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魔王の息子と勇者になろう【凍結中】

カズト@手直し作業

第六話 悪魔の気遣い

 
少女は好奇心と戸惑いの混じりあった色で瞳を染め、おれの目を射抜いた。

「あなたも…わたくしと同じ、銀髪なのですか?」
「何だ?銀髪であることにやけに拘るのだな」

おぃぃぃいい!
まさに悪魔!
この場面でそんなことを言ったら、肯定してるも同然だろうがっ‼

「ということは、この方は銀髪なのですね…?」

ほら見ろ!
確信してるじゃないか!

「すまない。気付かれてしまった」

軽くおれに頭を下げた。
すまない、じゃないんだよ…。

この国で生まれて銀髪であることはこの国一番の重要事項と言っても過言ではない。
勿論、他国から銀髪の奴が幾人か来ていてもおかしくないだろう。
それでもよくある髪色、というわけではない。
それに、他国でも銀髪であることは価値がある。
しかも、おれはこの国生まれのこの国育ちだからな…。

「…おれが銀髪なのは認めるが、この国の生まれじゃない」

誤魔化すには軽く嘘をつくのが一番楽だろう。
魔王の息子は辛うじておれが気付いたってレベルで目を見張った。

「そうですか。しかし、貴方とは仲良くなれそうです」

そう言って彼女は綻んだ花のように優しく微笑んだ。

「もう少しお話ししたいのですが…あまり街には詳しくなくて」

眉尻を下げておれ達二人の顔を見た。

「うむ。貴女は追われているようだしな。移動した方がいいだろう」

そう言ってあいつもおれを見た。
おれが街へ下りるな、と言っていたからこいつがこの街へ下りたのはこれで二度目なのだ。
銀髪の彼女は街へ来たことがあるかどうかも怪しい
月に2、3回来る程度なのに、消去法で1番詳しいのはおれだった。

「…寂びれたバーがある。あんたみたいな金持ちにとっては汚いところだがな」

追っ手に見つかるかもしれない。
直ぐ向かおうとした路地のさらに奥に進んだおれの背に、彼女は声を掛けた。

「本当に優しいのですね  」

最後の言葉は聞こえなかった。
 

おれは黙々と歩く。
2人もおれの後ろを黙って歩く。
だから目的地に着くまでこうなのかと思っていたら、あいつは俺の隣にやって来て言った。

「すまんな。そんなつもりはなかった」
「……」

ああ、それは分かっているさ。
しかし、彼女に知られるなんて…おれと同じく銀髪を持つ奴に知られるなんて不都合しかない。
しかも親が親だ。
最悪中の最悪だ。

「お前は知られたくないと言った。それをこうして破ってしまった。だがせめて、どうしてそこまでして出自を隠したいのかは聞かないでおこう。これで清算できるとは思ってもいないが」
 

まだ日は明るいが此処は、地下が居るかのように暗い。
それにジメジメしている。
此処に来るまでの間、あの後は誰も喋らなかった。
おれは立ち止まる。

「ここだ」

ドアを開けると歓迎するかのようにベルが鳴った。
 
 

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