君を失った世界
What color do you like?
──あ、雨だ
新聞では晴れと言っていたのに……。そろそろ梅雨時期なのだろうか。
雨は何色?
虹は何色?
晴天は何色?
世界は……何色?
雨の日は色々と嫌な事を考えてしまう。色は感じずともこのジメジメした、悲しい感じが伝染るからだろうか?
こんな日は彼に会いたい。少しだけでも話してこの気分を晴らしいたい。青々とした晴天の様に。
私のココロは真っ黒かな。灰色かな。どちらにせよ曇っているだろう。
しばらく歩いて気づいたが、彼の病室を私は聞いたことがない。確かあっちらへんへ……のような曖昧な記憶しかなく、自分がいやになった。
「いいや。また見つかるかもしれない。ぶらぶら病院散歩をしとこう。」
改めて気づいたことは、この病院には色々な人がいること。まあ、都心の大きな病院だから、というのもあるのだろうけれど。色々な表情の人がいる。
親族関係か。悲しい顔をしている。
病気が治ったのか。嬉しそうな顔をしている。
赤ちゃんがいるのか。嬉しそうな顔もいれば不安そうな顔もいる。
何を思っているのか。無表情の人もいる。
世界には様々な人がいる。
色がわからなくたって分かる。
そんなことは。
『そんなんで、彼を助けられるの?そんな、色も分からない奴が、あんないい人の、そばにいられるとでもと思ってんの?』
「知らないよ……」
『あーあ、最低ね。ただでさえ酷いレッテルが貼られてるのにそれを取る努力さえ、思考さえ面倒としてる。最低中の最低ね。』
「うるさい……」
『なにぃ?聞こえなーい。もっと大きな声で言わなきゃ。ね?クズ?』
「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!!」
はっ、と顔を上げる。時間が止まったかのように人々が足を止める。
「ごめんなさいっ……」
体を曲げ、謝罪をし、早足で病室へと帰る。
ああ、窓際にいる人がブツブツ言いながら爪を噛みこちらを見ている。
ああ、新しい命を守りながらこちらを見ている。殺人鬼じゃない。その子の命なんて盗みやしないわ。
ああ、喜びの顔が通り魔を見たかのような顔に変わる。ごめんなさい。ぶち壊しね。
どうして私はこうダメな人なのだろう。
なにか悪いことを私がした?
誰かの命を奪った?
──奪ったじゃない。自分の命と引換に。
もう……止めて……私が望んだ訳じゃない……
──望んでない?本当に?ちっとも?
知らない……もう……嫌だ……
──なにが?自分だけ生きていること?
…………
──それとも、悲劇のヒロインぶっているだけ?
「やめてっ!!!」
もう嫌だ。こんな自分もだけれど闇の部分も嫌いだ……こんな自分なんて……
思うよりも身体が先に動いていたのだろう。気づいたときはもう廊下にいた。
もう、なるままに。
別にいいさ。自分はいなくたって。
最初は叔父も叔母も、いとこも、友達も、近所の人も私のことを心配してお見舞いに来てくれた。
『私の病状はどうでもよくて、お見舞いに来ている、エライ、という感情を巻き起こすためだけに。』
しばらくして部屋に入ってくる人は少なくなった。滞在する時間も同時に少なくなった。来て花を置くだけ。
『しばらくして、来るのがめんどくさくなって、エライなんて言ってくれなくなってきて。行っても仕方がない、なんて感情が出てきた。』
──飽きられたのよ。ただの道具なのよ。
そうだ。私は道具なのだ。使えなくなったら捨ててしまえばいい。
傍観者は便利なものだ。
是非ともそちら側につきたいものだ。
ふと気がつけば屋上にいた。
「雨、あがってたんだ。」
さっきまで降っていた雨はすっかりやんで、光の雨が降っていた。
「私を歓迎してるみたい。」
つる……と頬を伝うなにかを感じた。
「なんで……なんで……」
それはきっと、伝ってきたモノに対しての言葉だったのだろう。
「どうして……どうしてなのよ……」
しだいに、自分の現状に訴えかけている気がしてきた。
「なにか悪いこと……した?どうして私がこんな……事を考えなきゃいけないの……」
しばらく泣いていた。
だからだろうか。後ろから来る人にも気がつかず、泣いていた。
やっと気づいたのは頭に暖かいものが乗っかり、私の頭を撫でたころ。
もうこの手だけで分かる。彼の暖かさが伝わってくる。
「ありがとう……ございます。」
「大丈夫さ。誰でも泣きたい時はある。」
なぜこんなに彼は優しいのだろうか。
なにかあったのか……。
そんなことは他人には分からない。
だけど寄り添うことはできるかもしれない。
私は……彼のココロがほしい……
なにも……ない私だからこそ……彼のことが欲しい。
ただ、そばにいてくれるだけでいい。
それだけで私の心は……きっと救われる。
そう想った。光り輝く星の下で。
…………To be continued.
