部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

私怒るよ



今日は2話投稿します








「まさかここまで質問責めに合うなんて……」

「だ、大丈夫ななみん……?」

同窓会が進んでいき、みんな思い思いの会話をしている中で
私は同窓会の会場の隅っこでぐったりしていた。
なんせ私に彼氏が出来たと分かった途端クラスメイト達から
質問責めに合い、今やっと解放されたのだから。

「というかみんな何よ……私に彼氏が出来てそんなに
おかしいの? というか途中から私よりもセンパイに注目が
集まっていた気がするよ?」

センパイとの出逢いからどっちが告白したとかありきたりな
質問から中には

“センパイの料理って美味しいの?”

“同棲はいつからですか?”

なんていう質問をしてくる人もいた。

「私もまさかここまでとは思わなかったよ……
でもななみんの彼氏だよ? どんな人か気になるよ」

「そんなにかな……」

「だって“ななみん”の彼氏だからね」

「……何故私の名前が強調されるのさ」

「どんなに告白されても殆ど興味が無かったななみんが
まさかあそこまで彼氏ラブになったら驚くよ」

「……ですよね〜」

「でもみんなから祝われていたじゃん〜」

「まぁ嬉しいけど……」

質問してきた人達もみんな口々におめでとうと言ってきた。
そんな事を言われて嬉しいと思う反面、若干恥ずかしいと
思っていた。

「みんな、ななみんが好きなんだよ〜
ーーまぁでも1人は違うみたいだけど……」

「1人?」

はて、そんな人がいるのだろうかと思っていると……

「ーーやっと見つけたよ七海さん」

「げっ……」

そこにいたのは明里ちゃんが成人式で言っていた
私にしつこかった同じクラスメイトの男子がいた。





「探したんだよ七海さん」

と満面の笑みで言ってくるのは元クラスメイト男子だった。
頭は学年の中でもトップクラスに頭がいいのだが
その事を鼻にかけて自分より学力が下の人間をとことん
見下す性格であり、あまり好かれていなかった。

「い、いやぁお久しぶりだね〜」

私は若干ぎこちない笑みをしながら返事をした。

「確か七海さんは〇〇大学だよね?
大学生活はどうだい?」

「う、うん……楽しいよ」

「そうかい。まぁ七海さんならどこでも大丈夫だろうね。
ーーまぁ僕はそんな低いランクの大学に行く人間とは
触れ合いたくないからね〜」

……うわぁ、何言っているのかなこの人は。
この男子は事あるごとに私にしつこかった。
明里ちゃん曰く“その男子に気に入られた”らしい。
……正直、私自身あまりこういう人を好まない。

「……確か貴方は呼んでいなかったはずだよね?」

と明里ちゃんが不思議そうに尋ねた。

「嫌だな〜僕だって同じ卒業生だよ?
それに七海さんがいるなら僕も行くさ
ーーそれに」

と私の方を見て

「僕は君が好きだからね」

「……ヒッ」

今、身体中の悪寒が走った。
寒さではなく、彼が言った発言に対してだ。
センパイに言われたら嬉しさで飛び跳ねてしまいそうな
言葉も言う人が違えばこんなに変わるのか。

「七海さん、君はこんなところにいてはいけない。
君は頭がいいんだからもっと別の人達と付き合わないと」

「……あいにく私は今君が言った低いランクの大学に
いるはずだから違うはずだよね」

私が嫌味を込めて断ろうとすると

「七海さんはいいんだよ。君は一浪こそしてしまったけど
君はこんな人達と一緒にいていい人じゃない」

……一浪は余計だ。
一浪したけどそのおかげでセンパイと会えたし全部が
悪い事ではないと思っている。
というか何故彼は人の交友関係にまで口出ししてくるのか?

「私が誰といても別にいいと思うんだよね」

「ダメだよ。君には僕がふさわしい。
いや僕以上に相応しい男性はいないだろうね」

……思い出した。
彼、人の話を聞かないんだった。
聞かないくせに変に頭がいいから対応に困る。
いい加減埒があかないと思ったのか明里ちゃんが私の前に
庇うように出てきて

「あのね……もうななみんは別の人と付き合っているの」

「おいおい嘘はやめなよ。七海さんが僕以外と付き合う訳
ないだろう? 違うだろ七海さん?」

「私は部活のセンパイと付き合っているよ」

私がそのように言うと彼はさっきまでの笑顔が青ざめていき
徐々に怯えの表情に変わっていった。

「そ、そんな……う、嘘だよね?
七海さんが嘘をつくはずが……」

「本当だよ」

「なんでだ!! なんでそんな低ランクの大学の人間と
七海さんが付き合っているんだ!?
僕こそが七海さんに相応しいのに!!」

「その人は貴方みたいに学歴で人をみない。
そもそも人を下に見ないし、私の話を聞いてくれて
1番理解してくれる」

センパイは私の事を1番に考えてくれる。

ーー楽しい時

ーー嬉しい時

ーー辛い時

ーー悲しい時

どんな時だって私の側にいてくれて話を聞いてくれた。

「僕だって七海さんの話を聞いているだろ!!」

「違うよ。
貴方は人の話に耳を傾けているようで何も聞いていない」

「そんな大学の人間の何がいいんだ?
所詮は低ランクの人間だろーー」

パチン

「な、七海さん……?」

「あ、あのななみんがビンタ……をした?」

私は思わず彼の頬に平手打ちをした。
その様子を見て回りの人達が騒めきだした。

「私の好きな人を馬鹿にしないで。
それ以上言ったら私本気で怒るよ」

私自身、ここまで他人に怒った事が無かった。


ーー思わず話の途中で平手打ちをしてしまうぐらい。

それぐらいセンパイを馬鹿にされた事が嫌だった。

「ねぇ明里ちゃん」

「なに?」

「私帰るね」

「う、うん……」

と私は親友に一言告げると荷物をまとめて会場を出た。


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