超絶美少女の彼氏(凡人)は尽くされているが気苦労が絶えない

卿猫

突然の両親

 今、腕の中には飛び込んできた白雪さんがいる。ハグをすると一日のストレスが三分の一が解消すると言われているが、今、白雪さんをハグしているだけで、今まで溜め込んできたストレス、いや明日、明後日くらいまでに降りかかってくるであろうストレスまでもが解消した気がする。

 ガチャリ

 そんな幸せを噛み締めている俺の隣にあるドアがそんな音を立てて開く。そしてそのドアを開けたであろうダンディな男の人と目が合う。おそらく白雪さんのお父さんだろう。
 そこまで考えると、ふと今の状況を思い出す。白雪さんも思い出したようで俺の顔をしてくる。そう、俺たちはおそらく白雪さんのお父さんであろう人の前で熱い抱擁をしているのだ。

 そっと白雪さんが俺から離れていく。どうやら、なかったことにするらしい。なら俺もそれに乗るしかあるまい。俺は真面目な顔をしてドアの方を向いた。

「ただいま、お父さん」

「あ、あぁ、お帰りなさい、響」

 ちょっと驚いたような声で対応するしているのでどうやら白雪さんのお父さんで間違い無いようだ。そして白雪さんのお父さんと目が合う。

「初めまして、白雪さんとお付き合いをさせていただいている、巻島隆太と申します」

「どうも、響の父です。娘から連絡をもらった時はびっくりしたけど、真面目そうな人でよかったよ。ささっ、こんなところじゃなんだから中に入って」

「はい、ありがとうございます!」

 そう言って俺は白雪さんと一緒に部屋に入った。どうやら熱い抱擁はなかったことにできたらしい。



 中に入ると白雪さん似の美人がいた。まあ、白雪さんの母親なのだから似ているのは当たり前だが。

「初めまして、巻島隆太と申します」

「あらあら、初めて響が連れてくる子だからどんな子かと思えば、意外としっかりしているじゃない」

 えぇ!白雪さんって付き合うの初めてだったの⁉︎やばい、白雪さんの初彼氏になれたことで自然と笑みが…

「さあ、そんなところで立っていないで早く座りなさい」

 そんな表情が顔に出ていたのかニヤニヤしながら席を勧めてくる白雪さんのお母さん。
 うーむ、なかなかに恥ずかしい。

「あ、ありがとうございます。白雪さんのお母さん」

 俺の言葉を聞くとまだそのにまにまとした笑みを顔に浮かべながら白雪さんのお母さんは言った。

「あらあら、そんな他人行儀しなくてもいいのに。お義父さん、お義母さんでいいのよ」

「えっ!」

「あ、ありがとうございます。お義母さん」

 勝手にお義父さん呼びでいいと言われたお義父さんがびっくりしているがありがたく呼ばせてもらおう。
 こうしてお義父さん、お義母さん呼びの許可をもらったところで白雪さんから両親への俺の紹介が始まった。



 そんなこんなでもう一時間ほど話し合っている。内容は俺と白雪さんの馴れ初めや好きなところなど色々聞かれたが、付き合って一日目なのでうまく答えられたかわからない。
 だか、俺のいいところで白雪さんが優しいだのかっこいいだの褒めてくれた時は生きててよかった!と思えた。

 そんなこんなで話も終盤に差し掛かる。

「今日はありがとうございました」

「いやいやこちらも隆太くんがどんな人か知れてよかったよ。ああ、母さん、隆太くんを玄関まで送ってあげて」

「わかったわ。じゃあ行きましょうか、隆太くん」

 立ち上がったお義母さんにつられて俺も帰り支度をする。
 そして俺が席を立った後、こんな会話が聞こえてきた。

「ところで響、光貴くんとは最近どうなんだい?」

「光貴くんですか?まあ、今まで通りですけど…あっ、最近、彼に彼女ができたみたいですよ」

 ん、光貴?確か最初の方に白雪さんの彼氏と噂になった白雪さんの幼馴染だったような…
 そんな彼はその整った顔と運動神経抜群なことが相まって今では彼女を取っ替え引っ替え状態だ。
 で、でも俺には白雪さんがいるから全然羨ましくなんかないんだからね!

「あぁ…そうなのか」

 するとお義父さんは少し驚いたような表情を見せる。
 もしかしてお義父さんも入学当初の学校によくいたその幼馴染と白雪さんが付き合ってたと勘違いしている勢だったのか。俺も最初の方はそう思ってたし…
 まっ、そんなことどうでもいっか!
 そう思いながら俺はお義母さんに連れられて玄関へと向かうのだった。



「ああ…疲れた…」

 俺は家に着くと晩飯も食べず、風呂にも入らずベットに直行した。

 今日は色々ありすぎたと思う。昼に白雪さんに告白され、帰りは他の生徒の注目の的、そしてその後の白雪さんの両親へのご挨拶。そんなこと昨日までなら全く想像もつかなかったようなことだ。
 確かに精神的な疲労はすごい。だがそんなことも楽しいと思えている自分がいる。

 そんなことを考えながら睡魔に襲われ、だんだんと眠りに落ちていくのだった。

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