星の降る街

ゆるむら

-019- 2996年11月3日 AM 10:02





-ヤマト領-
治療棟6F 613号室









アンジュは毎日同じ時間に
いつも通りの格好と
いつも通りの花を持って
いつも通り受付で手続きを済ませ
いつも通りの病室へ足を運ぶ。

最近のアンジュはそう言うルーティンでの生活になっていた。
大好きだった筈の研究、開発では全く頭が働かない。
どれだけ唸ってカフェインを摂取して色々な映画をみたりしてみたが、気付いた時にはキコの容態の事を考えていた。

「…はぁ〜…。」

らしくない。

そう思いながらもいくつも部屋が並ぶ長い廊下を歩いて613号の、病室の前までやってくる。

コンコン、と一応扉をノックをする。
おそらく今日もまた寝ているだろうとは思いつつも、もしも起きていた時の事を思い描いてついやってしまう。

「おはようございます、先輩。」

これもいつもの癖だ、もしも相手が起きていた時に、無礼な奴だと思われないよう…。

「………。」

返事はなかったがいつも通り部屋に入り、窓際の花瓶の中を入れ替える。
いつも通り入れ替えたら窓を開けて、病室特有の匂いのする空気を入れ替える。

毎日いつも通り続けている事だ。
何故かと問われれば自分でも分からない。

自分は結構自分勝手な人間だと自覚している、誰かの為にやりたい事でもないのに何故か毎日やらなければいけない気がした。
キコの事を好きなのかと問われれば否ではないと答えるし、愛しているのかと問われれば分からないと答える。
少なくとも仲はいいと思っているし、友人としては面倒な人間だと思っているが嫌ではないし上手くいっていると思う。

これは恋か?

否。……であると思う。

では何なのか?

アンジュは毎日ここに来て同じ事をしてながら同じ自問自答を繰り返して来た、だが一向に答えは見つからず、思考を諦めてキコの寝顔を覗く。

「……先輩、まだ起きないんですか?………報告書溜まってますよ?」

アンジュは何となく話しかけて見るものの、キコのは可愛らしい寝顔で寝息を立てるだけだった。

期待していたわけではないが、何故か心が落ち込む。
はっきりいってこの感情がうっとおしくて仕方がなかったのだが、どうしても振り払えずに仕事をおろそかにしているのであった。

同僚の者からもたまには休めと言われたのだが、休めと言われても何をすれば良いのかわからず、結局面会時間をギリギリまで使ってここに通い詰めているのだ。

「…はぁ……。」

そのまま特にやることもなく、キコのそばに座って外の景色を眺めていた。

今日は快晴で青空が広がり、遠くには秋色の鮮やかな山々、そしてここから見れば低めな3メートル程の街を覆う防壁。
収穫の終わったのであろう広い農地と背の低い家の数々、それが一面に広がっており、病室から見える景色は心を落ち着ける物だった。

ここからは見えない反対側には背の高いビルが沢山建ち並んでいるのにここだけは何処か全く別な場所にいるみたいだった。

「…………そうだ、今度はあいつをパワードスーツに改造してみよう。」

ふと頭に浮かんだアイデアが口から溢れる。
今度は確実にキコを守る為のイメージが湧いてくる。

次々と溢れ出てくる思想をメモに残して行く。

一息つけそうな所で気付いた時には既に昼過ぎだった。
アンジュはそのメモを懐へしまい席を立って遅めの昼食を取りに行く。
病院の中にある食堂で簡単に済ませるが、いつもキコの手作りの料理を食べているせいか味気なく感じる。

