星の降る街

ゆるむら

-014- 2996年10月21日 PM 12:36

このシーンを書いてる時は閃ハサのレーンエイムのテーマ曲聞きながら作ってました。
シーンによって聞く曲を変えてます。ちなみに今執筆中のシーンでは東方の、ハルトマンの妖怪の隔離病棟アレンジ聞いてます。






-リーグェン領-
ペイジンシティ跡










キコとカルリスは部隊員のシグナルがロストした位置へ移動をしていたが、肝心の目標地点のビルが眼前にて爆発し崩れ去った。

「これってアレよね。彼のトラップよね。」

「ええ、室内戦では必ず自分の死角となる場所に罠を仕掛けると。」

「火力をミスるなんてあると思う?」

「想像以上に脆い建物ですからね…流石に彼程になってそれは無いと思いたいですが…現状では何とも。」

目の前にて爆発し崩れ去った建物を見れば生き残っている者など、それこそ不定形の怪物、オオヤドヌシ辺りしか居ないだろう。

「まぁそんなマヌケでも無いとは思うけど、念の為確認しに……何あれ?」

キコは崩れたビルの周りに二、三匹目空を飛ぶ何かを見つける。

「鳥…では無いですね…。」

「取り敢えず彼の生死か遺体だけでも探索したいけど…見られるのは嫌ね。」

キコ達は本能的に空を飛ぶ何かに見つからないよう屋根から飛び降り身を隠しながら現場へ近づいて行く。
バレて居ないか逐一空を確認しながら建物の陰に隠れて移動しているが。

不意にその鳥のような物と目があった気がした。

キコはカルリスに止まるよう合図を送り………全力後退を命令した。

「キ…キコお嬢様!?」

「まずい…まずいわ。やっぱり来るんじゃなかった…全隊員へ命令!現場より緊急離脱!!調査隊は引きずってでも撤退!!」

『『『了解!』』』

「なっ…いったい何が………ッ!?」

振り向いたカルリスは絶句した。
先程鳥らしきものがいたのは確認して居たが、それが複数群れを成してこちらに飛んで来て居た。

数は2…4…6…8匹!!

冷や汗をかきながら来た時よりも速く、本当の全速力で撤退する。

「キコ様!!上を渡った方が速…」

「上はダメ!!多分何か遠距離の手がある気がする!!」

「り…了解」

それを聞くと無言で建物を縫う様にジグザグと進んで行く。
可能な限りは全てを避けるように、避けられないならば蹴り飛ばし、目の前に壁があれば大剣で叩き壊す。

華麗とは言えない逃走劇を繰り広げながらも直ぐにナイフの刺さった遺体を通り過ぎた。

直後

「チッ!」

うなじのあたりがぞわりと得体の知れない何かが撫でるような感覚があった、それを避けるように体をずらすとその瞬間、顔の横を切り裂く様に閃光が通り過ぎた。

「流石に広い場所に出るとマズイわね…。」

「あちらへ!」

キコとカルリスは細道へ入る、真上からまた何かを撃たれるが当たらない様に避けた上で大剣に当ててみると見事に弾いてくれた、職人達への感謝の念が尽きない。

そして大剣を盾にしながら細道を走り続け街をもう一息で抜けるという所まで来たのだが、目の前には大きな広場、そしてその向こうに海の中を行くトンネルへ続く関所の様な建物。

