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魔王の息子と勇者になろう【凍結中】

カズト@手直し作業

第十話 悪魔と入学式に出席しよう


おれ達が学校に圧倒されている間に王女は消えていた。

「ここが勇者育成学校、ナスタリテ勇者差遣学園か」
「この学校で皆勇者になるのだな」

彼女が居なくなり少しほっとして、2人で周りを見回しながら校門をくぐった。
校舎が大きく、校庭が広いため人が少なく見えるが、ちらほら数人で固まって歩いている人達を数えてみると30人はいる。

「ふむ。待ちきれない、といった我のような者達だろう」

サタナスの言う通り、誰もかれもが楽しそうな顔をしている。

「…おれは退校になるのが待ちきれない」

おれの今の心境はこの1言に尽きる。
なんでおれまで学校なぞに入学しなければいけないのだ。
いくら学費も生活費も調えてくれるからといって…。
はあ…。
ここで生活をすると毎日二桁に上る溜息が出そうだ。
はあ…。

「あ、あの」

いきなり後ろから肩を叩かれ、腕を大きく振り回してしまった。
あ、当たる。
と思ったとき、おれの腕を止めたのは当然のごとくサタナスだった。

「突然声を掛けてごめんね!」

彼女が下げた頭はおれの腹に当たった。

「あわわ、ごめんなさい!」

この1コマだけで彼女がそそっかしい人物だと分かった。
外見は美人ではなく、可愛らしい。
リスのようにくるくる動く。
して、おれ達に何の用だろうか。

「ええっと、お兄ちゃんを探してるの。私とパーツの色は一緒なんだけれど…」

おれの疑問を察し、用件を開示してくれた。

「とすると、茶髪青い目の男子生徒か」
「そう!背丈は、二人の少し上ぐらいかな?」
「残念ながらおれ達は見ていないな」
「そっかあ…」

がくりと肩を落とすその様は、王女と似ている。

「とりあえず、闘技場に行こう。すでにお前の兄が行っているやもしれん」
「そ、そっか!私はキレサ・フティーラ」

よろしくね。
そう言っておれ達に笑いかけた顔はやはり、王女と似ていた。
 

「あっ、お兄ちゃん!」
「キーサ!またお前は…。そちらは?」
「イリスラート。こっちはサタナス。あんたらと同じく新入生」
「妹が迷惑をかけた。すまない」

真摯にこちらを見る目はキレサとよく似ていた。
キレサが藍なら兄は蒼。
どちらにしろ、2人とも綺麗な色だ。

「俺はキルシア・フティーラ。今後もよろしく」

おれはサタナスと顔を見合わせ、声を揃えて言った。

「「もちろん」」
 

「これにて、入学式を終了する。…この後の予定については教頭のリポーディス先生、お願いします」

司会をしていた先生が引っ込み、柔和な笑みを張り付けたあの男が出て来た。

「はい、皆さんこんにちは。入学試験の際にお会いした人もいると思いますが、一応自己紹介を」

教頭のリポーディスです、よろしくお願いしますね。
そう言って笑顔を見せるが、やはりどこか嘘くさい。
そして、名前はそれだけなのかと生徒が騒めく。
それを全く意に介さない男は続ける。

「教頭、と呼んでくだされば結構です。この後の予定は学校見学と」
 

クラス分け試験です
 

「クラス分け試験、か」

兄妹とは別れ、2人で学校見学することにした。
本来ならば入学する前に話し合うべきことをすっかり忘れていたためだ。

それはサタナスの設定。
おれは銀髪を黒く染めた。
だからおれが質問攻めにあうことはない。
バレることもない。
サタナスが魔王の息子だとバレる?
知ったことじゃない。
勝手にしていろ。
そうはいかない。
もうリポーディスにも兄妹にも、おれ達が一緒に居、喋っていたことが認識されているのだから。
つまりおれとサタナスは運命共同体。
共犯者。
仲間。
最後の一つは明らかに違うとしても、嫌な関係だ。

というわけで、王女に気付かれた時のような展開になった場合、どう切り抜けるか、どう言い訳するかどう嘘を吐くかが課題なのだった。

「クラス分け試験よりおれ達が考えなきゃいけないことがあるだろ」
「たしかにそうだが。新入生の総人数95。それを上級、中級、初級クラスに分ける。成績に応じてクラスは変動。1クラス、常に生徒数は同じ。一体どのクラスに入ったものか…」
「そりゃあ、後でそれも考えるさ。けどこっちが先だ」

何かいい案は無いものか。
王女の時そうしたようにエルフだと言い張るか?
いや、彼女ほど魔法に秀でた者も居ないではない。
純人間の特別変異?
こんなので騙される阿呆はいない。
じゃあ…

「こんなのはどうだ?」
「何か思い付いたか。この魔力にどのような説明を?」
「金持ちの好事家にやられた」
「?どういうことだ?」
「幼い頃神力が多く蓄えられていたお前は、人攫いに会うんだ。そいつに連れられた先にあったのは陰鬱なオーラの溢れ出てるお屋敷。そこでなんと人体実験をされ…」
「悪魔の部品を移植されると。なかなか面白い。それでいくとしよう」

それで、と。
悪魔は目をキラキラ輝かせ言った。
 

「とにかく。デカかったな」
「うむ…。危うく時間に間に合わぬところだった」
「何とか間に合って良かったな」

全新入生は再び闘技場に戻ってきていた。
ここで試験をするらしいのだ。
どの生徒も試験内容の推測を口にしている。
ここに悪魔を連れて来て、倒したものから上級クラスに、だの。
先生と試合をして採点してもらう、だの。
神力の多さを測る道具が用意してあるだの。
どれもこれも噂ばかりで信憑性が薄い。

「俺は生徒同士の試合勝ち残り式…だと思うね」
「フティーラ、兄」

後ろからの声に振り返って名前を呼べば苦笑される。

「キル、でいい」
「私もキーサでいいよ」

キルシアの背に隠れていたキレサも言う。

「おれのことは名前で呼ばなければ何でもいい」

本当はどちらも嫌いだが。

「我は名前が一つしかないのでな。どう呼ばれようと気にしない」
「え~と…。じゃあ、イリス君とサタナス君、でいいかな?」

それに返事をしようと口を開いた時、声が響いた。

「これより、クラス分け試験を始める」

この声は…教頭か。


「試験内容は分かりやすく、バトルロワイヤルです」

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