これはネタ武器ですか?いいえ、最強の武器です。
1話 目標達成
火山の奥地。全てを溶かすマグマと、それから発せられる地面を焦がす程の熱気に包まれながら、一匹の龍と一人の少年は対峙していた。
「漸くだ。漸くお前の行動パターンを覚えたぞドラグーン!」
「ガアアアア!」
ドラグーンと呼ばれたモンスターは、対峙する少年に向かって咆哮する。少年は自信に満ちた笑みを浮かべると、叫びながら地を蹴るように走り出した。
「らああああ!」
「ガアアアア!」
一人と一匹がぶつかり合い、数十分の激闘の末に幾つものポリゴンの欠片が宙を舞ったという。
ドラグーンオンライン。人類の夢であるVRMMORPGの記念すべき第一作品として発売されたゲーム。プレイヤーは様々な種族と職業を選び、広大な世界で旅をするというオープンワールド形式のゲームで、勿論RPG要素であるステータスやステ振り、スキルも存在する。自由度が高いゲームである。
発売当初はとてつもない人気を誇ったが、いざやってみると「チュートリアルをクリアした後の支給アイテムが受け取れない、謎の異次元判定、ちょっとした段差で落下死、モンスターが強すぎる(レベルが同じなのにワンパンされる)、武器が一回振っただけで壊れた、防具が重すぎて動けない」などの不具合ありありであった。
運営は必死に対策を続け、現在はまともなゲームとなっているのだが、それでも尚、ダンジョンと呼ばれる迷宮の奥地に居るボスモンスターの異常さは所々改善されておらず、運営は「仕様です」と言っているが、プレイヤー側からすれば回復役が居なければ戦いにならない為、批判されクソゲー呼ばわりされることとなった。
先程、回復役を出したが、ドラグーンオンラインには当然パーティーというものがあり、最大人数8人で編成することが出来る。また、同じ目的や同じプレイスタイルのプレイヤーの集まる建物をギルドと言う。ギルドにはそれぞれ名前があり、ギルドを設立したプレイヤーはギルドマスターとなる。
「よっしゃー!」
そんな数あるギルドの一つに少年の喜びの声が木霊した。
「ここまで頑張ってきて良かったぜ! 今回は本当に駄目だと思った」
喜びをさらけ出す黒髪、黒目の少年。彼のプレイヤー名はユウト。ギルド『極楽』のギルドマスターであり、ドラグーンオンラインでは有名人でもある。
「単騎でドラグーン撃破とか……驚きを通り越して呆れるわ」
「もっと褒めてもいいんだぜラティス」
「褒めてねぇよ」
「凄いよユウト君!」
「だろ? 五ヶ月も掛かったんだ。結構辛かったぜ」
ギルド『極楽』のメンバーであるラティスとミユと話をしながら、ユウトは自身の設立したギルドでくつろぐ。
「さってと、やること無くなったなぁ」
ユウトと火山の奥地で激闘を繰り広げていたドラグーンは、ドラグーンオンラインのラスボス的存在であった。ダンジョンのボスモンスターの異常さを優に超えたドラグーンは、クソゲーをクソゲーたらしめるモンスターであり、月一しかその姿を現さないこともあって運営には膨大な量のメールが届くこととなった。
メールの主な内容は「強すぎる」ということ。ドラグーンはドラグーンオンラインを極めた廃人がパーティー8人で戦っても勝てるかどうか分からないのである。故に、ユウトは最終目標としてソロで撃破する事にした。そして今日達成してしまったのだ。
さて、ここまでドラグーンについて触れてきたが、気づいただろうか? ユウトの異常さを。ユウトが何故、ドラグーンオンラインにて有名人なのか。理由はユウトの異常さによるものである。
ユウトが設立したギルド『極楽』は決して大きくはない少人数で形成されたギルド。ユウトとリア友だけしか所属してないのだが、ギルド対抗戦と呼ばれる特別エリアに配置されたボスモンスターを多く倒したギルドが優勝し、報酬を貰える月一のイベントにて必ずギルド『極楽』は優勝しているのである。
