部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

チキン

「というか凛子さん」
「はい、どうしましたか?」
「何で着物なの?」
「え、えっとこれはですね……」
「あっ、分かった〜森先輩の趣味だよね!!」
と七海が合点のいった様な反応をした。
「ち、ちょっと七海!? そういうのを言わないでも
いいじゃないの!!」
凛子さんの反応を見ているとどうやら図星の様だ。
「……うわぁ何してるんだよ森」
「……彼女に自分の趣味押し付けるなんて最低」
「森……お前は……まさかそこまでか……」
と僕と同期から白い目で見られる森。
「確かに事実ですがここまで言われますか俺?」
「事実かよ……」
「事実なんだ……」
「同期であっても引くわ」
「……森先輩、流石にないかなと」
「先輩方、この場合の正しい答え方を教えてください……」
「ゆ、結城先輩をそこまで責めないであげてください!!
ほ、ほら私の家ってここから近いですから……着物を着ても
あまり苦にならない距離ですから」
そう言えば凛子さんの家はこの神社からは僕らの中で一番
近い距離にあった記憶がある。
確かに着物を着ての長距離の移動は疲れるだろう。
「凛子さんが言うならまぁいいか」
「……先輩、今更ですけど俺と凛子で待遇に差が
ありませんかね?」
「何を言っているの? 逆に差が出来ない方がおかしい」
「ですよね……流石女性に甘い国木田せーー」
「何か言ったかい森?」
「……理不尽し過ぎて泣きそうです、俺」


「ねぇ吉晴」
織田の隣にいた与謝野さんが不意に言ってきた。
「なんだ桜?」
「私の着物姿見たい?」
「いきなり何を言いだすんだ」
「ほら普通、男なら彼女の着物姿見たいもんじゃない?」
「……所々桜が言う“普通”の範囲を聞きたい」
「もぅ、吉晴も我慢しなくていいんだよ〜
ほら私、家に着物結構な数あるから」
与謝野さんは日頃の言動や行動からは想像し難いがれっきと
したお嬢様なのである。
……何せ都内の高級住宅街の一等地に家があるのだから。
初めて見た時は驚いたもんだ。
「そう言えば与謝野先輩って意外とお嬢様なんですよね」
「……意外は結構傷つくかな凛子ちゃん」
「す、すみません!! 別にそう言う意味で言ったんじゃ
ないんですよ!!」
「そうだ忘れていたわ与謝野ってお嬢様だったんだよな!!
日頃の行動でそんな気が全くしないけどな!!」
「……森は黙れ」
「与謝野さん、扱い雑過ぎませんかね俺」
「森はいいの。可愛い女の子は許す。
ーー凛子ちゃんはいいよ〜あっ、でも今度だきつ」
「はい、やめろ」
と毎度の様に織田に首を掴まれる与謝野さん。
「ちょっと吉晴!! いきなり首を掴まないでよ!!
手が冷たいからビックリしたじゃん!!」
「それに関してはすまないと謝ろう。
ーーだがあのまんまだと凛子さんに危機が及ぶ気が
したからな、止めさせてもらった」
「何よ〜美少女に抱き着いて何が悪い!!」
「開き直るな……というかその行動が桜をお嬢様の雰囲気から
遠ざけているのではないか?」
僕ら全員が思っている事を織田が変わりに言ってくれた。
「ぐっ……反論の余地が無いじゃん……」
「ちなみに美少女に抱き着くのとお嬢様らしくするの
どっちが重要だ?」
流石に織田にさっき言われたのだから後者を選ぶだろ……
「そんなの決まっているじゃん!!
ーー美少女に抱き着く方を選ばない理由があるの!?」
……やっぱり平常運転の与謝野さんだった。
「与謝野さんって静かにしていると本当にお嬢様に見えるのに
自分で台無しにしているよね」
「だって先輩!! 目の前で可愛い子がいるんですよ!!
抱き着かない理由がありますか!!」
「……そんなの僕がやったら捕まるわ」
「センパイ!! 今なら私の隣空いてますよ!!」
と七海は自分の隣を指差してそう言う。
「……隣で何か言っているけど無視するね」
「無視反対〜彼女にもっと構え〜このチキン〜」
「あのチキンで有名な国木田先輩であっても目の前に平塚が
いたら迷わず抱きしめますよね!?」
「TPO考えるわ!! というか君までチキン言うか!?」
「や〜いチキン〜センパイのチキン〜」
「チキン国木田先輩〜や〜い」
と七海と与謝野さんが2人揃って言ってくる。
見慣れた光景だが無性にイライラするんだよな……。
「……俺の彼女がすみません先輩」
そして織田が謝るのまでもが恒例となっている。
「織田は悪く無いよ
ーーあの2人がとても悪いだけ」
さて、2人にどの様な仕返しをしてやろうかと思っていると
「あ、あれ、国木田先輩ってこんな方でしたっけ……」
凛子さんが若干怯えながら言っている。
「まぁ俺らの中じゃ先輩のチキンぶりは有名だぞ〜
何せ付き合う前なんて平塚がいくらアタックしても
手を出さなかったぐらいだかーー」
「なぁ森」
「は、はい!? なんでしょうか!?」
「デットorダイ?」
僕は出来るだけ笑顔で言った。
「まともな選択肢になってないでよねそれって!?
というか俺だけ扱い雑過ぎませんかね絶対!!」

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