部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

聖なる夜に






「さてセンパイは私にどんな物をくれるんですか?
食事券? ゲーム? マンガ? 抱き枕?
ーーさぁどれですか!?」
「その中にはないんだけどね……」
「じゃあ何ですか?
はっ、まさかセンパイの人生ですか……?
それなら喜んでいただきます!!」
「何で!?」
「えぇ〜違うの〜?」
「……せめてモノだと思ってもらえるかな」
「モノですか……モノ……
はっ、分かりました!!
ーーセンパイ自身ですか!?
それでも喜んでいただきます!!」
「いや待って!? 今僕手元に小包あるよね!?
君に見えてないかなぁ!?」
「えぇ〜だって読者の皆さんなんてセンパイ見えて
ないんですから分かる訳ないじゃないですか?」
「……ここで急にメタ発言やめようか七海?」
「はぁ〜い。で、その小包はなんですか?
まさかのまさかの首輪?」
「いや何で!? 何でそんな発想に至ったのさ!?」
「だってセンパイの事だから
“七海は自分勝手にどこにでもいくから
管理の為に首輪をつける。これからは僕の事を
ご主人様と呼べ”なんて言いそうですからね」
「いわないよ!? というか誰!? その君の妄想の中に
出てくる危険人物は!?」
「えっ、そりゃセンパイに決まっているじゃないですか?
ーーうん、ドSなセンパイもいいなぁ〜!!」
「この子変態だ!? いや、前から分かっていたさ……」
僕はまた頭を抱えて呆れるのであった。



「で、センパイは何をくれるんですか?
いい加減焦らすのやめましょうよ〜?
ーーはっ、まさかセンパイは私のいじめて欲しいという
気持ちを汲み取って……」
「んな訳あるか。というか君が変な話題を
入れてきたんだからな?」
「彼女特権」
来ました、七海の口癖。彼女特権。
この四字熟語である意味なんでも許される。
……僕限定にしか使えないが。
「君好きだねぇ、その四時熟語。
ーーまぁいいや、僕からはこれをあげるよ」
そう言うと僕はさっきから手に持っていた小包を
七海に渡した。
「わぁ〜い!! ありがとう〜!!
開けてもいい?」
「うん、いいよ。まぁあまり期待しないでね」
「はぁ〜い!!じゃあ〜」
と言いながら小包の梱包を丁寧に開けていく七海。
「さてさて何が出てくるかな〜
楽しみ楽しみ〜、あっやっと箱が見えてきた」
梱包を開けると中には青色の箱が出てきた。
「開けてみて?」
「うん!! じゃあ〜えいっ!!
ーーえっ……こ、これって」
箱の中身を見た七海は驚いた。
「どうしたのかな?」
「これって……

ーー指輪じゃん!?」
「うん、そうだよ。
一応僕の分もあるからペアリングって感じかな」
「で、でもこんな高いモノどうやって手に入れたの!?
センパイって確かバイトとかしてないよね!?」
「うん、してないよ。だから前から
日雇いのバイトをいくつかこなして
貯めてそれを買ったんだ」
まぁ本当の事を言うと、上記の事に追加して
樋口さん絡みの件で少し臨時収入があったから
それも当てたんだけど、ということは秘密にしておく。
「だからセンパイって休日いなかったの!?」
「う、うんそうだよ」

(ごめん、七海。
休日いなかったのは樋口さん絡みの問題で
色んな場所に飛び回っていたからなんだ……)
目の前で驚いている彼女に真実を告げる事は出来ず
やや良心が痛む僕。

