しん・魔法少女の冒険 ~序~
1話 人生のターニングポイント
緑のお宝見つけたら
時の流れはゴッチャゴチャ
世界は人を写し出す
青いお宝見つけたら
大きな兵隊ズンドコドコ
世界は崩れてさようなら
赤いお宝見つけたら
空飛ぶ猫がやって来て
世界は一からやり直し
――――魔法のエンピツ 第3節より――――
みんなは魔法って信じるかな?
子供みたいだけど私は信じてる。
だって、空気だって目に見えないけどちゃんとあるし、お家のボタンを押すと何処かの電気がつく。
なら、魔法があったって良いよね。むしろ空気とか電気が魔法だったりして……なんてね。
20**年    4月1日
また、この日が来てしまった。
入学式、それは私にとって憂鬱な日。
幼稚園や保育園から新しく入ってきた子が小学校に入って新入生になる。その子達は私にとっての後輩に、
その子達にとっての先輩になる日。
私は先輩になるってどういうことかさっぱり分からないし、すぐに先輩に変わりたい訳でもない。私は今のままちょっとわがままで、お母さんとかお父さんに甘えれる、そんな幸せな生活をしていきたいのだ。
ただそれだけ。
だからかな、式の間新入生を眺めているとうとうとして、つい寝ちゃった。なんか、卒業式とか始業式とかって不意に眠たくなっちゃうんだよね。本当になんでだろ?
眠りから覚めてからの私はぼーっとしたままその日の学校を終えた。私が一番楽しみにしているのは通学中に鼻唄を歌うときと、下校中鼻唄を歌うときだけだ。
それ以外はあんまり、でもひとつだけ好きというか楽しみなものもある。
それはアニメだ。
私が初めてアニメと出会ったのはまだ7歳の頃で、リビングでソファーに寝転んでぐったりしていたとき。ふとテレビを見ると、可愛らしい女の子がカードを集めるために素敵なステッキを持って謎の敵と戦っている映像が目に入った。私はそのとき思わず間抜けな声を上げた。
「…ぅえ??」
「ママ!!今のなに!?」
私がそういうと、お母さんは途中だった家事を止めてこちらに振り向いた。
「あら、それはアニメって言ってね、絵が連続して動いた物なの。白子は見るのが初めてだったのね」
「アニメ……へぇーそうなんだ!!」
そうして私は初めてアニメの事を知った。
そのおかげ……というか、そのせいというか、小学6年生には要らない変な知識や逆にもっと先の未来で役に立つようなことも知った。アニメってスゴいね、一つの物語から多くのキャスト――キャラクターが、そしてそのキャラクター達からより多くの物語が……という風にまるで樹形図見たいに何かしらの繋がりが増えていく。でも、世間のイメージはあまりよくないみたい。見知らぬ人に自己紹介するとき、趣味がアニメ観賞ですと言おうものなら、きっと私は雨の日に自宅前にいるカエルを見てしまったというような目線を浴びるに違いない、いや浴びるだろう。
私は私の好きなものを好きって言いたいし、でもそれを他人に押し付けるような事をしたくない。だからアニメのことを嫌いって言う人に嫌いって言うな!と言うことも出来ないのだ。まぁなんというかこの歳にして世知辛い世の中事情を知ってしまった気がする。
というか、なんで私はこんなにも熱くアニメの事を語ってるんだろう。声には出してないのに照れてきた。ほんとにいや、マジで。
それでなんだかんだあって家についたら、玄関に変なステッキがあった。親はまだ仕事で家に帰ってきているはずもないし、ましてやなんでもないこんな日(入学式はありました)におもちゃを買って、それを玄関に置くような雑?な親でもない。
そして、もちろん私の物でもない。
従って、知らない誰かが置いていった物である。
はいQED
……
…………
………………いや、駄目じゃん。
えっ?本当にどうしよう……もしかして知らない人が?でも私が鍵持ってるんだし……そもそもこんな変なステッキを置いて不法侵入をする強盗が居るだろうか??
まずはステッキを持ってみよう。あれだ、クラスの男子が旅行先で木刀や模擬刀を見つけてはしゃぐのと同じ原理で私も今持ってみたくなったのだ。是非も無いよね!
