流石にそれは無理がある気がするけどね。」

「なら一生監視すればいいじゃない、マコトはわたしに秘密をバラした時点で、私からは逃れられない。浮気なんてしたら密告よ?」

「ふふっ…はははは!大丈夫だよシズキ、僕は君だけを一生愛すよ。」
「私も。」

2人は強く抱き合い、熱く口づけをする。

カインは口をもごもごとさせながらまたもやコックピットへとやって来た。

「解決してよかったよ。とびっきり苦いコーヒーが飲みたい気分だ。」

「いやぁ〜、見なくてよかったぜ。」

カインはパイロットを恨みがましく睨むが我関せずとそれを無視する。
すぐにヘリポートも見えて来たので、ちらりと後ろを確認してまだ乳繰り合って居ないかを確認して後ろへと戻った。

「ほら!もう着くよ!」

カインは2人に支度を催促して自分も扉の前で待機する。
次第にプロペラの回転数も落ちて行きヘリはゆっくりと着地した。


シズキは外を確認するとそのヘリポートは大きな屋敷の庭のような所に存在して居て、見た限りでは個人の所有物であった。

着陸するなりさっさとヘリを降りたカインに続きマコトもシズキの手を引き降りて行く。

しばらく歩いてヘリのプロペラ音が遠くなって来た頃にカインが話し始める。


「そうだ……部屋の掃除は明日の夕方まで入らない様に言っておくけど、使用人達も寝てるからうるさくしないでね?」



そんな話をしているうちに広かった庭の芝生も終わり、石畳の通路を歩いて玄関の方に歩いて行く。
その途中でカインのそばにやって来たバトラーに指示を出していた。

「ねぇマコト。」
「なに?」
「カインさんって結構お金持ち?」
「まぁ、結構重要な位置に居るからね。ヤマト領で言うとヤマト王直属部隊長とか王の懐刀って奴だしね。」

聞き慣れない言葉が出て来た。
ヤマトの王には直属の特殊な戦闘部隊がいると噂されているが、あくまでそれは噂に過ぎず、何度も戦場に身を投じていたがその様な人物は一度も見た事が無かった。

「あれ、聞いた事ない?王の直下部隊。」
「噂は知ってるけど、本当にあるの?」
「あるよ、個々はまぁ普通に闘えば簡単ではないけど勝てる、でも彼らは連携の練度が異常なんだ、正直もう相手にしたくないね。」

マコトは心底嫌そうな顔をしながらそう言った。
嘘をついているようには見えないし、自分も自領の全てを知っているわけではない。
その可能性もあるだろう、あくまで自分達は自領防衛団体であって軍ではない、ほぼ軍隊のような扱いだが。

「まぁ普段は出てこないからね、戦争とかになったら出てくるかもしれないよ。」
「縁起でもないからやめてよ。」
「ごめんごめん。」
「もぉ〜。」

「お二人さん、イチャつくのは2人だけの時にしてくれませんかね?それとマコトはコレ。」

カインがジト目になりながら振り返って愚痴を漏らす、そしてカインが手を差し出して来てその中には小さなバッジがあった。

「あぁ、懐かしいな。」

「余計な手間は嫌だろ?」

「なあにそれ?」

バッジは銃と剣が交差し、中央には何色にも輝く金剛石が嵌め込まれていて高級感を醸し出していた。

「特別階級用のバッジだよ、知ってる奴には効果が凄いよ?まるでモーゼみたい道が開けるんだ。」
「マコトはその伝記好きだよねぇ。」

「裏路地のゴロツキとかにはそれを見ても売れそうとしか思われないからね。」

シズキ達は長い庭を抜けてやっと屋敷にたどり着き、かなり遅めの夕食を取ってからすぐに就寝してしまった。

カイン的には静かに眠れると安心して夢の中へ旅立って行った。






「ふむ、そろそろここも潮時だな。」

「ええ、アクセスも良くていい所だったんですが…。」

薄暗い部屋にはコシュマールとクロトニがいた。
クロトニはデスクでコーヒーを飲みながら砂糖の塊のような菓子を貪っている。
そしてコシュマールの両手には少し刃の長い、血まみれのダガーが握られており、その周りには人の山が出来ていた。

「あの2人が帰って来たから強気になったんだろう、あいつらが来なければ特に問題無いんだが、これだけ来られると仕事の邪魔だな。」

コシュマールはそう言いながら足で玄関前の遺体を脇に寄せる。
その人々は皆一様に、中心に黄色の宝石が嵌め込まれたバッジを付けていた。

「とりあえず私は研究のできる場所ならどこでもいいんですけどね。」

「それはクライアントの裁量次第だな。今ならヤマト領周辺になるのでは無いか?ちょうど剣がこの国に戻って来たのだ。」

部屋の隅に積まれた遺体の一番上の者に持っていたナイフを両方とも突き刺した。

丁度その時扉の向こうからカラミタが現れる。

「うえっ!汚ねぇな…。」

「おや!お早いお戻りで。」

カラミタは革靴の底で踏んだ手の一部を気持ち悪そうに蹴飛ばす。

「あぁ、この様子なら分かると思うがな、引越しだ。」

「場所は決まっておられるか?」

「あぁ、予想はついてるだろう。」

カラミタは二人に向けてニヤリと嗤った。

「ヤマト領だ。」







御都合主義展開で申し訳ない。

私的にはマコト君はかなり初期に考案した人なのでちょっと深みが足りない様な気もしますが、大目にみてください。
彼も色々あったんです。

余裕があれば年明け前にもう1話あげます。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品