部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

提案





「ご馳走さまでした」
「お粗末でした」
「いや〜本当に美味かったよ。ありがとう」
「いえいえこちらこそ先輩の舌に合った様で
良かったですよ」
と言いながら俺の分の皿も片付けようとする凛子。
「なぁ凛子、自分の分ぐらいは自分でやるから
大丈夫だって」
流石に作ってもらって片付けまでやってもらうとなると
俺の良心が結構痛む。
「いえ今日は私が遅刻したんですからこれぐらいは
遅刻した分の埋め合わせって事で」
「でもな……」
「もし譲らないのでしたら
ーーまた暴走します」
「斬新な脅し方だな!? 」
というかなんだ、また暴走するって……。
もしかして凛子の暴走ってわざとなのか?
「なので先輩はソファーで座って待っていて
くださいね」
と俺の分の皿を持ってシンクに向かった。
……そして何度も言うが凛子はまだ怪獣の着ぐるみを
着たままなのである。
どうやら余程その部屋着を気に入っているみたいだ。
(凛子って改めて不思議な子だよな……)
ソファーに座りながら思った俺であった。


そして皿洗いが終わった後、凛子は俺の隣に
ちょっこっと可愛らしく座っていた。
「なぁ凛子」
「どうしましたか先輩?」
「今日なんだけど……これからどうする?」
「あっ……そう言えばそうですね……」
こんな風にのんびりとしているが本来はこの時間は
遊園地でも行く予定だった。
……まぁ凛子の手料理を食べれたから何も損は無いし
むしろ思いっきり得をしているのだが。
「あの……私から1つ提案なのですが……」
「賛成」
俺は彼女の提案内容を聞かずにオッケーを出した。
「早い!? いくらなんでも賛成早過ぎますって!?
せめて内容を聞いてからにしませんか!?」
「いや凛子ならそこまで変な提案してこないから
内容聞かずに賛成で良いかなと思って」
ちなみに国木田先輩や織田は平塚や与謝野が
何か提案をしてくると内容を聞かずに大体
“却下”か“拒否”をしている。
……まぁいつもその数分後には渋々彼女達の
要望に参加しているまでがいつもの流れだが。
「それでも少しは疑いましょうよ……」
「流石に聞かないとマズイか。
ーーで、どんな提案なんだ?」
「それはですね……よいしょ」
と何故か着ぐるみのフードを付けた。
「何故付けた……?」
「それでですね」
「俺の話は無視なのか……まぁいいか。それで?」
「今日なんですけど……もう外出しないで
わ、私の家でどうですか?」
「……はい?」
なんか今とんでもない言葉が聞こえたぞ?
「だ、だから!! 今日は……外に出ないで……
ここ、私の家でおうちデートというのは
如何でしょうか……?」
「な、なんだと……」
( おうちデートってよくアニメやラノベなんかである
カップルが行う定番中の定番イベントじゃないか!?
ま、まさかこの俺がそんなアニメや漫画の定番イベントを
体験出来る日が来るとは……成長したな俺…… )
なんて1人で自分の成長に感心していると
「そ、それで先輩はどうでしょうか?
先輩さえ良ければそうしますが……」
「俺は全然オッケー!! むしろ大賛成!!
よっしゃあーー!! テンション上がってきたーー!!」
「そ、そこまでですか?」
「何言ってるんだよ!! 彼女の家でのおうちデート
なんて全男性の待望のイベントじゃないか!!」
「……イベント?」
凛子が不思議そうに頭を傾けた。
「あっ、悪りぃ言い方間違えた。
とりあえず彼女の家でのおうちデートは全男性が
望んでいる事だよ。拒否をするはずがないって」
「良かった……じゃあ今日はクリスマスですけど
おうちデートって事で大丈夫ですか?」
「オッケー!!」
「ふふっ、分かりました。
じゃあ飲み物でも用意しますね。
先輩は何を飲みますか?」
「特に好き嫌いは無いから何でも良いぜ」
「じゃあお茶にしますね。
ちょっと待っててくださいね」
と言うと冷蔵庫の方に向かって行った。
(まさか凛子の家でのおうちデートになるとは……
やべっ、そう考えると急に緊張してきた……!!)
俺は1人でそわそわし始めるのであった。




ショートストーリー  〜その頃の凛子〜
「誘っちゃった……!! ゆ、結城先輩を
おうちデートに!! ど、どうしよう……!!」
私は冷蔵庫の近くでお茶を取るフリをして頭の中で
これからの作戦会議をしていた。
「ま、まずはお茶とお菓子でざ、雑談をして……
それから……それから……ベット?
ーー早い!! 早すぎるわ!! 」
会議が始まって早々で暗礁に乗り上げていた。

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