部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

安心する






最初俺らが選んだのはバスケだった。
俺はバスケが、桜のはテニスが得意な競技であり
今回は俺が選べたのでこれにした。
「うわっ……大人げない」
何故かいきなり嫌な顔をされる俺。
「好きなの選んでいいって言ったのそっちだよな!?」
「それでもしっかり相手のことを考えて
選ぶのが必要なのだと思うのだよ?
分かったかい吉晴クンや?」
「うぜぇ……話し方が凄く癪に触る……!!」
「まぁかかって来たまえ〜!!
この人生の大先輩の桜先輩が相手をしてあげよー」
「だからお前の方が数日早いだけだろうが!?」
俺と桜は誕生日がとても近い。1週間も離れておらず
その状態で人生の先輩名乗るのは如何なものかという
ツッコミが入るが無視する。
「先攻は私から行くよ〜
さぁ準備するといい〜!!」
最初に勝負することになったのは1on1だ。
点を入れられたら、もしくはボールを奪われたら交代
というシンプルなルールだが、俺らでは結構熱中する。
「言われなくてもするさ、よし来い!!」
「じゃあ行くよーー!!」
と桜がこちら目掛けてドリブルを仕掛けてきた。
「止めてやるよ!!」
俺は両手を伸ばし、桜の行く手を阻んだ。
正直リーチなら身長が高い俺の方がある。
だが、桜はそれを軽快なフットワークによる
速さで補ってくる。
「それで止めれるつもり!!
ーー先輩と平塚のイチャイチャより甘いよ!!」
「それって大分甘めだよな!?
無論とこれぐらいで止めれるなんて思ってないが!!」
……何というか先輩達、引き合いに出してすいません。
ただ桜にも悪意があったんじゃないんーー
「そのスカスカのディフェンスの甘さは
2人の空気になった先輩達だね!!」
……すいません、やっぱ怒るなら桜だけでお願いします。


その後、点を入れたり防いだりしてしばらく経った。
今度は桜が攻撃の回だった。
「これで私の勝ちを決めるよ〜!!」
「はっ、まだまだ終わらせてたまるか!!
来い!!」」
と桜がドリブルを開始し、徐々にこちらに近づいてきた。
そして俺とのフェイントのぶつかり合いとなった。
桜が右に行こうすればこっちは先に左を潰してから
前に立ち、行く手を阻んでいた。
「綺麗にかわしてあげるよ!!
ーーってわぁ!!」
と桜が俺をかわそうとしてバランスを崩した。
「桜!!」
倒れそうな彼女を俺は自分の方に引き寄せた。
「おっとと……危なかった〜」
「全く……少しは気をつけてくれ……」
桜に何かの事があったら俺は心配で倒れてしまう。
まぁとりあえず桜が無事なのでよしとしようか。
「で、吉晴クン」
「ん? なんだ?」
「私達はいつまでこの体勢なんだい?」
「あっ……」
改めて自分がどんな状態に置かれているかを見てみた。
さっきは桜を転ばさないように自分の方に引き寄せた。
それは良い。
百歩譲ってそれは良いとしよう。
だが今の状況はマズイ。
何故ならさっき俺が桜を引き寄せたせいで
桜がすっぽり俺の胸に入って、抱きしめている状態だ。
……なんなら桜の整った顔が俺の顔のすぐ近くにある。
「す、すまん!!」
俺は慌てて離そうとするのだが、何故か桜は離そうとする
俺の腕を逆に自身の方に引き寄せた。
「桜……?」
「もう少しこのままで」
「このままで?」
「そう、もう少しこのままでいたいかな。
なんか吉晴の胸の鼓動が聞こえて安心するんだ」
と目を閉じて優しく微笑む桜。
「分かった」
俺は改めて桜の方に手を回し、抱きしめた。
抱きしめた瞬間、ほのかに甘い匂いが俺の方に
漂ってきた。
多分これは桜の匂いなのだろう。
何故か不思議とその匂いを嗅いでいると安心する。
桜は俺の胸の鼓動を感じて安心すると言っていたが
俺はどうやら彼女の匂いを嗅いで安心するらしい。
「ねぇ吉晴」
「ん? なんだ?」
「私達、いつまでこうしてようか?」
「俺はいつまでもいいぞ。
桜がいいって言うまで付き合ってやる」
「ははっ、それなら多分しばらくこのままだよ?
それでもいいの?」
「構わない。桜のワガママには慣れている」
「何よそれ、ただの文句じゃない。
ーーまぁでもそれならしばらくワガママに
付き合ってもらおうかかな」
「分かった、どんと来い」
と俺らはしばらく抱き合うのであった。


ーーそしてその後、自分達がやっていた事に対して
一気に恥ずかしくなり、スポーツに余計に
熱中したのであった。



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