部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

幹部引退の後に









何とか無事に幹部交代式という名の飲み会を
終えて数日後……
僕は帰り道を1人で歩いていた。
いつもなら七海と一緒に帰るのだが今日は珍しく
七海に用事があるらしく待ち合わせをしていない。
「ふぅ……寒いな……」
夕方というのもあり外はコートを着ていても寒かった。
いつもなら七海と手を繋いだり、七海が抱きついてきて
暖かいのだが、七海がいないので尚更寒く感じる。
「帰り道ってこんなに長かったっけ……
やけに遠く感じる……」
いつも七海と一緒に話しながら帰るので、結構近いと
感じていたが1人で歩くとやけに遠く感じる。
……そもそも七海と出会う前はずっと1人で帰って
いたから、1人で帰っていた時期の方が長いはずだが
七海と出会って数ヶ月で僕は意外なところで
変わってしまったようだ。
果たしてそれが良い変化か悪い変化か分からないが
とりあえず僕の中で変わったということは確かだ。
「寒いし、早く帰って七海の夜ご飯作ってあげないと」
そう思い家までの道を走る僕であった。


そして走る事5分、家の前に着いた。
鍵を開けようとしたら既に開いていた。
(開いている……もう七海が帰ってきているのか……)
なんて思いながらドアを開けると……
パ〜ン!!
「へっ?」
何故かいきなりクラッカーが鳴った。
そして
「「国木田先輩、幹部お疲れ様でした〜!!」」
そこには七海、森、織田、与謝野さん、凛子さんという
いつものメンバーが全員クラッカーを持っていた。
「……何これ?」
玄関で唖然とする僕。
一応部屋の中を見て、僕の部屋である事を確認した。
「さぁさぁ主役はこちらへ〜!!」
と一番近くにいた森に促され、七海の隣に立った。
「一体これは何だい?」
「それは決まっているじゃないですか〜
“先輩の幹部お疲れ様でした会”ですよ〜
あっ、企画者は森です」
「織田が……? これまた珍しいね」
こんな事は大体七海か与謝野さんが企画しそうだが。
「はい、俺が今回企画しました。
本来なら国木田“大”先輩ですから他の場所とかも
考えたのですが……」
「おい今、絶対ふざけて“大”つけたろ?」
いい加減“大”つけるのやめてほしいと思う僕だった。
「色々と考えた結果、勝手に国木田先輩の部屋で
開催する事にしました」
「勝手に決めたんかい!?」
「だってサプライズですからね〜バレない様に
最後まで隠しました!!」
「……森は諸々終わったら話し合いだね」
「あっ、これ嫌な予感……
ま、まぁこんな感じで料理は与謝野と凛子に
織田は買い出しに、平塚は……
マスコットでした」
「酷いんですよ〜私に何もさせてくれないんですよ!!」
僕は森の肩を叩き
「……森、お前の選択は間違ってない。
むしろ大正解だ」
「……ですよね〜薄々分かっていましたよ
センパイがそちら側につく事ぐらい。
だけどそれがどうした!!
私はセンパイの彼女だ〜〜!!
フハハハハハハ」
「七海……?」
「ということでパーティの始まりだぁ〜!!
皆の衆、盃を持ったね? あっ凛子は中身ジュースを。
こちらがセンパイの盃となります〜」
「どうも……?」
と変なテンションの七海からお酒が入ったグラスを
もらい、それを上に掲げる。
「って事で森先輩、乾杯の音頭お願いします〜」
「よっしゃぁーー!! という事で皆さん
グラスを持ったか!! とりあえず国木田先輩!!
ーー幹部1年間お疲れさんでした〜〜!!
乾杯〜〜!!」
「「乾杯〜〜!!」」
「乾杯?」
カチンッ
僕らは互いにグラスを合わせた。
「さぁさぁ先輩、今日は呑んで食べましょう〜〜!!
先輩の料理の腕にはかないませんが私と凛子ちゃんが
作った料理をどうぞ〜〜!!」
与謝野さんに言われて改めて料理を見ると