優勝したギルドの名前は全てのプレイヤーに知られ、ギルドメンバーの誰が一番ボスモンスターを倒したのかが表示される。その表示に載る為にプレイヤーはせっせとボスモンスターを狩るのだ。
気になるイベント期間は一週間。廃人であっても倒すのには限界があり、多く倒せたとしても2桁。理由としては被弾すればワンパンされるような難易度であるため。その中でユウトの記録は驚愕の4桁。
これには運営も唖然とした。「チート使ってるんじゃね?」と、運営は監視システムを使いユウトの戦闘を監視したのだがまたもや驚愕。
チートなんて使ってなかったのである。ユウトはただ避けて、ただ攻撃していただけ。その攻撃も破格であり、ボスモンスターがワンパンされているのだ。運営は「これ無双してね? これ広告に使えばおもしろそうじゃね?」なんてことを思い。広告に使っていいかとユウトに連絡する程である。
ユウトは快く承諾し、ドラグーンオンラインの広告に映ることになり、一躍有名人となった。元々、イベントで有り得ない成績を叩き出している時点で軽く有名人なのだが。
有名人になってからも、ドラグーンオンラインを続けててはいたが、目標という目標を失ったユウトは謎の喪失感を感じていた。
「皆のステもスキルも全部極めたし、ドラグーンは撃破したし、マジでやることねぇな」
あとやることとすれば、ドラグーンオンラインの運営が不定期で配信するドラグーンラジオの出演。ドラグーンオンラインの有名人や、エリアを破壊するなどのキチガイ行為を行うプレイヤーを特別エリアに招き入れ、ドラグーンオンラインについて語り合う企画である。広告に映るユウトも当然招かれる。
「でも、話しても理解してもらえないんだよなぁ」
攻撃パターン、予備動作、攻撃範囲。全てを覚えればどんなモンスターでも撃破出来る。そうラジオに招かれる事に伝えているのだが誰も理解してくれない。
「普通理解できねぇから。廃人め」
「ひでぇなラティス」
「ひでぇなって。お前自分の異常さ理解してんのか? 異次元判定を回避すんのお前ぐらいだぞ?」
「異次元判定にも判定が無い隙間があって、そこにスキル〈絶対回避〉で潜り込めば回避出来る」
「その火力もおかしい」
「俺の防具は被ダメが3倍になるかわりに攻撃が5倍になる特注品だからな。そこに攻撃が2倍になるスキル〈明鏡止水〉を使ってHPを1にして、スキル〈不屈の闘志〉と〈底力〉が自動発動するから攻撃が15倍だから、150倍だな」
「頭のネジ外れてるな」
「誰でも出来るぞ? 戦う条件は攻撃に当たらないだけだし」
「それが出来ないから言ってんだよなぁ」
溜め息をつくラティスを尻目にユウトはウィンドを操作し、ログアウトボタンを表示させる。
「取り敢えず、俺は落ちるわ。ラティス、ミユ、お疲れ様」
「おう、お疲れ」
「お疲れ様ですユウト君!」
「んじゃ、また学校で」
ログアウトボタンを押し、目の前が真っ暗になると共に、柔らかい物が体を包む感覚がユウトに伝えられる。ユウトは閉じていた目を開け、ヘッドセットを取った。
「宿題やんねぇとな」
ユウト……本名は神崎悠人と言い、ごく一般な高校生。黒目黒髪、少し中性的な顔立ちで太ってる訳でも痩せている訳でも無い普通の体格。何処でも居そうな高校生でーー
「やっぱりいいや。やる気でねぇ」
ーー成績は良くない方である。
「ん? メール?」
ベッドから起き上がり、自身の横に置いてあるスマホを開く。メールはドラグーンオンラインの運営から。内容は「19:00からドラグーンラジオを配信致します。そこで、ドラグーンを討伐したユウト様にお越しいただきたいとお願い申し上げます」とのこと。
特に予定も無い悠人は「喜んで」と、返信をした後スマホで時間を確認する。
「午後5時55分。風呂と飯は間に合うか」
悠人は風呂と飯を済ませる為に部屋から出るのだった。