「で、でもどうやって私の指にサイズ分かったの!?
私計ったことないよね!?」
「前にさ、七海ウェディングドレス着たよね?」
「う、うん……着たよ。あの時センパイが
いつも以上にかっこよかったのを覚えてる……」
「……それはどうも。
で、その時に担当の方から君の指のサイズを
教えてもらったんだ。その情報で作ってもらったんだ」
「あの時の!? えぇ〜!?」
七海は随分驚いている。
そりゃそうだろう。
まさか自分の指のサイズが知らないうちに計られている
のだから当たり前だ。
「せ、センパイ……」
「ん? どうしたの?」
「嬉しいんだけど……でも何でこれを?」
七海は不思議そうに尋ねてきた。
「そうだね……個人的に朝起きていきなり
婚姻届を置くのをやめて欲しいのと
結婚、結婚とややうるさかったから、かな」

朝起きたら机に婚姻届、リビングには結婚雑誌
あれは大学生にとって結構なプレッシャーだ。
「それって最早嫌味ですよね!?
それでこれ送るセンパイって結構性格悪っ!?」
「ハハッ、嘘だよ嘘。
そんな理由でこんなモノ送らないって
ーー送るならもっと嫌がる物を送るよ〜?」
「やっぱり性格悪いってこの彼氏!!
で、本当の理由って……?」
「ーーそりゃ君に対する感謝に決まっているじゃん」
「えっ」
「僕はこの1年、君と出会ってとても楽しかった。
君がいたからこそ、僕は部活だけじゃなくて色んな事を
乗り越える事が出来たんだ。それは本当に感謝している」
「で、でも私はそんな偉い事してないですよ?」
「君にとってはそうかもしれないけどさ
僕にとっては充分過ぎるぐらいだよ」
そうだ。

ーー七海がいたから

ーー彼女がいつも隣で笑っていたから

ーーこの子が僕の彼女だったから

僕はどんな事があってもへこたれる事なく
ここまで来れた。
僕はこの子に感謝しても感謝し尽くせない。
「七海はさ、自分が思っている以上に凄いんだよ。
君が大好きな彼氏が言うんだから大丈夫だよ」
「う、うん……分かった……」
「あとさ、この指輪にはもう1つ送ろうと思った理由が
あってさ……まぁこっちは僕の独占欲丸出しだから。
あまり言いたくないんだけどね……」
「ちなみにどんな理由ですか?」
「それはね……
ーーこれからも僕の隣で笑って欲しいん
っていう理由、かな」
「えっ……」
「僕はまだ学生だから給料3ヶ月分ってモノは
厳しいけどさ……いつかはしっかりと渡したいからさ
それまで僕の隣で待っていて欲しいんだ」
「……」
「それまでの僕の約束。この指輪を見て
絶対七海を幸せにするって約束をどんな時でも
忘れないようにする為、どんな時でも七海と
繋がっていたいって願いかな……」
このペアリングを見て、近くに七海がいなくても
心が繋がっているというのをしてみたかった。
「……」
「まぁこの指輪で他に七海を狙おうとする野郎共に
牽制したいっていう僕の独占欲もあるけど……」
「……ッ!!センパイ〜〜!!」
さっきまで黙っていた七海は急に僕に抱きついてきた。
「おっとと……」
ある意味、突進に近い行為を優しく受け止める僕。
「センパイ!! センパイ!! センパイ〜!!」
僕の名前を連呼しながら僕に頭をつけてくる七海。
「はいはい君のセンパイですよ」
そんな七海の頭を撫でる僕。
「私、センパイの彼女でよかったぁ〜!!
こ、こんなにも私の事大切に思ってくれていたなんて
ほ、本当に良かったぁ〜!!」
「七海を大切に思わない訳ないでしょ?
だって僕の大事な彼女なんだからさ」
「うぇ〜〜ん!! センパイ大好きぃ〜!!」
「うん、僕も七海の事が大好きだよ」
その後七海が落ち着くまで僕は彼女をなだめた。