「…先輩、やっぱり意外と料理上手いんだな…。」

そんな独り言が溢れてしまう程。
食事が終わりキコの病室に戻って来ると、ちょうどキコが目を覚ました。

「……先輩、聞こえますか?僕ですよ。」

相変わらずタイミングのおかしな人だと思いながらも、何となく体にかかっていた重いモヤのようなものが剥がれていく様に感じた。

「………ぁ。」

「大丈夫です、重度の貧血で倒れただけの様なものです。」

「……ぅ…ぁ…。」

キコの目はしっかりとアンジュの目を見ていた、何か言おうとしているのだろうが、声がまだ上手くでない様だ。

「まだ無理しなくていいですよ、先輩の欲しがってた休暇です。ゆっくり満喫して下さい。」

「……ば……」

キコの口角がほんの少し上がって笑っているのが分かった。

「それでは先輩、俺はやらなきゃいけない事があるのでお先に失礼しますね。」

「ぇ……。」

キコは目を見開いて驚く、この状況で普通帰るか?と。

「また明日も来るので、ゆっくり休んで下さいね。一応重症なんですから。」

「……ん。」

「一応看護婦の方にも目が覚めたと伝えておくんで、それでは。」

それだけ言い残して本当に病室を出て行ってしまった。
キコはまだおぼろげな意識で外を眺め、そのままゆっくりと再び眠りについた。







アンジュは看護婦へキコの状態を伝えると直ぐに自宅へ帰って来る、久しぶりに湧いてきたアイデアを形にするのだ。

メモ書きをコルクボードに貼り付けて行き作業用のチェアへ腰掛ける。
そのアイデアの数々を眺めながらふとシズキから預かっている、キリエリア領の無人機の脳を思い出した。

もう一度情報を探ってみようと専用の機材を準備し直す。
何かまた新たな発見があるかもしれない。そう思って再びスキャニングにかけるが。

「……ん?」

何か小さな物が脳内に埋め込まれていた、前回は戦闘による脳の傷かと思ったのだが、今回は何故かそれが気になる、念の為他の機材で入念に調べてみると。

「……発信機。」

状態が分かった瞬間無人機を起動させた。

「こいつを分解する前で良かった…。」

ちょうど今から無人機を改造しようとしていた所だったのでこのタイミングで気付けたのは幸運だっただろう。

アンジュはシステムを順次起動して行きながらシズキへ連絡を取る。
何コールか目でシズキが応答した。

『はい、どう…』

「すみません、時間がありませんので手短に伝えます。以前お預かりした無人機の子供の脳。今更ですが発信機が埋め込まれているのを見つけました。何処からの通信なのか割り…」

その瞬間、

ガゴォォォン!!!

コンテナ全体に轟音が響く、おそらく玄関の辺りからの音なので逃げ場はほぼ無い。

『ちょっと!?今の音は何!?大丈…』

「すみません用事が出来ました。また掛け直します。」

『ちょっ…』

通話を切ると携帯端末のアプリケーションの一つを起動する。
そして近くのガラクタの山の中に身を隠した。

それと同時に見慣れぬ黒ずくめの男が部屋に入って来る。
黒のロングコートにつばの広い黒のハットを被った2人は拳銃を構えて部屋中央の無人機を警戒していたが動く気配が無さそうなのを感じて銃を下ろした。

アンジュは端末の画面を見るが、先ほどのアプリを開いた画面には同期100% ウォームアップ96%と表示されている、単に動かせなかっただけだ。

「あったか?」

「ありません。」

「持ち逃げした後か…だが発信源はこの近くのはず。」

おそらくあの子供の脳の事だろう、黒尽くめの男達は部屋中を好き勝手荒らしている、そして男の片方がコンピュータにアクセスしようとしているのが見えた。
目の前には自慢の無人機、そして携帯端末にはウォームアップ100%の文字。
アンジュは部屋が散らかる事を残念に思いながら自動戦闘システムで起動させる。

すると無人機はひとりでに動き出す、味方のシグナルを出していない者を攻撃する為に。









「ん?何だ?」

男は何かしらの収穫が無いかコンピュータ内のデータを漁っていたのだが、自分の目の前で何かが動いた様に感じた。
顔を上げると部屋の中央にてガラスの壁で仕切られた所にいた無人機と目が合った気がした。