因みに、ドラグーンラジオにて、ユウトの話を誰も理解してくれなかったのはいつものことであり、それをリア友に愚痴るのは別のお話。
「漸くだ。漸くお前の行動パターンを覚えたぞドラグーン!」
「ガアアアア!」
ドラグーンと呼ばれたモンスターは、対峙する少年に向かって咆哮する。少年は自信に満ちた笑みを浮かべると、叫びながら地を蹴るように走り出した。
「らああああ!」
「ガアアアア!」
一人と一匹がぶつかり合い、数十分の激闘の末に幾つものポリゴンの欠片が宙を舞ったという。
ドラグーンオンライン。人類の夢であるVRMMORPGの記念すべき第一作品として発売されたゲーム。プレイヤーは様々な種族と職業を選び、広大な世界で旅をするというオープンワールド形式のゲームで、勿論RPG要素であるステータスやステ振り、スキルも存在する。自由度が高いゲームである。
発売当初はとてつもない人気を誇ったが、いざやってみると「チュートリアルをクリアした後の支給アイテムが受け取れない、謎の異次元判定、ちょっとした段差で落下死、モンスターが強すぎる(レベルが同じなのにワンパンされる)、武器が一回振っただけで壊れた、防具が重すぎて動けない」などの不具合ありありであった。
運営は必死に対策を続け、現在はまともなゲームとなっているのだが、それでも尚、ダンジョンと呼ばれる迷宮の奥地に居るボスモンスターの異常さは所々改善されておらず、運営は「仕様です」と言っているが、プレイヤー側からすれば回復役が居なければ戦いにならない為、批判されクソゲー呼ばわりされることとなった。
先程、回復役を出したが、ドラグーンオンラインには当然パーティーというものがあり、最大人数8人で編成することが出来る。また、同じ目的や同じプレイスタイルのプレイヤーの集まる建物をギルドと言う。ギルドにはそれぞれ名前があり、ギルドを設立したプレイヤーはギルドマスターとなる。
「よっしゃー!」
そんな数あるギルドの一つに少年の喜びの声が木霊した。
「ここまで頑張ってきて良かったぜ! 今回は本当に駄目だと思った」
喜びをさらけ出す黒髪、黒目の少年。彼のプレイヤー名はユウト。ギルド『極楽』のギルドマスターであり、ドラグーンオンラインでは有名人でもある。
「単騎でドラグーン撃破とか……驚きを通り越して呆れるわ」
「もっと褒めてもいいんだぜラティス」
「褒めてねぇよ」
「凄いよユウト君!」
「だろ? 五ヶ月も掛かったんだ。結構辛かったぜ」
ギルド『極楽』のメンバーであるラティスとミユと話をしながら、ユウトは自身の設立したギルドでくつろぐ。
「さってと、やること無くなったなぁ」
ユウトと火山の奥地で激闘を繰り広げていたドラグーンは、ドラグーンオンラインのラスボス的存在であった。ダンジョンのボスモンスターの異常さを優に超えたドラグーンは、クソゲーをクソゲーたらしめるモンスターであり、月一しかその姿を現さないこともあって運営には膨大な量のメールが届くこととなった。
メールの主な内容は「強すぎる」ということ。ドラグーンはドラグーンオンラインを極めた廃人がパーティー8人で戦っても勝てるかどうか分からないのである。故に、ユウトは最終目標としてソロで撃破する事にした。そして今日達成してしまったのだ。
さて、ここまでドラグーンについて触れてきたが、気づいただろうか? ユウトの異常さを。ユウトが何故、ドラグーンオンラインにて有名人なのか。理由はユウトの異常さによるものである。
ユウトが設立したギルド『極楽』は決して大きくはない少人数で形成されたギルド。ユウトとリア友だけしか所属してないのだが、ギルド対抗戦と呼ばれる特別エリアに配置されたボスモンスターを多く倒したギルドが優勝し、報酬を貰える月一のイベントにて必ずギルド『極楽』は優勝しているのである。