「ねぇセンパイ」
「ん? 何かな?」
「これ、つけて欲しいな」
「これって指輪の事?」
「うん!! せっかくセンパイからもらったんだから
センパイにつけて欲しいんだ」
「分かったよ。七海、手を出してもらえる?」
「うん!!」
と僕の方に細くて可愛らしい手が出される。
「じゃあつけるね」
僕は七海の分の指輪を取って、慎重に彼女に指に付けた。
「えへへ〜嬉しいな〜」
言いながら指輪が付いた手を愛おしそうに撫でる七海。
「良かった、気に入ってもらえたようで」
「何言っているんですか!! センパイからもらった
プレゼントで気に入らないはずがないですよ!!
えへへ〜でも本当に嬉しいなぁ〜」
「まっ、いいか」
何よりもあの嬉しそうな表情を見ていたら
他の些細な事なんてどうでもよくなってくる。
「ねぇセンパイ!!」
「どうしたの?」
「キスしよっ」
「そうだね、しようか。
ーーこっち向いてもらえるかな?」
「うん……じゃあして」
と僕らの顔が徐々に近くなり、そして……
「「ん……」」
僕らはキスをした。
「はぁ〜えへへセンパイとのキス好きだぁ〜
なんかこう、心がポカポカするなぁ〜」
と蕩けた表情で言う七海。
その表情をみて僕の理性が限界に近くなる。
「ねぇ七海、もう少しキスしてもいいかな?」
「うん、いいよ……センパイならいくらでも
して……お願い……もっとぉ……して」
七海の蕩けた表情と声で僕の理性は崩壊して
僕らはしばらくキスに夢中になるのであった。


そして料理が食べ終わり、片付けをしていると
いきなり部屋の明かりが切れた。
「あれ、七海明かり切った?」
「ーー切りましたよ。
センパイちょっとこっちに来てもらえますか?」
七海はベットに腰掛けて、隣のスペースを叩いていた。
「う、うん」
と七海に言われた通りのベットに近づき、隣に座った。
「どうしたの七海……?」
「よいしょっと……」
といきなり上のコートを脱ぎ始めた。
コートの下には同じサンタの服が見えてきたのだが……
「七海!? その衣装は!?」
そこには肩を完全に出しチューブトップの
デザインのサンタ服があった。

ーー肩を完全に出して

ーー七海のやや大きめの胸が見えている。

さっきまではスカートの丈が短いだけで可愛いだったが
今の服装はさっきまでのミニスカと上の衣装の露出が
相まってはっきりいうとエロい。
そしてそれが僕をとても危ない気にさせる。
「恥ずかしいけど……センパイの為に頑張ったよ
ねぇセンパイ」
「な、何かな……?」
「私を可愛がって……?
今日はセンパイの事だけ考えさせて?
お願い……」
「七海……」
「今日のこの衣装はセンパイの為思って
買って着たんだ、だから今日は私をさ
沢山可愛がってほしいの。
ーー私だけを見て、私だけを考えて?」
「七海……うん、分かった。
今日は七海だけを考えるね。
もう少しこっちに来てもらえるから?」
「うん……そっちに行くね」
と七海がこっちに来たことによって2人とも
ピッタリくっつく事になる。
「七海、今日は沢山可愛がるね?」
「うん、して……激しくていいから……
私を沢山愛して?」




そして次の日
「センパイ〜」
「うん……もう朝か」
窓の方を見ると既に朝日が昇っていた。
隣を見ると七海は笑顔だった。
いつもに比べて結構寝ていたみたいだ。
……まぁ夜は激しかったからしょうがないか。
「ねぇねぇセンパイ?」
「うん……?なにかな?」
「私ね……センパイの事が大好き!!」
そして僕に抱きついてくる七海。
胸の感触がいつもよりダイレクトに伝わってくる。
「僕も七海の事が大好きだよ」
と抱きつき返す僕。
「今日は何する〜?」
「そうだね……今日は……このままでいいかな」
「じゃあ私も隣でこうしてますね。だって……」
「だって?」
「だってセンパイの隣が私の場所ですから!!」

隣にある満面の笑みを出来ればこれからもずっと
見ていたいなんて思った今日、この頃だった。





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