「………気の所為…か?」

だがそれは気の所為などではなくゆっくりとこちらへ歩いて来る。

「…気の所為なんかじゃ無いぞ!!ビル!人形が動き出した!!」

そう叫んだ男は何の躊躇いもなく人の家で拳銃をぶっ放してくれた、だが当然そんな物は効かない、一瞬でビームペリースを起動して全ての攻撃を無効化する。

「んなっ!?なんだよこいつは!!」

ビルと呼ばれたもう1人の男も遠くのガラクタ山から出て来て同じ様に拳銃をぶっ放す。
だが当然それも全てを防ぎ、無人機は右腕を左腰のパーツに連結して引き抜く。

その瞬間堪え難いほどの高音が辺りに響き、隠れているはずのアンジュですら耳を塞いでしまう。

男達も当然無人機の前で無防備になりその隙を逃すまいとビルと呼ばれた男の方を細切れにする。
その光景を見ていた男は慌てて拳銃をぶっ放して距離を取ろうとするが、無人機は元々装甲は恐ろしく頑丈であり、拳銃などではよくて小さいキズを作れる程度。
アンジュに当たる可能性を少なくする為にわざとペリースで受けただけに過ぎず、今なら角度的に跳弾しようとも当たらない。

念のためにペリースを横に広げて出力を上げる。

「くっ…来るなよ!来るなぁぁ!!!

バチバチと弾ける音を響かせながら青いプラズマを放出して近づく姿が威嚇に見えたのか、男は目に見えて恐怖する。

男の拳銃も既に全ての弾を撃ち切っているらしく、カチカチと虚しい音を繰り返すだけだった。
これを好機とみてアンジュは無人機の操作を攻撃モードから捕獲に切り替える。
無人機はブレードを納刀し腕から分離させて、右腕で胸ぐらを掴み上げた。

「うぐぅッ……この野郎…何のつもりだ!」

「ふぅ…取り敢えずあなた方の目的をお話いただけますか?」

ガラガラと瓦礫の山から抜け出して、まるで緊張感の無い声で男に問う。

「ちっ…やっぱりいやがったのか。」

「ご用件は?」

「分かってんだろ。アレの回収と、技術レベルを確認して良ければ勧誘って所だ。」

男は意外にも素直に白状する。
アンジュは不思議に思い、端末を操作して無人機に男の右の薬指を反対側へへし折る。

「がぁああぁぁぁああぁあ!!!!」

「それで、ご用件は?」

「躊躇いも無しかよチクショォッ!!」

アンジュはふたたび端末を操作して右手の人差し指を…

「分かった!白状するから!俺だってこんな割りにあわねぇ仕事はしたくねぇ!!」

「初めからそうしていればいいんです、それで?」

アンジュは端末に指を掲げたまま話の続きを催促する。

「やめてくれよ、そんなのちらつかされちゃあ碌に話も…分かった!分かったから!」

「別にこのまま拷問にかけてもいいんですが?」

「分かったから…つってもさっき言ったのが事実だ、無人機に使われてた子供の脳の回収、別に出来なきゃ問題は無いって言われてんだが、持ってきゃボーナスが貰えるんだ。
それと技術の高い奴の勧誘もボーナスに入る。
仕事の内容はそれだけで後はここの場所のわかる端末を渡されただけだ。」

そう言って男は指の折れている右手で来ている服の内側へ手を入れてゴソゴソと何かを漁り出す。
アンジュは警戒して端末に指を伸ばすが。

「おいおい、あんま警戒しないでくれよな。…コレだ、コレがその端末だ。」

男はプルプルと手を震わせながら手渡して来る、それを無人機に取らせて、それをアンジュまで回す。
端末を見ればこの場所で信号を拾っているのが分かった、だがまだ他の機能があるかもしれないので、ガラスの破片まみれになったスキャニング用の機械に設置して調査を始める。