キコは更に速度を上げて広場を駆け抜けようと思ったが、広間へ浮遊する例の鳥の様な物が複数、すでに先回りしていた。

これだけ近づいてやっとわかったが、鳥ではなく無人機の様な風貌であった。

「本当面倒な事になったわね…各員、状況は?」

キコは足を止めて物陰に隠れる、ついでに先に撤退させていた隊員達へ連絡を取る。

『こちらA3、全員ベースキャンプまで撤退完了。』

「了解、誰か遠距離戦の腕が立つ奴は居る?それか空を飛べる奴。」

『現状の隊では偵察に出た者以外は…空飛べる奴は本部にも居ないでしょう。』

「ふぅ…了解…。」

キコは苦虫を噛み潰した様な顔で通信を一旦終える。
現状は最悪に積んでいた、撤退しようにも空を飛びながら超速の射撃をしてくる敵に囲まれている。

「キコ様…アレ、中身は子供ですよ…。」

「…そんなまさか……子供を戦場に出してるの?」

「…四つ股から先は……機械の様です、我々の肉体強化技術の何世代か前に、安全性に難ありとして棄てられた技術があの様な形だったと…。」

「はぁ……ゲスが…!!」

子供の兵士達は全員が肩や股間から先は機械の体で背中のバックパック同様のくすんだ金属の色合い。
キコは幼い子供達が大人のおもちゃにされている事に憤る。

「A3、本部へ救援要請。敵は飛行する人体改造兵8体、素体は幼い子供が使われている模様。」

『了解!』

「さて…いつ頃来てくれるか。」

「……すみません…大人しくお嬢様の感に従っていれば…。」

「行くって言ったのはあたしだし、そのお嬢様って言う癖いい加減直しなさい。」

「…すみません。」

「はぁ…あいつらもこのままにらめっこを続けてくれないかしら。」

そう呟くと広場の兵士の一人がこちらへ向かって来る。
銃を構えながらの時点で平和なお話し合いとは行きそうにない。

広場にいる敵は4人、残りは恐らく後方や見えない位置から様子を伺っているのだろう。

「まぁ無理よね…道を作るわ、ついて来なさい。」

「了解です」

そう言ってキコは近くの家の壁を大剣で思いっきり叩き壊す。
そして家の中に入り別の裏道へ出られそうな場所の壁をさらに破壊し突き進む。

敵兵もその暴挙に気づいたのか慌てて広場の全員が飛んで来た、その後は何度かジグザグに移動したり家から出てくるタイミングに時間差を付けたりして撹乱する。

逃走の途中で家から飛び出そうとした時、なんとも言えない気持ちの悪い予感がした為スライディングで姿勢を低くして飛び出る、それを見たカルリスも慌てて倒れる様に地に伏せると両サイドから発砲音が聞こえ、それと同時に片方からくぐもった悲鳴が聞こえた。

恐らく実戦経験の少なさ故に射線を考えずに撃って同士討ちをしたのだろう、カルリスはすぐさま立ち上がり自らの剣の柄に取り付けられたトリガーを引きながら十字に剣を振るう、すると振った軌道を描いて十字のビーム性斬撃が敵を切り裂かんと襲い掛かる。

敵は自分がしでかした同士討ちに驚きオロオロとしていた為回避が遅れ、片腕と片足のつま先を切り落とされてそのままバランスを崩し倒れ伏す。
カルリスはこの機を逃すまいと追撃の刺突で首をひと突き、そしてトリガーを引き首を焼き切る。

残りを確認するべく振り返ると既に敵は頭から股下まで縦に切り裂かれていた、そしてそのまま建物の壁を壊し中へ飛び込む。
カルリスもそれへ続き屋内へ飛び込んだ。

「敵とは言え…子供を切るのは堪えるわね…。」

「…はい。恐らく以前から起こっている誘拐事件はあの子達を作った奴らの仕業かと。」

「本当に許せない…けど今はこっちの命が大事。もう何度か移動したらこいつを爆破して広間を抜けるわよ。」

キコはそう言ってウエストポーチを叩いた。

「了解です。」

キコ達はその後も同じ様に移動するが、先ほどの様に狙撃音が聞こえるも当たる様な事はなく、そして何度目かの移動の時、キコはウエストポーチから手榴弾を取り出しピンを抜き室内へと放り投げる。

「走るわよ!!」

爆発音と同時に広間へ飛び出す、全速力で駆けるが背後からぞわりとした感覚に襲われ、慌てて軸をずらし狙撃を回避する。

「思ったより早い!」

外へ飛び出して来て直ぐに追撃を受けた。
広間の半分を超えた時には背後から2人が飛んで追い抜き、ライフルの底部から銃剣の刃が現れ、こちらとの衝突に待ち構えている。

「カルリス!!背中よろしく!!」

「はっ!!」

キコは走りながら大剣を抜きカルリスはキコに張り付き盾を構えながら迫り来る死の線にのみに気を配る。

敵も走り出し相対的にぶつかる速度は速くなり、キコが大剣を振り上げてから振り下ろすまでの時間が足りなくなった、銃剣の刃がキコを切り裂こうと振りかぶり、ボッ!と爆発音が鳴る。

キコが大剣のトリガーを引き、みねの部分から瞬間的にバーニアスラスターを吹かせて大剣の動きとは思えない様な速度で敵を下から切り上げる、さらに切り上げた瞬間にもう一度トリガーを引き、スラスターにより勢いのついた大剣を止める。
もう1人の飛びかかって来た方には走る速度のまま大剣の刃を向けて押し付ける、敵は銃剣での防御に回るがその瞬間キコの指先からエネルギー性の短い刃が出現し抜き手で頭部を貫かれた。

カルリスはキコの戦闘中、背後にのみ気を配り迫り来る弾丸を可能な限り逸らし防ぎ斬り落とし、キコに1発も当たらない様にしていたのだが優先標的が自分に変わったのか激しい連射により身動きが取れなくなる。
盾で防ぎ、剣で弾き、盾で受け流し、剣で切り裂き。
だが限界は直ぐに訪れ、一瞬の意識の隙を突かれ右足を撃ち抜かれる。

