部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

夜、広場にて、野郎2人


今回は織田視点です。





「ふぅ……」
俺は部屋を出て、広場のベンチに座っていた。
電気はついているものも、日付が変わった頃の為か
俺以外に誰もいなかった。
「あー全然寝れない
ーーとりあえず何か飲み物買うか」
飲み物を飲むと更に寝れなくなるという悪循環を
無視する事にして、自動販売機の前に立った。
「とりあえずあったかい飲み物は……
ホットココアにするか」
と俺は自動販売機にお金を入れて、ボタンを押した。
ガコン!!
そして出てきたココアを取り出し、プルタブを開けた。
「はぁ〜……あったまる。なんやかんやで夜のココアは
やめられないんだよな……この微妙な背徳感堪らん」
俺はココアを飲みながら外の景色を見ていた。
……無論、夜だから真っ暗だが。
「ーー織田? 何してんだ?」
後ろから不意に声がしたので振り返ると
そこには森がいた。
「森か……お前こそどうした?」
「俺はな……何故か寝れなくてな……
眠気を起こす為に散歩している」
「奇遇だな。俺も寝れなくてな今景色を見ていたんだ」
「外真っ暗だよな?」
当たり前の事にツッコミを入れられた。
「まぁな……ココアいるか? 奢ってやるよ」
「じゃあもらうか」
俺は再び自動販売機の前に立ち、ココアを買った。
「ほいよ」
「あざっす」
と森はそれを受け取ると飲み始めた。
「……」
「……」
何故か2人とも何も見えないはずの景色を
見たまま黙り込む。
「なぁ織田」
「なんだ?」
「お前さ、悩みあるだろ?」
「……分かるか?」
「まぁお前とは2年間同期やっているからな。
俺が気がついたって事は与謝野は既に気がついて
いるんじゃないのか?」
「ありえるな……」
桜はああ見えて人を良く見ている。
だから俺に悩みある事はすぐに分かっただろう。
「まぁそういう俺も悩みあるからな……
人の事言えないんだよな」
「ーーもしかしてだが、来年の部活の事か?」
「あぁ、よく分かったな。って事はお前も?」
「そうだ。俺も来年の部活の運営
ーー国木田先輩が引退した後の運営が心配だ」
俺達の部活は12月に幹部が交代して
1月から新体制に入っていく。
「このまま何事も無ければ、織田は主将
俺は副将に就任だよな」
そうだ。
来年の1月からは俺が主将になり
部活を率いていかなければならない。
「あぁだからこそ俺は怖い。
あの先輩の後を引き継いでいけるのかが心配だ」
「だよな……あの先輩達の代ってハイスペックな人達
集まりすぎだろ……」
「国木田先輩や樋口先輩は言わずもがな
夏目先輩も性格に難があるけど普通に強い。
他の先輩達もそれなりに凄い」
「でもお前なら、言い方は悪いが夏目先輩よりは
部活の運営出来るだろ?」
「……分からない。まだやった事無いからな。
それに俺に出来るのか……不安でしかない」
「俺も同じだ。俺はまさに国木田先輩がいたポジションと
役職につく予定だから尚更感じるさ。
ーー俺にあの先輩の様に出来るのか?
なんて最近いつも考えている。笑えるぜ、全く」
と森は自嘲しながら言ってきた。
「森……」
(そうか、こいつは国木田先輩の後を本当に引き継いで
いくんだった……)
しかも森は国木田先輩をかなり慕っているから
尚更あの先輩の影が大きく感じるはずだ。
「これからどうするか……」
「本当それだよな」
俺はまだ直接あの人の後を引き継いでいく訳では無いから
まだ森に比べたら少しは不安が減るのかもしれない。
だがこいつはダイレクトに引き継いでいくのだから
その不安ときたら俺以上だろう。
「なぁ森」
「何だ」
「とりあえずさ、この話は旅行が終わってからに
しないか? これ以上桜や凛子さんに変な気を
使わせたくない」
「賛成。まっ、凛子が気づいているかは分からんが」
と苦笑しながら言う森
「……否定出来ない俺がいる。すまん」
「いや、その反応は普通だから大丈夫だ。
あんな行動も可愛いけどな」
「惚気かよ」
「惚気だ。文句あるか」
「フッ……」
「ハハッ……」
俺らは静かに笑い合った。
「とりあえず寝るか。
ーーあぁ……また財布が薄くなる……」
「お前も苦労してんだな……」
「まぁそれでもやめられないんだよな」
「奇遇だな、俺も同じだ」
「お互い幸せだな」
「まっ、これもあの先輩あってのもんだけどな
ーーさっ、寝るか」
と俺らは自分達の部屋に戻った。



ーーそれぞれの思いを抱えながら
京都旅行2日目を迎えるのであった。

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