部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

出発前

今回から七海の成人式に入っていきます。

そのため七海視点で話が進んでいきます。





成人式当日
遂に来た一生に一度の晴れ舞台。
今日は珍しく朝早くからお母さんに起されて着付けや髪型の
セットをしていた。
……何故か私のお母さんはこれら一連の動作を慣れている
手つきでテキパキとこなしていた。

お母さん曰く
“これぐらい出来て当たり前よ”
との事だけど普通こんなに出来る人はそれを仕事をしている
人以外は難しいと思う。
なんて思いながらも着付けや髪型のセットを終えてあとは
出発するだけとなった。
まぁ出発といっても家からパパの運転する車で成人式会場の近くまで送ってもらうのだけど。
(なおその時私の幼馴染である“明里ちゃん”こと
有川明里も一緒に行く事になっている)

「七海、忘れ物ない?」

「うん、大丈夫だよ!! さっき確認したから」

「だといいのだけど……いつも拓海君がいるから安心出来る
のにいないと心配なのよね……」

「ちょっとお母さん!? 普通娘にそれ言う!?」

まぁでも流石に実の娘を信頼しない親じゃない……

「あら私の中では拓海君の方が信頼高いわよ」

……朝からいきなり泣きそう。
というか普通娘より信頼されている彼氏って何よ?
まぁセンパイだから納得してしまう私がいる。
なんせあの完璧超人みたいな人なのだから。
……でも少し抜けているところが七海ポイント高めですね。

「でも残念ね〜」

とお母さんは言ってきた。

「えっ、何が?」

「ほら貴方の大好きな拓海君に晴れ着を見せれないでしょ」

「それは残念だよ〜」

本当はセンパイに来てもらいたかったのだけど流石に名古屋
まで呼ぶのは気が引けたので少し駄々をこねた後渋々
引き下がった。
そもそも名古屋という距離の問題以外にもどうやら当日
用事があるらしくどちらにせい行けないみたいだった。


「今日の貴方はいつもより綺麗なのにね」

「でしょ〜 ? いや〜元から私が持っている可愛さが
全面に出ているでしょ〜」

「それをセットしたのは誰かしらね、七海?」

「本当に感謝していますお母様」

私はいつも以上に頭を深く下げた。
でもお母さんが言うのも納得出来た。
玄関の鏡で改めて自分の姿を見るとまるで別人を見ている
様な気がするぐらい綺麗に写っている。

(今の私をみたらセンパイはなんて褒めてくれるかな……)

そんな自分の姿を見て尚更私の1番好きな人に見て
もらいたかったとちょっと落ち込んでしまった。

「ちょっと七海」

「えっ、何?」

「顔」

「顔?」

「朝からそんな暗い顔をしないの。
一生に一度の晴れ舞台なんだから笑顔よ笑顔」

「うん分かっているけど……」

頭では分かっているものもセンパイに見てもらえないって
一度考えてしまうとどうしても暗い気分になってしまう。
なんて考えているとお母さんは

「貴方の長所は明るい性格と笑顔しかないんだから
その長所を存分に使ったら?」

「朝から娘に容赦ないですね……」

というか“しか”って酷くない?
私にはもっと長所はあるはずだよ?
……多分。


「貴方がそんな暗い顔をしていると拓海君も心配に
なっちゃうわよ?」

「……心配なら来て欲しいよ」

「こら、ワガママ言わないの」

「はぁ〜い……はぁ……」

と頭では分かっているつもりだけど溜め息をついてしまう。

「ちなみに七海、今日の予定は?」

「今日は〜成人式でて〜明里ちゃんと一緒にご飯食べて〜
その後、中学の同窓会に少し出るかんじ」

「あら一応、同窓会に出るのね。
ーーてっきり成人式終わったら真っ先に新幹線乗って
拓海君の元に戻るのかと思っていたわ」

「そりゃ真っ先に帰りたいけど明里ちゃんがどうしても来て
っていうから少しだけ出るよ」


「分かったわ。
まぁ楽しんでらっしゃい
ーーあなた〜? 準備いいですか?」

とお母さんはパパがいるリビングの方に声をかけた。

「ま、待ってくれ!! まだカメラのメモリーカードの準備が
出来ていないんだ!! あ、あと5分待ってくれ!!
5枚で足りるか? いや保険で7枚持っていくか……」

……一体どれぐらい私の写真を撮るつもりなのだろうか?
そう言えば私の七五三の時も沢山カメラのシャッターを
切っていた様な記憶がある。

「そういうのは前日に準備しておいたら。ほら早くして」

「わ、分かった!! 今行く!!」

ピンポーン

「有川で〜す」

「ほらあなた、あかりちゃん来たわよ。
ーー早くしなさい」

「は、はい!!」

……やっぱりこの家での1番の権力者はお母さんだろうと
改めて思った。






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