新聞では晴れと言っていたのに……。そろそろ梅雨時期なのだろうか。
雨は何色?
虹は何色?
晴天は何色?
世界は……何色?
雨の日は色々と嫌な事を考えてしまう。色は感じずともこのジメジメした、悲しい感じが伝染るからだろうか?
こんな日は彼に会いたい。少しだけでも話してこの気分を晴らしいたい。青々とした晴天の様に。
私のココロは真っ黒かな。灰色かな。どちらにせよ曇っているだろう。
しばらく歩いて気づいたが、彼の病室を私は聞いたことがない。確かあっちらへんへ……のような曖昧な記憶しかなく、自分がいやになった。
「いいや。また見つかるかもしれない。ぶらぶら病院散歩をしとこう。」
改めて気づいたことは、この病院には色々な人がいること。まあ、都心の大きな病院だから、というのもあるのだろうけれど。色々な表情の人がいる。
親族関係か。悲しい顔をしている。
病気が治ったのか。嬉しそうな顔をしている。
赤ちゃんがいるのか。嬉しそうな顔もいれば不安そうな顔もいる。
何を思っているのか。無表情の人もいる。
世界には様々な人がいる。
色がわからなくたって分かる。
そんなことは。
『そんなんで、彼を助けられるの?そんな、色も分からない奴が、あんないい人の、そばにいられるとでもと思ってんの?』
「知らないよ……」
『あーあ、最低ね。ただでさえ酷いレッテルが貼られてるのにそれを取る努力さえ、思考さえ面倒としてる。最低中の最低ね。』
「うるさい……」
『なにぃ?聞こえなーい。もっと大きな声で言わなきゃ。ね?クズ?』
「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!!」
はっ、と顔を上げる。時間が止まったかのように人々が足を止める。
「ごめんなさいっ……」
体を曲げ、謝罪をし、早足で病室へと帰る。
ああ、窓際にいる人がブツブツ言いながら爪を噛みこちらを見ている。
ああ、新しい命を守りながらこちらを見ている。殺人鬼じゃない。その子の命なんて盗みやしないわ。
ああ、喜びの顔が通り魔を見たかのような顔に変わる。ごめんなさい。ぶち壊しね。
どうして私はこうダメな人なのだろう。
なにか悪いことを私がした?
誰かの命を奪った?
──奪ったじゃない。自分の命と引換に。
もう……止めて……私が望んだ訳じゃない……
──望んでない?本当に?ちっとも?
知らない……もう……嫌だ……
──なにが?自分だけ生きていること?
…………
──それとも、悲劇のヒロインぶっているだけ?
「やめてっ!!!」
もう嫌だ。こんな自分もだけれど闇の部分も嫌いだ……こんな自分なんて……
思うよりも身体が先に動いていたのだろう。気づいたときはもう廊下にいた。
もう、なるままに。
別にいいさ。自分はいなくたって。
最初は叔父も叔母も、いとこも、友達も、近所の人も私のことを心配してお見舞いに来てくれた。
『私の病状はどうでもよくて、お見舞いに来ている、エライ、という感情を巻き起こすためだけに。』
しばらくして部屋に入ってくる人は少なくなった。滞在する時間も同時に少なくなった。来て花を置くだけ。
『しばらくして、来るのがめんどくさくなって、エライなんて言ってくれなくなってきて。行っても仕方がない、なんて感情が出てきた。』
──飽きられたのよ。ただの道具なのよ。
そうだ。私は道具なのだ。使えなくなったら捨ててしまえばいい。
傍観者は便利なものだ。
是非ともそちら側につきたいものだ。
ふと気がつけば屋上にいた。
「雨、あがってたんだ。」
さっきまで降っていた雨はすっかりやんで、光の雨が降っていた。
「私を歓迎してるみたい。」
つる……と頬を伝うなにかを感じた。
「なんで……なんで……」
それはきっと、伝ってきたモノに対しての言葉だったのだろう。
「どうして……どうしてなのよ……」
しだいに、自分の現状に訴えかけている気がしてきた。
「なにか悪いこと……した?どうして私がこんな……事を考えなきゃいけないの……」
しばらく泣いていた。
だからだろうか。後ろから来る人にも気がつかず、泣いていた。
やっと気づいたのは頭に暖かいものが乗っかり、私の頭を撫でたころ。
もうこの手だけで分かる。彼の暖かさが伝わってくる。
「ありがとう……ございます。」
「大丈夫さ。誰でも泣きたい時はある。」
なぜこんなに彼は優しいのだろうか。
なにかあったのか……。
そんなことは他人には分からない。
だけど寄り添うことはできるかもしれない。
私は……彼のココロがほしい……
なにも……ない私だからこそ……彼のことが欲しい。
ただ、そばにいてくれるだけでいい。
それだけで私の心は……きっと救われる。
そう想った。光り輝く星の下で。
…………To be continued.
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