部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

指切りげんまん









僕らはもう一度、鳳凰堂を正面から見た後
近くのベンチに座っていた。
「やっぱり綺麗……」
隣の七海は鳳凰堂を見ていた。
僕はスマホで次の目的地を検索していた。
(ふむふむ、まだこの時間なら色々と回れるかな。
大体ホテルには6時ぐらいには戻りたいし……)
なんせ七海はあまり寝てないという事だったし。
早く帰って休ませてあげたい。
七海の体力と時間を考えるとあと一箇所ぐらいだろう。
「さて七海ーー」
僕は隣にいる七海に次どこに行きたいかを
聞こうとしたのだが……
コテン
「えっ……?」
突如七海が僕の方に寄りかかってきた。
何故だろうかと思い試しに隣の彼女を見てみると……
「すぅ……」
可愛らしい寝息を立て寝ていた。
「七海〜? お〜い?」
七海の身体を優しく揺らしてみるが
彼女は全く起きる気配が無い。
(このタイミングで普通寝るかい?)
しかもここ平等院の敷地内にあるただのベンチ。
(というかさっきまで普通に起きていたよね?
まさかいきなり寝たのか……)
「そういえばさっき寝不足だって言ってたな……
いやいやでもここで寝るかな!?」
僕がツッコミを入れても起きる気配が無い七海。
とりあえず僕は肩に寄りかかっていた七海の身体を
膝の上に倒した。
(よいしょ……てか改めて身体柔らかいな)
よく七海を抱きしめたりして、触る機会は多いが
この柔らかさにはなれない。
同じ種族なのかを疑うレベルで思う。
「すぅ……」
相変わらず寝ている七海。
(というかこのままだと風邪ひくよな……)
いくら七海が暖かそうなダウンコートを
着ているとはいえ、11月の野外だから寒いだろう。
(はぁ……仕方ないか)
僕は自分の着ていたコートを脱いで、七海に被せた。
僕自身は一気に寒くなったが、彼女が風邪を引くよりは
マシなのである。
まぁ寒くなったが七海を膝に乗せているため
七海の体温を感じる事が出来て、少しはあったまる。
(とりあえず七海が起きるまで動けないのと
今日は平等院で旅行はおしまいかな)
七海は一度寝ると中々起きない。
だから毎日朝、彼女を起こすのにかなり苦労する。
多分このまま寝て、起きた頃にはいい時間になりそうだし
疲れている七海を連れまわすのも気が引ける。
(なので今日は諦めるか)
本音を言えば他にも行きたい場所はあったが
ここで七海の笑顔を沢山見れたし良しとしよう。
そう思った僕は七海が起きるまで待つ事にした。



(と言っても暇なんだよな……とりあえず七海の頭でも
撫でて和むとするか)
僕は膝の上にある七海の頭を撫でた。
「えへ……」
七海も頭を撫でられているのが分かっているのだろうか
幸せそうな寝顔になっていた。
撫でる際に七海の長くて綺麗な黒髪に触れると
サラサラとしていて気持ちいい。
(あ〜癒される〜夏目をなだめた時の疲れとか
全て吹き飛ぶぐらい癒されるわ……)
僕がどれだけ夏目と喧嘩やギスギスしても普通に
過ごせるのは七海のおかげだろう。
というか毎日楽しく過ごせているのは七海のおかげだろう。
彼女がいつもバカやったり、元気でいてくれるだけで
僕は明日も頑張ろうという気持ちになる。
(全く……君は僕がどれだけ助かっているかは
分からないんだろうね……)
「うへへ……」
いつのまにかだらしない顔になっている彼女を
見ながら僕はそう思った。
「だらしないよ七海……」
彼女にかけていたコートを少しずらして
顔が隠れる様にした。
七海のだらしない顔を見せるわけにはいかないし
何よりもその顔は僕だけが見ていたい。
そんなちっぽけな独占欲が働いた。
(日常じゃ恥ずかしくていえないけどさ。
ーーいつもありがとうね七海。
大好きだよ。これからもよろしくね)



「ふぇ……」
「ん?起きたかな?」
「あれ……センパイ……?」
「うん、そうだよ。おはよう七海」
「私……寝てたの?
って、えぇぇぇーー!? もうこんな時間!?」
「起きた途端、賑やかだね七海」
「センパイは何でそんなに穏やかなんですか!!
あぁ……せっかくのセンパイとの旅行が〜!!」
僕の膝の上に寝たまま慌てる我が彼女。
そんな姿すら可愛いと思ってしまう僕は
どうやら色々と末期症状が出ているみたいだ。
「というかセンパイ起こしてくださいよーー!!」
「だって君の寝顔が随分可愛くてさ見惚れていたんだ」
「か、か、か、可愛い……!?そ、そ、そんな言葉で
誤魔化せると思っているんですか!!……えへへ」
七海よ、表情と言動が一致してないぞ?
……いや最後は一致しているか。
「でも……せっかくのセンパイとの旅行が……」
「別にいいじゃんか」
「私にとって」
「ーーまた2人で旅行しようよ」
「えっ?」
「もう今年は厳しいけど。来年さ
また2人でどこか旅行に行こうよ」
「センパイ……
うん!! 絶対約束だよ!! 絶対、絶対だよ!!」
「そうだね、約束するよ」
「じゃあ約束しょっ!!」
と小指を僕に向けて出してくる七海。
これはつまり……
「はいはい」
と僕も小指を出して、そして
「「指切りげんまん〜嘘ついたら〜針千本の〜ます」」
という古典的で昔よくやっていた方法で約束をした。
「えへへ、センパイ大好き」
「僕も七海の事が好きだよ」





次回は織田と与謝野の視点からの話です。

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コメント

  • A・L・I・C・E

    甘い



    うん、甘い



    甘いなぁ

    4
  • バジリス

    甘いですなw

    4
  • ペンギン

    やっぱりこの2人はいつ見てもいいですね!w
    ありがとうございます!

    4
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