「よし、取り敢えずお前は尋問官の所へ行ってもらう。」

「おいおいおい!マジかよォ!?洗いざらいゲロったじゃあねえか!?」

「お前が本当に全てを話した証拠はあるのか?」

「………チッ、悪魔の証明かよ。」

「お前が証拠を出せばそうはならない筈だろ?」

「…そういうのを悪魔の証明だって言うんだよ。」

男は聞く耳を持たないアンジュに呆れてそれっきり黙ってしまった。
アンジュもこれ幸いと作業を進めて、ある事を発見した。

「成る程、ソリア地方から来たのか。」

「なっ!?…そこまで分かるのかよ。」

「ふむ、当たりか。」

「……こんの…。」

ソリア地方でこんな過激な事をやる輩はおそらく、軍事都市ゲウィネンブルク。
ここ以外思い当たらない。

基本的には何に対しても中立だが、興味を持ったものには猪突猛進、争うものは全ての武力でねじ伏せる。
万が一にも敵対しようものなら、その国は地図上にて火の海と記載される事になるだろう。

面倒な事になったとも思ったが、とにかく連絡だ。
シズキに再び連絡を取る為に端末を取り出し、通話をかけたところで外からバイクの音がする。

『あれ!?アンジュ君?もう大丈夫なの?』

「ご心配おかけして申し訳ありません、一応現行犯で1人は死亡、1人は負傷していますが捕獲しています。」

『そっか、よかった。一応目の前まで来たんだけど、上がってもいい?』

「どうぞ。」

そう言うと通信は切れて入口の方から足音が響く。

「うわぁ〜結構荒らされたわね。」

「ええ、こいつのお陰で。」

アンジュは端末を操作して拘束している男の腕を捻りあげる。

「いでででっ!!悪かったって!全部吐いたじゃねぇかよ!いだだだ!」

「こいつは?」

シズキが拘束された男を睨む。

「おそらくソリア地方の者に雇われた輩です、もしそうだとすれば必然的にゲウィネンブルクからの差し金かと。」

「ふ〜ん…アンジュ君、少しの間そいつをしっかりと拘束しておいてね。」

「…?了解です。」

シズキは加虐的な笑みでゆっくりと男の後ろへと歩いて行く。

「さておじさん、少し質問してもいいかしら?」

シズキは声を1オクターブほど上げて男に話しかける。

「何だいお嬢ちゃん。」

「あなたの目的ってなあに?」

「はっ!それはさっきそこのにいちゃんに全部話したぜ?今から拷問にかけるか?俺も被害者の1人じゃねぇか?」

「拷問で思い出した!実はお友達の尋問官がいるんだけどね?その人が「最近は手を出してもいい相手が居なくて鬱になりそうだぁ」って言ってたんだけどね。」

「脅しか?ねぇもんは吐けねぇぜ?」

シズキは男の話など全く聞いていないような態度で乙女らしい喋り方を続ける。

「しかもその人がやりたいのってレイプらしいの!しかも同性の!」

「はぁぁ!?」

シズキはびっくりだよねぇ?などと猫を被りながら喋り続ける、男も流石に動揺したらしく焦りの色が見えた。

「それで拷問も趣味だって言うから、私その人に、「良さそうな人が居たら連れてくるね!」って約束したの!その約束が果たせそうだし、ちょうどよかったわ!」

シズキは男の両肩を叩く。

「あ、あははは!お嬢ちゃんは嘘がお上手だなぁ〜、でも俺は金で雇われただけのただの作業員だグェッ!?」

男が言い訳を吐くとシズキは男の顔を掴み、自分の芽が見えるように引っ張る。
当然シズキは後ろからそれをしているのだから男は気道が潰され満足に呼吸が出来なくなった。

「おじさん、私はね?嘘が大っ嫌いなの。わかるでしょ?私は約束したの、それであなたが来た。じゃぁ私は約束を果たしに行かなきゃいけないじゃない?」

シズキは狂気的な笑みで優しく男の顔を両の手で包む、ほんの僅かに呼吸が出来るように角度を調節しながら。

「ァア……ガァ……カァ……ァァアア……。」

シズキはだんだんと頭を掴む力を強める。

