部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

いきなりいるのかよ……

今回から国木田の両親編に入っていきます。






七海の実家から帰ってきたその日の昼頃に僕達は下宿先の
アパートに帰ってきた。
「やっと帰ってきましたね!!」
「うんそうだね。でもここからが憂鬱なんだよな……」
「もぅ先輩ったらご両親に会うのがそんなに嫌なんーー」
「嫌以外の何物でもない」
「即答ですね……」
七海が呆れていた。
というか誰があんな個性の塊である両親に会うのを楽しみに
するのか聞いてみたい。
……少なからず僕は嫌だ、というか精神が疲れる。
ぶっちゃけ七海の対処よりも疲れる。
「ま、まぁまだ帰っていきなり会うって事はないんじゃ
ないんですかね……」
「そうだね……そうであって欲しいかな」
流石に帰ってきていきなりあの両親には会いたく無い。
少しは休憩を取ってからせめて会いたい。
そう思いながら僕は家のドアを開けた。
「ただいーー」
「おう!! よく帰ってきたな我が息子よ!!」
「おかえり拓ちゃん」
「……」
パタン、ガチャ。
僕はそのままドアを閉めて鍵をかけた。
「あ、あれセンパイ……?」
「今日は七海の家で過ごそうか」
僕は出来る限り穏やかな表情でそう言った。
今、目の前で起きた事はまるで無かったのように。
「いやでも今……」
「何かいたかい?」
「いやいやでも今ご両親いらっーー」
「幻覚が見えるなんて七海は疲れているんだね。
今日は僕が何か美味しい食事を作ってあげよう」
「いやそう言う訳ではなくてですね……」
ガチャ
「おいおい我が息子よ!! 無視は酷いぞ!!」
「そうよ拓ちゃん、無視はお母さん悲しいわ」
家のドアが開いて中から2人が出てきた。
……特に親父は声がデカイからあまり喋らないで欲しい。
そして母さんは本当に“拓ちゃん”はやめてくれと思う。
「……はぁ、いきなりいるのかよ」
どうやら僕に休む時間は無いみたいだ。








とりあえず七海をつれて僕の家に入った。
「久しいな息子よ!!」
「久しぶりね拓ちゃん」
と机を挟んだ向かい側でそう言ってくる僕の両親。
「親父は声デカイ、そして母さんはその呼び方やめてくれ」
「おいおい拓海、俺から声がデカイを抜いたら何が残ると
思っているんだ?」
「個性の塊みたいなあんたがそれを言うな!!」
「だよな!! ハハッ、流石我が息子!!」
「面倒くせぇ……!!」
「お、お久ぶりです!! !!」
隣の七海はやや緊張した様子でそう挨拶していた。
……若干ニュアンスが違う気がするのは気のせいだろうか?
「おう、七海さんもお久しぶりだな!!」
「いつも拓ちゃんがお世話になっているみたいね〜
ありがとうね」
「い、いえいえ私の方こそ拓海さんにはお世話になってばかりで
本当に助かっています……」
「というか親父達はどうやって中に入ってきた?」
僕が年末家を出た際には確かに鍵を閉めたはずなのに帰って
きたらいきなり中にいるのはなぜだろうか。
……まぁもう答えは薄々分かっているのだが。
「それはだな……聞きたいか? 聞きたいか?
気になって夜も寝れないか?」
「勿体ぶんな早く教えろ」
「おいおい息子よ〜そんなに仏頂面ずらしていたら七海さんに
嫌われるぞ〜?」
「誰のせいで仏頂面になっていると思うんだ!! 誰の!!」
親父といると会話のペースを全部持っていかれるから
とても調子が狂う。
……というか本当に疲れる。
「大丈夫ですよセンパイ」
「ん? 何が?」
「仏頂面のセンパイも好きですから」
「そりゃどうも」
「おお〜若い2人は熱いな!! ほら拓海も照れてないで
素直に喜んだらどうだ!!」
「親父から勝手に入ってきた真相を聞いたらな」
「全くツンデレだな拓海は!!」
「……もう嫌だ、七海の家に避難したい」
既に僕の心は折れかけていた。
「センパイ〜頑張りましょうよ〜」
「ほら拓ちゃん、疲れたらお母さんに甘えていいのよ?」
「僕はそこまで子供じゃないからね!?」
「えぇ……」
「そこでこの世の終わりみたいな顔をしないでくれよ……」
「だって拓ちゃんを甘やかす以外何をやれと言うの?」
「他にもっとあるだろ!?」
親父と母さんはタイプは違うがそれぞれいると
僕は精神的にとても疲れる。
と僕がへこたれていると隣の七海が僕の肩に手を置いて
「……大変ですねセンパイは」
「だろ? 七海も分かってくれーー」
やっぱりいつも一緒にいるだけあって僕が大変なの分かって
くれるのかと思っていたのだが……
「私も将来こんな家庭を築きたいと思います!!」
「僕の予想斜め上の回答だったよ!!」
ある意味、安定の七海クオリティだった。
「おお〜拓海達はそこまで行ったのか!!
ーーほれ、これを持ってきたぞ」
と親父が1枚の書類を出してきた。
「って婚姻届じゃないか!! というか毎回の犯人だったよ
僕の親父が!!」
「おいおい褒めるなよ、照れるじゃないか!!」
「褒めてないしむしろ貶しているんだが!!
ーーってさりげなく七海は自分の名前を書かない!!」
「えぇ〜いいじゃん〜これである意味、親公認?って」
「もう嫌だ〜!!」

そう叫ばずにはいられなかった新年2日目であった。

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