「うぐっ!」

「カルリス!!」

キコは自分の身を全て覆い隠してしまえるほどの大剣を盾に、負傷したカルリスと敵との間へ飛び出す。

「お嬢様!私の事など…」

「あんたはあたしの保護者がわりでしょ!死なれたらあたしが困るの!!」

「くっ…面目無い…。」

キコを盾にカルリスは足を引きずりながら広間を抜ける、反対側の関所の様な建物までやっとの思いで辿り着いた、が。

目の前に野犬の群れがいた。

人の肉を喰らっていたのか身体中べっとりと赤い斑点模様になっている、縄張りへと勝手に侵入したこちらへ牙を剥きながら彼らは威嚇をし始めた。

「キコ様…野犬の群れです。マズイですよ。」

「チッ。3.2.1で右へ跳ぶわよ…。」
キコは大剣で弾幕を防いでいるため背後は振り向け無かったが状況が結構まずい事は分かった。

「了解。」

カルリスは野犬達へ向かい合い万が一にも早まって飛び込んで来ない様に牽制をする。

「3…2…1…。今!」

2人は同時に横へ跳んだ、左右に分かれて。

「えっ!?」

「ちょっと!?」

「キコ様右って言ったじゃ無いですかッ!?」

「私から見て右よバカッ!!」

「そんなぁ!!」

そう言いながらもカルリスはビームによる斬撃で野犬供を迎撃し。
キコは大剣に付いたボタンを押しながら柄を捻る、すると刀身の側面から取っ手が出て来てくる、それを掴みながら柄を引き抜くとショートソードの様な武器が現れた。
キコは刃物付きの大盾で野犬供を弾き、切り捨て、ショートソードでも牽制し切り捨ててゆく。

だが均衡は唐突に崩れた。

「うわっ!?」

「ちょっとカルリス!?」

「クソッ!このっ!うぐぶっ!?」

「カルリスッ!!??こんのぉ!!」

キコは柄を大剣に戻しボタンを押しながらトリガーを引く、すると外側の大剣側面からカシュッ!と音がしたのとほぼ同時に光が溢れて辺りを扇状に焼き尽くす。
タニヤに譲って貰ったパーツは燃費も悪く、万が一にも味方へ当たったり建物の損壊を恐れて使えなかったが、今は一刻を争う。

そしてカルリスの元へ向かい、群がっていた野犬供を切りはらう。

「カルリス!!なにヘマしてんのよ!」

「…すびまっゴボッ!!ゴホッ!!」

「あんた……首…噛まれてるじゃ無い…。」

彼は謝罪の言葉も満足に言えず血の塊を吐き出す、カルリスは身体中から血を流していたが首元の歯型、これだけは他とは訳が違う。

「あぁ…これは……無理そうでゴホッ!ゴホッ!!」

「カルリス!?」

カルリスは諦めた様に血を吐きながら笑った。

「私は……あの家……幸…で……。」

カルリスは掠れて今にも消えそうな言葉を紡ぎ、遺言を語り始める。

「……馬鹿ね、私はあの家は捨てたって言ったじゃない。なのに…あんたは……いつまでも…。」

キコは無意識に拳に力を込める、涙を流さない様に。

「せめ………嬢様…を…ケホッ…任せ……人を……ゲホッゴボッ!!!。」

「あんた……ほんとにこんな時にまで、ほんとうに馬鹿なんだから…。」

キコは涙を堪え、笑顔で自分へ使え続けてくれた愚か者へ、賛辞の言葉を贈った。

「……保…者………です…ら…。」

そう言ってカルリスは満足そうに笑い………。


ナヴィル「紀香帰ってこなくない?ぜんぜん帰って来なくない?」
香奈「そのうち帰ってくるわよ、あんたがしつこいから紀香も嫌がるのよ?」
ナヴィル「でも、もしかしたら怪我してるのかも知れないし・・・。」



香奈「・・・って寂しがってたわよパパ」
紀香『えぇ、パパやっぱきもい。』
香奈「紀香が帰ってきてくれないとママは夜いっつも大変なんだからぁ~」
紀香『・・・知らないわよ。今から友達んとこ行くから切るね。』
香奈「あらこんな時間から?そしたらまたかけ直したりしない方がいいかしらね。」
紀香『え・・・うん、まぁ。なにか用事?』
香奈「いいえ~、ただのお友達って感じじゃなさそうだなぁ~って思ってぇ~。」
紀香『・・・もう切っていい?』
香奈「はいはい~い頑張ってね~!」
紀香『・・・もうっ!』
香奈「ふふふっ」

とある親子の秘密の会話。

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