「おじさんにはあの人の捌け口になって欲しいの。勿論このまま殺したりなんかしないから安心して?」

「アガァ!……ガァァアア………アアァァアァアア!」

「ふふ!そう、楽しみなのね!私もよ!」

「アアァァアァアアァァアア!!……アァアアアァァアァアア!」

シズキは極めて加虐的な笑みで男へそう告げて男もジタバタしながらも回らなくなって来た頭で必死に思考を巡らせるが、

「でも少し虐めたくなっちゃったから。」

そう言ってシズキはその胸も使い男の頭を優しく包み込み視界を塞ぐ。
そして耳元で甘く囁くように。

「私に壊されるのと、あの人のお人形さんになるの。どっちがいい?」

当然先程よりも深い位置まで首を捻っているため完全に気道を塞いでいる。

「ガッ………カッ……カッ……」

空気も吐くことも吸うことも出来ずに男はひたすらにもがく。
顔が赤くなり動きが鈍くなって来た所でシズキは男の頭を話した。

「ゲホゲホッ!…はぁ…はぁ…ゲホ!……ぁあぁぁ……はぁ…。」

やっと新鮮な空気を吸い込み呼吸を整え始めた所で。
再び首に腕を回して男の首を絞め上げる。

「グェッ!?……なん…げ……。」

「ん〜?私の質問にまだ答えてないよね〜?」

そのまま男は呼吸が出来ずにまた顔を真っ赤に染めて行く。
そしてまた手を離す。

「ゲホゲホ!…ゴホ!……はぁ……嬢ちゃん……はぁ……ほんとにイかれグェッ!!?」

「うふふ!」

シズキは何も言わずそのまま首を絞める。
そしてまた手を離す。
すると次は前に回り込み正面から男の首を絞める。

「あの男もあなたと同じ言い訳をした…。」

つい首を絞める手に力が入る。

「け……クェ………け……か……。」

「こんの…。」

シズキは首を絞める手を話した。

「ぁがはぁ…はぁ…はぁ…もうやめオブォ!」

シズキの容赦しない拳が男の鳩尾にめり込む。

「あっはっはっ…はっ…はっはっ…。」

男は過呼吸になりパニック状態に陥る。
それでもシズキは一切の容赦をせずに殴り蹴り男へ痛みを与え続けた。

あばらを折り、肋骨を砕き、腕も殴り折り、骨盤を蹴り折る。
ひたすら暴行を続けてシズキの息が上がって来た所で手を止めた。

「尋問官よりいい仕事をしますね。」

シズキは反射的にアンジュを睨む、すぐにアンジュは両手を上げて降参のポーズを取るが、シズキ的には結構イラっと来た。だが深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

「スゥ……ハァ〜……。ちょっと昔のトラウマが蘇っただけよ。忘れて頂戴。」

「夢に見そうです。」

「嫌なら見なければ良かったじゃない?」

「あの勢いだと殺すかもしれませんでしたから、見張りは必要でしょう。」

実際途中までは演技をしていたが、殴り始めた所からは本気でただ怒りをぶつけているだけだった。

「私が勢いであなたを殴ちゃったらあなたが怪我してたわよ?」

万が一にも無いとは言い切れない程、己を忘れていたシズキはアンジュに注意を促した。

「その時はキコ先輩が仇をとってくれるでしょう。」

「そう言えば、キコはどんな感じなの?」

「今朝目が覚めましたよ、それを確認して戻って来たらこの有様です。」

結果的には事前に敵を捕獲して少なからず情報も入手したとなれば、不幸中の幸いと言えるだろう。

「ふぅ…まぁ上には報告しないといけないし、キコの顔も見に行きたいけど取り敢えず…。」

シズキは男へ近付き、男の肩を踏んづけながら屈んで顔を優しく撫でる。

「今から私達病院に用事があるの、ついでに連れて行って上げましょうか?死ぬのは嫌でしょう?」

男は消え入りそうな声で一言。

「お…いしま…す…。」

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