「よいしょ」
私が最初に思ったことは『軽い 』だった。
素材は木……なのか、指でコツコツ叩くと中身は空洞なのか甲高い音が響いている。上部のほうは緑の…いや、翠?に近い色の綺麗な石が歪な格好の金具に嵌まっている。どうやら、引っ張っても抜けないようだ。
「まぁ…なんというか、ステッキ……ぽくはないよね」
意図せず漏れた言葉に私は少し思考を働かせる。
確かに、これはステッキなのだろうか?
アニメの事を考えていた手前、それに引っ張られて思考もそっち方面に言った可能性は無くもないが……。
「…ステッキというよりは……杖?」
そう、まさに杖っぽいのだ。
アニメのキャラの偉そうな、年老いた、髭がぼうぼうで……なんというかマシマシ的な人が持ってるやつ。
そのそれっぽいやつだ。
とりあえず、家に入ろう。
「寒い……」
私の体温は低め、よって寒がり、なので風邪引くかも
因みに杖よりのステッキ?はランドセルに突っ込んだ。
ガチャリ
「ただいま」
無人の家にポツリと呟く。あれだね、寂しいけどもう行事というか、通過儀礼とかそういうもので、既に体に定着してしまっているものだと思うんだコレ。
体に…定着……。やだ、なんかヤラシイ
そんなどうでもいいことを考えながら自室のある階段へと向かう。
念のためにとリビングを覗くが、リビングには誰も居らず、人の気配は無かった。
これ幸いと階段に一歩足をかけると、後ろから音が聞こえた。
「………………ヵ」
振り返ってみたが、音源と思わしき所には何もなくよく聞こえなかった。
気のせいかと思いもう一度普遍のリズムで階段を上る。そして最後の一段を上ろうとしたその時――
「ワタシノバヵ」
今度はハッキリとそう聞こえた。
と同時に体が後ろに引っ張られる感覚に襲われ、私の体は斜め後ろに、言ってしまうと空中に。
この体制では確実に頭を打つだろう。あれ、この高さって大丈夫なのかな?え?ヤバいよねヤバいヤバいヤバいって。なんで?私、転んでないのに?こんないきなり?何の前触れもなく?
「ワタシノバヵ」
それはまるで積年の恨みを、怨みをぶつけるように私の鼓膜に響いた。
段々景色が白くなって、視界がボヤけて、それで――
そこからは……覚えていない。
時の流れはゴッチャゴチャ
世界は人を写し出す
青いお宝見つけたら
大きな兵隊ズンドコドコ
世界は崩れてさようなら
赤いお宝見つけたら
空飛ぶ猫がやって来て
世界は一からやり直し
――――魔法のエンピツ 第3節より――――
みんなは魔法って信じるかな?
子供みたいだけど私は信じてる。
だって、空気だって目に見えないけどちゃんとあるし、お家のボタンを押すと何処かの電気がつく。
なら、魔法があったって良いよね。むしろ空気とか電気が魔法だったりして……なんてね。
20**年    4月1日
また、この日が来てしまった。
入学式、それは私にとって憂鬱な日。
幼稚園や保育園から新しく入ってきた子が小学校に入って新入生になる。その子達は私にとっての後輩に、
その子達にとっての先輩になる日。
私は先輩になるってどういうことかさっぱり分からないし、すぐに先輩に変わりたい訳でもない。私は今のままちょっとわがままで、お母さんとかお父さんに甘えれる、そんな幸せな生活をしていきたいのだ。
ただそれだけ。
だからかな、式の間新入生を眺めているとうとうとして、つい寝ちゃった。なんか、卒業式とか始業式とかって不意に眠たくなっちゃうんだよね。本当になんでだろ?