優勝したギルドの名前は全てのプレイヤーに知られ、ギルドメンバーの誰が一番ボスモンスターを倒したのかが表示される。その表示に載る為にプレイヤーはせっせとボスモンスターを狩るのだ。
気になるイベント期間は一週間。廃人であっても倒すのには限界があり、多く倒せたとしても2桁。理由としては被弾すればワンパンされるような難易度であるため。その中でユウトの記録は驚愕の4桁。
これには運営も唖然とした。「チート使ってるんじゃね?」と、運営は監視システムを使いユウトの戦闘を監視したのだがまたもや驚愕。
チートなんて使ってなかったのである。ユウトはただ避けて、ただ攻撃していただけ。その攻撃も破格であり、ボスモンスターがワンパンされているのだ。運営は「これ無双してね? これ広告に使えばおもしろそうじゃね?」なんてことを思い。広告に使っていいかとユウトに連絡する程である。
ユウトは快く承諾し、ドラグーンオンラインの広告に映ることになり、一躍有名人となった。元々、イベントで有り得ない成績を叩き出している時点で軽く有名人なのだが。
有名人になってからも、ドラグーンオンラインを続けててはいたが、目標という目標を失ったユウトは謎の喪失感を感じていた。
「皆のステもスキルも全部極めたし、ドラグーンは撃破したし、マジでやることねぇな」
あとやることとすれば、ドラグーンオンラインの運営が不定期で配信するドラグーンラジオの出演。ドラグーンオンラインの有名人や、エリアを破壊するなどのキチガイ行為を行うプレイヤーを特別エリアに招き入れ、ドラグーンオンラインについて語り合う企画である。広告に映るユウトも当然招かれる。
「でも、話しても理解してもらえないんだよなぁ」
攻撃パターン、予備動作、攻撃範囲。全てを覚えればどんなモンスターでも撃破出来る。そうラジオに招かれる事に伝えているのだが誰も理解してくれない。
「普通理解できねぇから。廃人め」
「ひでぇなラティス」
「ひでぇなって。お前自分の異常さ理解してんのか? 異次元判定を回避すんのお前ぐらいだぞ?」
「異次元判定にも判定が無い隙間があって、そこにスキル〈絶対回避〉で潜り込めば回避出来る」
「その火力もおかしい」
「俺の防具は被ダメが3倍になるかわりに攻撃が5倍になる特注品だからな。そこに攻撃が2倍になるスキル〈明鏡止水〉を使ってHPを1にして、スキル〈不屈の闘志〉と〈底力〉が自動発動するから攻撃が15倍だから、150倍だな」
「頭のネジ外れてるな」
「誰でも出来るぞ? 戦う条件は攻撃に当たらないだけだし」
「それが出来ないから言ってんだよなぁ」
溜め息をつくラティスを尻目にユウトはウィンドを操作し、ログアウトボタンを表示させる。
「取り敢えず、俺は落ちるわ。ラティス、ミユ、お疲れ様」
「おう、お疲れ」
「お疲れ様ですユウト君!」
「んじゃ、また学校で」
ログアウトボタンを押し、目の前が真っ暗になると共に、柔らかい物が体を包む感覚がユウトに伝えられる。ユウトは閉じていた目を開け、ヘッドセットを取った。
「宿題やんねぇとな」
ユウト……本名は神崎悠人と言い、ごく一般な高校生。黒目黒髪、少し中性的な顔立ちで太ってる訳でも痩せている訳でも無い普通の体格。何処でも居そうな高校生でーー
「やっぱりいいや。やる気でねぇ」
ーー成績は良くない方である。
「ん? メール?」
ベッドから起き上がり、自身の横に置いてあるスマホを開く。メールはドラグーンオンラインの運営から。内容は「19:00からドラグーンラジオを配信致します。そこで、ドラグーンを討伐したユウト様にお越しいただきたいとお願い申し上げます」とのこと。
特に予定も無い悠人は「喜んで」と、返信をした後スマホで時間を確認する。
「午後5時55分。風呂と飯は間に合うか」
悠人は風呂と飯を済ませる為に部屋から出るのだった。
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