これはネタ武器ですか?いいえ、最強の武器です。

黒焔

3話 銃? そんなもんよりナイフだろ?

 大きな文字が消えた後、視界は一瞬だけ閃光に包まれる。

「おぉ……」

 閃光が消え去り、視界に映ったのは近未来化した東京のような街。建物の外装や街の色は殆どが銀。どの建物も鉄を用いたような街である。

「ガンスミス……銃の整備士は鉄を扱うも同然。それが全面的に出てるってところか」

 ギンギラギンに、と歌いたくなる程光を反射する街ではあるが、自然と不快感を覚えない辺り運営陣も努力しているのだろうとユウトは尊敬を抱きつつ、メニューを操作しだす。

「所持品は何にもなし。装備も何にもなし。そして一文無し。ほぉ、ステータスはあるのか」

 ドラグーンオンラインとほぼ変わらないステータスを見ながらユウトはニヤリと笑う。ドラグーンオンラインではサブアカウントは作れない。しかし、ドラグーンオンラインとステータスがほぼ変わらないのなら、サブアカウントが合った時ように考えたステータスが組めるかもしれない。

「さて、後はラティスから教えて貰うとして。集合場所に行かなきゃな」

 ユウトはメニューを操作し、マップを開く。マップに表示された広場を見る。

「確か、中央広場の噴水前だったよな。よし行くか」

 ユウトはゆっくりとその足を動かした。




「よ、お待たせ」
「おせぇぞ。ユウト」
「ユウト君遅いよ~」
「すまんすまん。色々見て回ってたんだよ」

 ドラグーンオンラインの時と変わらないネームで三人は集まる。

「で? これからどうすんだ?」
「そこはちゃんと調べてある。先ずは武器屋に言って無料チケットを貰う。武器屋の店員から射撃練習場を借りて銃を試し打ちする。それで気に入った武器を無料チケットで交換するんだ」
「オッケー。んじゃ、武器屋にいくか。マップだとこっちだな」




 ユウト達は武器屋の店員から無料チケットを受け取り、射撃練習場で銃を握っていた。

「ピストル……ハンドガンはサブとして武器に持てる小さい銃だ。威力も小さいし装弾数も少ない。メイン武器の弾が無いときようだな」
「へぇ~」

 ユウトはハンドガンを握りしめ、的を狙って撃つ。至近距離とは言わずとも、まぁまぁ近いその距離で弾は外れた。

「えぇ? この距離で普通外すか?」
「まぁ、最初はこんなもんらしい。気にすることねぇさ」
「そんなもんか?」
「おう、エイムアシストとかあるらしいけど力みすぎるとエイムアシストが効かないらしいし、射撃予測線とかいう弾が飛んでくのを予測する線もあるらしいけど、発砲で銃口が上に向くから当てにならない。ま、撃たれてる側からすれば射撃予測線はありがたいらしいけどさ」
「そっか」

 ユウトはその後ラティスの説明を聞きながらミユと共に銃を撃つが、一切当たることはなかった。

「クソゲーだクソゲー! 一発も当たらねぇじゃねぇか!」
「大丈夫だって最初は感覚掴むまで時間か掛かるんだからさ」

 商店街のような場所を歩きながらユウトは大声で文句を言う。初心者の街ではよくある光景なのか皆馬鹿にする事はなく、クスクスと懐かしむようにユウトを見ていた。

「取り合えず武器だけ選ぼうぜ? 手ぶらじゃ何も出来ないだろ?」
「まぁ、そうか。ドラグーンオンラインも慣れだったしな!」

 ユウトは気合いを入れ、武器を見ていく。種類によって得意な射程や特徴が異なる銃はユウトにとっては斬新だったのだろう。食い入るように見ていると、何かに気づいたようにユウトは指を指した。

「なぁ、ラティス。この拳マークの武器ってなんだ?」
「ああ、それは近接武器だ。ナイフとかそう言うのだな」
「へぇ~」

 視線をラティスから拳マークに戻したユウトは拳マークをタップする。表示された近接武器は様々な種類があった。

「一般的なナイフにライトセーバー……お、刀もあるのか!」
「おいおい、分かってると思うがナイフはネタ武器で有名なんだぞ?」
「ラティス今何つった?」
「は?」

 ユウトはラティスとミユが聞いた事もないドスがきいた声でラティスを睨めつける。その目は普段のふざけた目ではなく、ドラグーンオンラインでモンスターを倒すときの目と同じ。殺意を孕んでいる目だった。

「ナイフが、刀がネタ武器だと? ラティス……俺に喧嘩売ってんのか?」
「そうじゃなくて周りから見れば「うるせぇ! 俺は刀を買う。いいな!」……好きにしてくれ」
「ユウト君。ちょっと落ち着いて?」
「ミユすまねぇ、俺は刀を最強の武器って知らせなきゃならなくなった。銃を使うのはまた今度な」

 ユウトは刀を無料チケットで交換し装備する。その瞬間ユウトはレベルアップした。

「レベルアップ?」
「ああ、言い忘れてた。この世界にはレベルがあって、レベルアップ毎にポイントが貰えんだ。後は分かるよな?」
「ま、最初に色々見てたから何となくは察してた」

 刀を抜き、ユウトは刀身を眺める。ユウトが綺麗だ等と呟いていると二人の男性がユウトの肩を掴んだ。

「ねぇ、君! 初心者なんだろ? 俺達が優しくこの世界を教えてやるよ!」
「そうそう! 先ずはPKから教えてあげるぜ!」
「ん?」
「誘いに乗るなユウト。初心者殺しだ」

 ラティスの言葉を聞いてユウトは口角上げる。それを見てラティスは苦笑いを浮かべた。ユウトはまるでオモチャを与えられた子供のように笑っていたからだ。

「それは嬉しいな。ご教授頼むよ」
「そっか! そりゃあよかった!」

 ユウトはPKの申し出を受諾し、二人の男性から離れる。

「あ、戦う前にステータスだけ弄って良いか?」
「構わないよ!」
「サンキュー」

 ユウトはステータスを弄り終え、刀を抜く。
「なぁ、ラティス。俺はドラグーンオンラインで言ってたよな」
「ん? なにが?」
「俺は速くなりたいって」
「お前、まさか!」

 ユウトは数回ジャンプをした後ニィと笑うと刀を二人の男性に向ける。

「さ、始めようか。どうせなら二人で来いよ」
「随分舐めるね。死にな!」
「風穴あけてやるぜ!」

 二人の男性が銃を構えた瞬間、ユウトの視界は赤色の線で埋め尽くされる。刹那、銃から放たれる銃弾。

--ああ、なんだ。

 ユウトは身体を動かし呆れたかのような表情を浮かべた。

--ドラグーンの方が全然速い。

 踏み込み、駆け出した瞬間ユウトは二人の男性の目の前に現れた。

「おせぇよ。ナメクジじゃねぇんだからさぁ、もっと速く動いてくれよ」

 二人の内一人の首を刀で切り裂き、ユウトはそう吐き捨てる。

「く、化け物め!」
「化け物? 俺はただAglに極振りしただけなんだが?」

 アサルトライフルから放たれる銃弾を全て避け、ユウトは刀をもう一人の男性に突き刺した。

「しっかし間抜けだよなぁ。初心者殺そうとして、逆に殺されたんだから」

 倒れた二人の男性を見てユウトはハッ! と笑ったのだった。

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コメント

  • ナナシ

    GGO的な

    1
  • ショウ

    ユウト鬼畜ぅw

    1
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