・ポテトフライ

・シーザーサラダ

・ローストビーフ

・ハンバーグ等

色々な料理が机の上に乗っていた。
「2人ともよくこんな量作れたね、すごいよ」
「そりゃ朝から作っていましたからね〜」
「最初は七海の部屋を借りて作っていて
最後らへんは先輩のキッチンを勝手に借りさせて
いただきました。お口合うか分かりませんが……
私なりに結城先輩に協力しました」
「いやでも僕は嬉しいよ」
そりゃ後輩達がわざわざ僕のためだけにこんな料理を
作ってくれたり、パーティーを企画してくれたのだから
嬉しいに決まっている。
「俺達は先輩にこの1年間で色々と
助けてもらいましたから、先輩にしっかりと
お礼をしていきたいと思っていたんですよ」
「僕は君らの先輩として当たり前の事をしただけだよ……
そんなに礼を言われる事はしてないって」
そうだ。
僕は僕の先輩が僕にしてきてくれた事を後輩達に
そのままこの子達にしてきただけだ。
「でも先輩はそれを俺達にしてくれたじゃないですか。
それがどれだけ俺達が助かった事か」
「森……」
「という事で今日は俺達から先輩に日頃の感謝を!!
さぁさぁ飲みましょうぜ〜〜!!」
「あぁ分かった……」
「あれセンパイ〜少し目が赤いですよ〜!!
もしかして泣いてますか〜?」
「泣いてないし」
「またまたセンパイ強がっちゃって〜可愛い〜」
「だから泣いてないって」
まぁ少し目がウルっときたのは事実だ。

ーーこんな風に後輩達が和気あいあいと笑っているのを
見ていると、少しは僕が頑張ったのも救われるのかなと
1人で思った。

「ねぇセンパイ」
「ん?どうしたの?」
他のメンバーが騒いでいる内に七海が寄りかかってきた。
「私は前からセンパイに言っていますがセンパイが
頑張った理由はあると思いますよ?」
「ハハッ、ありがとうね」
「だってわざわざセンパイ1人の為にこんなに人が
集まってセンパイの為に何かしようと思って
行動したんですかね
ーーそれでも充分意味はあったんじゃないですか?」
「どうやらそうみたいだね」
目の前で騒ぐ4人を見て心から思う。
「だからセンパイは自信を持ってくださいね?
私はそんなセンパイが好きなんですからねっ!!」
と満面の笑みでそう言われた。
(可愛い……その顔は反則だよ……)
その七海の笑顔を見て不意に僕は七海の顔に
自分の顔を近づけて、そして……
「ん……」
僕は七海にキスをした。
「えっ!? えっ!? えぇぇぇぇぇぇ〜!?
い、い、い、い、今のってき、キス!?」
七海は珍しくうろたえていた。
それもそうだろう。僕から、そして後輩達がいる前で
彼女にキスするなんて初めてだからだ。
「そこに可愛い彼女がいたからね、つい」
「しかもセンパイからキスしてくるなんて……!?
ど、ど、ど、ど、どうしよう!?
胸のドキドキが止まらないよ〜〜!!」
「そんな七海も可愛いよ」
「はにゃっ!? い、い、いいきなりなんですか!?」
「僕は正直に感想を言っただけだよ?
可愛い七海に可愛いって言って変かな?」
「へ、へ、へ、へ、へ、変じゃないけど……!?
変じゃないけど!! で、でも!!」
「七海〜」
と僕は七海に抱き着いた。
「せ、せ、せ、せ、せ、センパイ!?
今度は何ですか!?」
「へへへ、七海っていい香りがするね」
「センパイがおかしいぞ!?さては……
ーーちょっと森先輩!?
これってアルコール強いお酒じゃないですか!?」
「へっ? あっ!? しまった!!」
なんか後輩達が騒いでいるが僕は構わず
七海に抱き着く。
「うんうん、七海は柔らかいな〜
この柔らかさは毎日抱きついても飽きないよ」
「ちょっとセンパイ!?
今、それをここで言いますか!?」
「毎日寝る時に七海に抱き着いているけど
やっぱりこの香りに柔らかさは良いね〜」
「な、七海まさか貴方、毎日……」
「待って凛子!? 私毎日あんなんじゃないよ!?
その敵を見るような目つきやめて!?」
「もう〜七海って嘘つかないでいいんだよ?
殆ど毎日一緒に寝ているんだからさ〜」
「へぇ……七海ったら毎日寝ているの……」
「ここでカミングアウトやめて〜〜!?
もう誰かセンパイを止めてよ〜〜!!」















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