眠りから覚めてからの私はぼーっとしたままその日の学校を終えた。私が一番楽しみにしているのは通学中に鼻唄を歌うときと、下校中鼻唄を歌うときだけだ。
それ以外はあんまり、でもひとつだけ好きというか楽しみなものもある。
それはアニメだ。
私が初めてアニメと出会ったのはまだ7歳の頃で、リビングでソファーに寝転んでぐったりしていたとき。ふとテレビを見ると、可愛らしい女の子がカードを集めるために素敵なステッキを持って謎の敵と戦っている映像が目に入った。私はそのとき思わず間抜けな声を上げた。
「…ぅえ??」
「ママ!!今のなに!?」
私がそういうと、お母さんは途中だった家事を止めてこちらに振り向いた。
「あら、それはアニメって言ってね、絵が連続して動いた物なの。白子は見るのが初めてだったのね」
「アニメ……へぇーそうなんだ!!」
そうして私は初めてアニメの事を知った。
そのおかげ……というか、そのせいというか、小学6年生には要らない変な知識や逆にもっと先の未来で役に立つようなことも知った。アニメってスゴいね、一つの物語から多くのキャスト――キャラクターが、そしてそのキャラクター達からより多くの物語が……という風にまるで樹形図見たいに何かしらの繋がりが増えていく。でも、世間のイメージはあまりよくないみたい。見知らぬ人に自己紹介するとき、趣味がアニメ観賞ですと言おうものなら、きっと私は雨の日に自宅前にいるカエルを見てしまったというような目線を浴びるに違いない、いや浴びるだろう。
私は私の好きなものを好きって言いたいし、でもそれを他人に押し付けるような事をしたくない。だからアニメのことを嫌いって言う人に嫌いって言うな!と言うことも出来ないのだ。まぁなんというかこの歳にして世知辛い世の中事情を知ってしまった気がする。
というか、なんで私はこんなにも熱くアニメの事を語ってるんだろう。声には出してないのに照れてきた。ほんとにいや、マジで。
それでなんだかんだあって家についたら、玄関に変なステッキがあった。親はまだ仕事で家に帰ってきているはずもないし、ましてやなんでもないこんな日(入学式はありました)におもちゃを買って、それを玄関に置くような雑?な親でもない。
そして、もちろん私の物でもない。
従って、知らない誰かが置いていった物である。
はいQED
……
…………
………………いや、駄目じゃん。
えっ?本当にどうしよう……もしかして知らない人が?でも私が鍵持ってるんだし……そもそもこんな変なステッキを置いて不法侵入をする強盗が居るだろうか??
まずはステッキを持ってみよう。あれだ、クラスの男子が旅行先で木刀や模擬刀を見つけてはしゃぐのと同じ原理で私も今持ってみたくなったのだ。是非も無いよね!
「よいしょ」
私が最初に思ったことは『軽い 』だった。
素材は木……なのか、指でコツコツ叩くと中身は空洞なのか甲高い音が響いている。上部のほうは緑の…いや、翠?に近い色の綺麗な石が歪な格好の金具に嵌まっている。どうやら、引っ張っても抜けないようだ。
「まぁ…なんというか、ステッキ……ぽくはないよね」
意図せず漏れた言葉に私は少し思考を働かせる。
確かに、これはステッキなのだろうか?
アニメの事を考えていた手前、それに引っ張られて思考もそっち方面に言った可能性は無くもないが……。
「…ステッキというよりは……杖?」
そう、まさに杖っぽいのだ。
アニメのキャラの偉そうな、年老いた、髭がぼうぼうで……なんというかマシマシ的な人が持ってるやつ。
そのそれっぽいやつだ。
とりあえず、家に入ろう。
「寒い……」
私の体温は低め、よって寒がり、なので風邪引くかも
因みに杖よりのステッキ?はランドセルに突っ込んだ。
ガチャリ
「ただいま」
無人の家にポツリと呟く。あれだね、寂しいけどもう行事というか、通過儀礼とかそういうもので、既に体に定着してしまっているものだと思うんだコレ。
体に…定着……。やだ、なんかヤラシイ
そんなどうでもいいことを考えながら自室のある階段へと向かう。
念のためにとリビングを覗くが、リビングには誰も居らず、人の気配は無かった。
これ幸いと階段に一歩足をかけると、後ろから音が聞こえた。
「………………ヵ」
振り返ってみたが、音源と思わしき所には何もなくよく聞こえなかった。
気のせいかと思いもう一度普遍のリズムで階段を上る。そして最後の一段を上ろうとしたその時――
「ワタシノバヵ」
今度はハッキリとそう聞こえた。
と同時に体が後ろに引っ張られる感覚に襲われ、私の体は斜め後ろに、言ってしまうと空中に。
この体制では確実に頭を打つだろう。あれ、この高さって大丈夫なのかな?え?ヤバいよねヤバいヤバいヤバいって。なんで?私、転んでないのに?こんないきなり?何の前触れもなく?
「ワタシノバヵ」
それはまるで積年の恨みを、怨みをぶつけるように私の鼓膜に響いた。
段々景色が白くなって、視界がボヤけて、それで――
そこからは……覚えていない。
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