部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

成人式のこと






近くのベンチで休憩し、それなりに体調を整えた僕は後輩達と一緒に来た道を戻っていた。

「センパイ、本当に大丈夫ですか?」

「うん、もう大丈夫かな」

まぁ万全とは言えないにしてもある程度は戻ってきたし、
これ以上僕のせいでみんなの時間を奪う訳にはいかなかった。

「私はもう少し先輩と平塚の膝枕を見たかったですね。
なんなら私にも平塚の膝枕をーー」

「やめないか桜」

コンっ

「あいたっ」

と織田がいつものように与謝野さんに軽くチョップをかまし彼女を止めていた。
……最早恒例になってきたこの2人のくだり。
というか与謝野さんはいい加減懲りないのだろうか。

「与謝野先輩、私の膝はセンパイ専用なのでダメです〜」

「……僕専用ってなんだよ七海」

まぁ僕以外の奴がそんな事していたら全力で消しにいくが。

「国木田先輩専用か……なら」

と何かを思いついたのか僕の方を見てきた。

「ん?」

「国木田先輩!! 私にも平塚の柔らかそうな膝をーー」

ギシギシ

「さ〜く〜ら〜?」

これも最早恒例の織田が与謝野さんの頭を掴んで全力で握ってまた止めていた。

「痛い!! 痛い!! 痛いって!!冗談冗談だよ!!」

「桜の美女絡みの事に関しては冗談か不明だからな……
ーーなんか俺の彼女がすみません、先輩」

なんて言いながらそれでも与謝野さんを離さずにギシギシと握り続けている。

「いや僕は何も被害被ってないからいいよ。
ま、まぁそろそろ与謝野さん離してあげたら……?」

「そうですね。ほら桜、先輩に感謝しろよ」

「あ、ありがとう……ございます……痛い……」

さっきまで織田に握られていた箇所をさすりながら僕にそう言ってくる与謝野さん。
毎回こういう事になるって分かっているはずなのに何故学習しないのだろうか?
……そういう面では七海と与謝野さんは似ている。

「そ、そう言えば七海と国木田先輩以外の先輩は確か同い年
ですよね?」

と凛子さんが思い出したかの様に言ってきた。

「そうだよ〜凛子」

「言われてみればそうだな」

「うん、そうだね〜でもそれがどうしたの凛子さん?」

「いや特にって訳じゃ無いんですけど……皆さん、成人式が近いですよね……?」

「「あっ」」

と全員が声を合わしたかの様に同じタイミングだった。

「忘れていたんかい……」

まぁそういう僕もすっかり忘れていたのだが。
言われてみれば七海と織田達は同い年であった。
七海だけ浪人しているから学年こそ1つ下だが、歳は全員同じ20歳である。

「まぁ成人式って言ってもな俺は地元が都内だからあまり何も考えなくていいからな。服装もスーツだし」

「私も吉晴と同じで都内だから晴れ着の準備以外、特に構える事はないね〜
ーー吉晴と地区違うのが残念だけど」

「……それに関しては仕方ないだろ」

「今から住所変えようかな……」

「間に合わないからやめろ」

と織田と与謝野さんの都内暮らしの2人は答えていた。
確かに成人式の会場が近いってなるとそこまで準備しなくていいだろう。
……だが後の2人は違う様みたいで


「くそっ……地元に戻るのが面倒!!」

「センパイと離れ離れ嫌だ〜!!」

なんてそれぞれ違う文句を言っているのは成人式の為に一度帰省する森と七海である。
森は浜松、七海は名古屋で成人式を行う。
……というか理由が2人揃って違うし。

「森は分かるけど、七海の理由は一体なんなのさ」

「だって2日間センパイと会えないんですよ!?
私に死ねと言うんですか!? そうなんですか!?」

「そんなの大袈裟だよ七海……」

「そうよ、国木田先輩の言う通りよ。
たった2日会えないだけでしょ?」

「じゃあ逆に聞くけど凛子」

「……嫌な予感しかしないけどどうぞ」

「凛子だって森先輩と2日間会えなかったらどう?
悲しいよね? 寂しいよね?」

「こらこら七海、凛子さんにそんな事聞くんじゃーー」

まぁ凛子さんなら空気読んでくれるはず……

「寂しいわね。珍しく七海と意見合うわね」

「凛子さん〜〜!?」

僕の予想は見事に裏切られた。
そう言えば凛子さんってあまり嘘つけないんだよね……。

「あっ、す、すみません国木田先輩!!
つい反射的に答えてしまって……」

「ほら〜センパイ。凛子だって彼氏の森センパイと離れ離れが辛いんですよ? 大勢は私にアリですよっ!!」

「6人中2人で何を言っているんだい……」

「細かい事を気にしていたらダメですよ〜
もっとセンパイは肩の力を抜いた方がいいですよ〜」

「……いつも誰かさん達のせいで肩の力抜けないんだけど。
ーーねぇ今目線を逸らした3人」

「すんません〜」

と森

「以後努力しま〜す」

と与謝野さん

「可愛いから許してっ!!」

……最後のは言わなくても分かるよね?

「……君ら改善するつもりないだろ」

とりあえず今年も僕の胃はキリキリ痛む事は確定した。
まぁでもそんな日常もいいかなと思う僕がいた。
今年も色々と問題が起きて胃を痛めながら取り組むのだろうけど不思議と彼らのだったら許してしまいそうだった。

ーーさて今年1年は何が起きるのやら

なんて思いながら全員であるのだった。






次回から七海の成人式編に入っていきます。
一応5、6話完結を目指しています。

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